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余命一ヶ月の僕が、ボロボロの少女を拾って同居したら幸せになれた話  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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初めての気持ち

 まさか学校に通えるなんて……絶対ありえない事なのに……。

 俊樹君は本当に何者なの?

 先生との面談も……一般の先生じゃなくて校長先生と教頭先生とだったし……。

 なんか凄く気を使われちゃった。


 教頭先生の申し出で、学校を案内されているけど、この学校凄い!

 校舎は広くてキレイだし、タブレットやPCが生徒に支給されていて、いつでも勉強のチェックができる。

 学食はおしゃれなカフェっぽい感じだったし……ていうか、学食の看板にアルバイト先の名前があったような気が……


 見るもの全てが珍しい。

 ――私、本当にここに通っていいのかな?


 頭がハゲあがった教頭先生は一生懸命この学校の素晴らしさを説明してくれる。

 額の汗が眩しい。


 なんだろう……苦労してるのね……。


 ふと気がつくと、学校中がざわめいている?

 教頭先生も気がついたのか、教室から顔を出している女生徒に注意をする。


「おい、授業中だぞ! 私は今、大切なお客様を案内しているんだ! もう少しでHRの時間が終わるから待ちなさい」


 女生徒は鬼のような形相で教頭を見た。


「……俊樹様が来てるのよ……ここ最近姿が見えなくて……ファンクラブ会長としてはこの事態見過ごせないわ……」


 教頭は女生徒の気迫によって後ろへ下がってしまった。


「す、駿河様の息子が来てるだと!? それを早く言ってくれ! 急いで校長に……」


 教頭は青い顔をしてスマホを取り出して電話を始めた。

 ――俊樹君が来ているの? 


 女生徒が我慢しきれず、雄叫びを上げながら教室を飛び出した。

 後ろから先生も叫ぶ。


「俊樹様ーー!! 我が校の至高の御方!! キングオブプリンス!!」


「ちょ、待ちなさい!! あ〜、駿河君は学校の不可侵だから気をつけなさい!!」


 え、出ていくのは良いんだ? 俊樹君……あなた……イケメンだけどさ、学校で何したの?


 私はそんな喧騒を無視して、スマホで俊樹君に連絡を取ってみた。

 ――えっと、このメッセージアプリで。


『俊樹君? 今どこにいるの?』


 ――あ、既読付いた……あれ? 






『後ろ』






 ――後ろ?


 肩を優しく叩かれて、私はゆっくりと後ろを振り返った。

 ほっぺたに指の感触が伝わる。


「ふふ、迎えに来たよ」


 そこに俊樹君が立っていた。


 私は口を空けて馬鹿面をしているだろう。

 本当に驚いた。

 俊樹君は確かにカッコいい。うん、今まで出会った事がないほどの美貌。

 だけど、無機質というか……冷たい印象を受けるというか……。

 そう、感情が感じられなかった。

 一緒に過ごして行く内に、凄く優しい人だっていうのはわかっていた。


 でも、今の俊樹君は……違う。


 私を見る表情が……いたずらっ子のような笑顔で、心の底から笑っているようであった。

 悔しいけど……凄く魅力的な笑顔。

 雰囲気が柔らかくなっていて……なんだか分からないけど、ひどく大人っぽく見えた。

 おかしい……私、イケメンなんて興味ないのに……

 鼓動が早くなるのを抑えられない。


 どうしよう!? 恥ずかしくて見てられないよ!?

 うぅ〜、絶対、顔赤くなっているよ!?


 周囲を見渡すと、HRを終えた生徒達が帰り支度を始めていた。

 何故か、私達の周りには人垣が出来ていた。

 しかも十メートル位の距離をきっちりと取っている……なにこれ……


「うぅ……あ、新手の罰ゲーム?」


 俊樹君は不思議そうな顔をして私の手を取った。


「ひゃう!?」


「どうした? 今日は帰って学校の準備をするぞ。バイト先に行ってシフトの調整もしなきゃな。あ、編入祝だから今日は僕が夕飯作るよ」


 周囲の生徒達が声を押し殺して、歓声を上げていた。


「……俊樹様の笑顔が」

「笑った顔、やばば」

「王子の向こう側を超えていますわ」

「……あの娘も、ちょっと可愛すぎじゃない?」

「うん、俺も思った……目が痛い」

「付き合ってるのかな? お似合い過ぎて何も言えない」

「尊い……」

「と、俊樹さんが手を振ってくれたぞ!? こ、これは事件だ!」


 ――あれ? 俊樹君、学校に友達いないって言ってたのに、大人気じゃん? へへ、良かった……。


 私は自分の事のように嬉しくなってしまった。

 ……そして、さり気なく手を握られている事実を思い出してしまった!?


「う、うう……恥ずかし……」


「うん、ああ、この手か? 流石にこの人混みじゃあ美冬が迷子になるからな」


「む、そんな子供じゃないもん!」


「はは、時間は有限だ。さっさと帰るぞ」


「……うん!」


 私は恥ずかしさと胸の鼓動を押し殺し、俊樹君に連れられるがまま、生徒が一杯いる学校を突き進んだ。


 ――なんだろう……この気持ち……。初めての気持ち……。

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