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盲目的な正義

表から見える印象だけで断罪してしまっては、玲那さんのような、本来は被害者であった方まで容赦なく処断してしまうことになるでしょう。


『被害者の気持ちを考えろ!』


とおっしゃるのでしたら、苛烈な虐待の被害者であった玲那さんの気持ちも考えなければいけません。


そうすると、事件の全容を詳細に明らかにしてからでないと、最終的な判断はできないのです。そしてそれは、被疑者ないし被告人の表面的な印象だけで決めてしまってはいけないのです。


カナのお兄さんの件についても慎重に対応するのは、玲那さんのような方を守る為に必要なことなのです。


事件の全容を明らかにし、それでもなお厳しく断罪されるべきと判断された時、ようやく判決が下されるべきであると、今の私は思います。


かような事件が立て続けに起こったことで、私としてもヒロ坊くんにただメロメロになっている訳にはいかない状況が続きましたが、玲那さんの判決が確定し、釈放されたことで、ほんの少しだけ、皆さんの気持ちにも余裕が出てきたと思います。


ただ、それでもなお『良かった良かった』とはなりません。


と言うのも、玲那さんは今、絵里奈さんと一緒に、沙奈子さんとは別々に暮らしてらっしゃるからです。何故そのようになったかと申し上げるなら、


『盲目的な正義を声高に叫ぶ者達から沙奈子さんを守る為』


ということになるでしょうか。


山下さんと絵里奈さんが入籍し、玲那さんが山下さんと養子縁組をし、四人で一緒に暮らす為の物件を探しているまさにその時に事件が起こってしまい、それに伴って玲那さんがその時点で住んでらっしゃった部屋の住所がネット上に晒され、嫌がらせが殺到したのです。


それに加えて、メディアスクラムによる<報道の自由><知る権利>という名の暴力が横行。それらが沙奈子さんを傷付けないようにと、敢えて<別居>という形を取ることになったのでした。


正直申し上げて、私としては納得のいかない判断でした。沙奈子さんを守る為とはいえ、せっかく出来上がった家族が別々に暮らさなければいけないというのは好ましくないと思ったのです。


正義を盾に嫌がらせを行うような輩や、知る権利を盾に報道に見せかけた暴力を振るうマスコミについては、それに応じた対処をすればいいと私は考えました。


しかし、そんな私にカナは言ったのです。


「嫌がらせやマスコミの取材を完璧に抑え込むなんて、たぶん無理だよ……」


と……


それは、お兄さんの事件をきっかけに始まった、<顔を隠した正義の使徒>やマスコミらによる蹂躙を実際に受けたカナの実感なのでした。



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