表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命一ヶ月の僕が、ボロボロの少女を拾って同居したら幸せになれた話  作者: 野良うさぎ(うさこ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/29

お迎え


 ――身体が少しだけだるい。



 僕は学校から帰ってきて、制服も脱がずに昼寝をしてしまったようだ……。

 僕はだるい身体を起こしてスマホで時間を見た。……午後の八時。

 そろそろ美冬のアルバイトが終わる時間。


 立ち上がって外出着を無意識に手に取っていた?

 僕は何をしてる? 出かけようとしてるのか?


 本当に無意識であった。

 ……僕は当然の様に美冬を迎えに行こうとしていた。


 顔を洗い、着替えながら美冬の事を考える。


 感情の塊のような女の子。怒るとほっぺたを膨らませてハムスターみたいになる。

 素直で明るい……本当に良い子であった。


 ……僕は何をしてるんだろう。


 駄目だ、今は考えるな。

 僕がいなくなっても美冬が幸せになることを願うんだ。


 思えば、美冬と出会ってから僕は変わってきたのかも知れない。


 学校に行こうなんて毛頭思わなかったよ。


 ……本当は美冬と通えたらって心の奥底で思っていたかも知れない。


 僕からはそんな事言えなかった。だってこれ以上……美冬と心を交わしたら……。




 僕は玄関を開けて外に出る。

 そして、歩きながらスマホを見つめる。


 ――父さん……。


 僕は深呼吸をして……久しぶりに父さんに電話をしてみることにした。


 コール音を聞く間もなく、父さんが電話出てくれた。


『――どうした。……何かあったのか?』


 そうだよね。僕は父さんを表面上しか見てなかったのかもね。

 この声色は……心配している気配が伝わってくる。

 ぶっきらぼうだから分かりにくいんだよ。


「父さん……ねえ、僕死んじゃうんだよね? ……やっとそれが怖いって分かったよ」


 素直になった未来とクラスメイトの優しさに触れた時。

 美冬の事を可愛いと思ってしまった僕の心。

 胸が締め付けられるような思いが僕に襲いかかる。


「――ああ、そう、だ。――お前は……いなくなってしまう……」


 父さんは絞り出すような声で僕に語りかけた。


「ねえ、父さん。僕……女の子を拾ってから変なんだよ? 胸が痛くなって……苦しくて……、よくわからない感情が渦巻くんだ」


『――ああ』


「父さんも経験したことあるの?」


『……ああ』


 父さんの思いが電話越しでも伝わってきた。


「僕、死んじゃうのに……。これ以上仲良くなっちゃ駄目だよね? ……でも、どうしていいかわからないんだ! 経営なら……仕事なら……勉強なら……自分だけで判断して結果を出せたのに……」


『俊樹、お前はやっと……いや、今更言っても仕方ない。俊樹、家に遊びに来なさい。……大切な女の子と一緒に』


「父さん……僕の事興味無かったんだじゃなかったの?」


『……息子を大切に思わない親がいるものか! ……お前が惚れた女の子を見せてくれよ』


 ――僕が美冬に惚れた? 父さん? 


「ちょっと、父さん? 何言ってるの!? ぼ、僕は――」


 僕にとって美冬は……大切な……なんだ?


『ふふ、ごちそうを用意しておくからな。いいか、惚れた女の子と変に距離を取ろうとするんじゃないぞ? ……お前らの心のままに……くっ……俊樹……』


 父さんは言いたいことを言うだけ言って、電話を切った。


「はぁ……相変わらずなんだから」


 僕は歩きながら一人愚痴る。

 だけど、心はとても軽くなっていた。

 初めて僕は……愛情というものをはっきりと理解した。

 父さんと喋って僕は初めて理解した。僕はまだ子供なんだなって。



 ――先生に報告しなきゃ。あっ、美冬にも伝えなきゃな。



 僕は心も軽い足取りで美冬のアルバイト先のカフェへと向かった。





 カフェが見えてくると、ちょうど美冬はアルバイトが終わったらしく、店先から出てくる所であった。


 僕は美冬に手を振って声をかけて駆け寄った。


「美冬ーー! はぁはぁ……」


 美冬は不思議そうな顔で僕を見つめる。

 だんだんとその顔が赤くなってきた。


「と、俊樹君!? わわ、迎えに来てくれたの? ありがとう」


「ほら、帰ろ。……悪い今日はご飯は用意してなかった」


「あっ、じゃあ私作るね! 何がいいかな〜」


 美冬は楽しそうに今日の献立を考えている。

 本当に楽しそうな顔であった。


 僕はその笑顔を涙に変えてしまうかも知れない……だけど……。


 僕は美冬の手を掴んだ。


「わわぁ!? 俊樹君……」


「寒いだろ? こうすれば暖かいよ。……ご飯は美冬が作るなら何でもいいよ」


「うーん、何でもいいよが一番困るんだよね……」


 美冬は恥ずかしそうにしながらも僕の手を離さない。

 手を離さないようにしっかりと握りしめる。


 僕は想いを乗せて美冬に言った。



「ははっ、違うよ。美冬が作る物だったら何でも嬉しいんだよ」



 美冬はその言葉を聞いて固まってしまった。



「ひゃい? と、と、俊樹君? からかってるの!! ちょっと!!」



 嬉しそうにしながらほっぺたを膨らます美冬はやっぱり、とびっきり、



「――可愛いね」



「〜〜〜〜!?」



 僕はまだ生きている。

 そうだ、諦めるな。

 精一杯生きるんだ。


 僕は美冬の手に思いを込めて、力を入れた。

 美冬も力を入れ返す。

 まるで手をにぎにぎしてる何かの遊びみたいであった。


 お互いの存在を確かめ合う……。


 僕らこの時間が長く続ように、ゆっくりと……マンションまでの道のりを歩いた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ