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余命一ヶ月の僕が、ボロボロの少女を拾って同居したら幸せになれた話  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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お買い物


 僕は先生とともに診察室を出た。

 先生はため息を吐きつつも驚嘆の声を上げる。


「全く、症状の進行は少ないのは驚きだ。だが、君は普通にしてるつもりでも身体に影響は出てるんだろ?」


「大丈夫です」


 本当は頭痛が激しくて、手足が以前よりも動かしにくくなったけどね。


「美冬がいてくれます――」


 先生はそんな僕を見透かすような瞳で見つめる。


「なら――いい。さっきも言ったが、君が修学旅行から帰ってきたら手術の準備をする。いいな?」


「はい」


「絶対ムリするな? 本当はベッドに縛り付けてでも病院にいてほしいくらいだ」


 ――まだ大丈夫。美冬といると身体が軽くなるんだよ。


「ちゃんと毎日通院して治療を受けますから」


「はぁ、全く頑固な男だね」


「父さんに似たんで」


 先生は病院の入り口で立ち止まった。


「私はここでお別れだ。明日も病院でな」


「はい――」


 先生は大きく手を振って僕を見送ってくれる。

 近くにいた看護師さんや、見ず知らずの患者さんが微笑ましくそれを見ている。


 ――もう恥ずかしくなんかない。人の温かみを素直に受け入れられる。


 僕は先生に一礼をして病院を出た。






 美冬がいるはずの中庭に行くと、そこにはベンチで楽しそうに話している美冬と未来がいた。

 未来? もしかして――


 二人は僕の事を見つけると、駆け寄って来た。

 手を繋いで仲が良さそうだ。

 いつの間に? 僕は全然知らなかったよ?


 未来が僕の前で立ち止まる。

 美冬はそれを見守っていた。


「未来――、もしかして、父さんから?」


 未来は首を振った。


「ううん、俊樹のお父様からは何も聞いてないわ。俊樹が学校に来たときにピンときたの」


「そうか、そうだよな。元々病院に通っていた事は知ってたもんね」


「うん――、俊樹――」


 未来との思い出が僕の蝕まれた頭の中で再生される。

 子供の頃からいつも一緒だった。

 冷たい僕を見放さず、一生懸命僕を支えようとしてくれた。


「未来、僕はもうすぐ死ぬ。来週手術を受ける。たとえ成功したとしても――長くは生きられない」


 未来は優しく微笑んでくれた。

 何故かその笑顔は先生の笑顔と被ってしまった。


「いいの――、私は笑って送り出して上げるから! ふふっ、ほら、美冬ちゃんとデート行ってきなって! あっ、私は先生に頼まれたもの持っていかなきゃ!」


「未来――」


「そんな暗い顔しないの! 美冬ちゃんと精一杯楽しんでね! じゃあね!」


 未来は小走りで病院の中へと向かった。


 僕と美冬はその場に取り残された。



 美冬はポツリと呟いた。


「未来さん、良い人だね――」


 ああ、自慢の大切な幼馴染だよ。


 美冬は僕の手を取る。


「じゃあ、帰ろっか! あっ、この時間だとスーパー特売に間に合うかも!」


「いいよ、特売はまた今度で。動物園とか行く?」


「ううん、いいの。私は俊樹君と一緒にジャスコーズに行きたいよ」


「そっか」


「へへっ、し、新婚さん気分が味わえるしね――」


 僕は美冬の手を握り直す。

 そして僕らはゆっくりとした足取りで近所のスーパーまで向かった。






 僕らはスーパーに着くと、店長から電話があった。

 僕は美冬に一言告げてその場を離れる。


『あ、俊樹さん。ちわっす!』


「ああ、バイトの件かな? しばらく美冬も僕も――」


『違います! 今日美冬ちゃんの父親を名乗る人が来て、娘を誘拐したとかほざいて、金を寄越せって――』


 ――子供にとって親の影響力は絶大だ。美冬は本当に心が綺麗な子に育ってくれて良かった。


「他には?」


『はい、学校にも行ってめちゃくちゃにしてやる――って言ってました。俊樹さん、俺殴りたいのを我慢しました――』


 ああ、美冬は僕の家族だ。

 美冬の心を惑わす奴は絶対許さない。

 これ以美冬を傷つけないでくれ。


「ああ、後は任せてくれ。店長、ありがとう」


『は、はい、俊樹さん、最後にお店きてくれますよね?』


「ああ、絶対行く」


 僕はそこで電話を切った。

 ――美冬の父親はひっそりと退場してもらおう。


 この街から出ていってもらう。


 僕は粛々と顧問弁護士に電話をする。

 電話を切った時は、結構な時間が経っていた。だが、これで父親の件は問題ないはずだ。

 もう二度と、美冬の前には現れないだろう。





 僕は美冬の元へ行くと、美冬はふくれっ面で空の買い物カゴを持っていた。


「美冬、遅くなってごめん」


「もう、待ちくたびれちゃったよ! ほら行こ!」


「てっきり買い物してるかと思ってた」


「はぁ……俊樹君は乙女心が分かってないよ。私は――俊樹君と一緒に食材を選びながらゆっくり回りたいの!」


「そ、そうか。そうだよね。うん、カゴは僕が持つね?」


 僕は美冬が持っていたカゴを奪い取る。



「あ、もう!」


 僕らはスーパーを回る。

 僕一人なら効率を考えて迅速に値段も見ずに買って、モノの数十分で終わる買い物。



「お魚さんが安いよ! ねえ、俊樹君ってお刺身好き?」



 ――まるでスーパーが特別なテーマパークのように楽しんでいる美冬。



「お肉――、うぅ、私太ったかな? ヘルシーな鶏さんにしようか?」



 ――お肉のパックを持ちつつ自分のお腹をつまむ美冬。



「野菜は身体に良いのよ! うーん、寒いから鍋にしよっか? 俊樹君はおでんの具で何が好き?」



 ――僕らはまだまだ知らないことだらけだ。美冬の好きなお鍋ってなんだろう?



「わわぁ!? お菓子が一杯! う〜ん、こっちの方がグラム数が多けど値段が――」



 ――些細な事で真剣に悩み美冬が本当に可愛くて。



「これくらいで大丈夫でしょ! え、量が少ない? うぅ、だって俊樹君と毎日一緒に買い物したいんだもん――」



 ――僕の大好きな美冬。



「ふぅ、荷物は私が持つね! 俊樹君の荷物は全部私が持ってあげる!」



 僕は両手がふさがっている美冬の唇に不意打ち気味にキスをした。

 美冬は両目を見開いて驚いていた。



「ありがとう美冬」



 美冬は可愛らしく俯いて呟いた。



「ど、どういたちまして――」





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