作法に拘ってまで
私達が所属している<茶道部>は、一風変わった活動方法をしていると思います。
最初の一時間については、茶道の作法などには拘らず、ただお茶を楽しむだけの時間なのです。それにより、お茶に興味を持っていただいて、さらにその先を目指そうと思うようになれば、それ以降の時間も参加し、そこで本格的な作法を学び<茶の道>を究めようという形になっています。
イチコ曰く、
「前半はエンジョイ勢向け、後半はガチ勢向けってことだね」
だそうです。そして私達は、最初の一時間だけの活動でした。イチコの性格的に、
『抹茶は好きだけど、作法に拘ってまで飲みたいとは思わない』
とのことですし。
茶道部としても、無理を強いるような方針はとらないとしているそうです。強引なことをして茶道に対するイメージが悪化することを懸念しているようですね。
このような形も悪くないと私は思います。実際、これによって部員数も確保できていますし、そのようにして興味を抱いてくださった部員の中から、毎年数人、後半の活動にも参加する方がいらっしゃるとのことですので、現実に効果を上げているのでしょう。
カナやフミ、正直なところ私もですが、この三人はあくまでイチコが茶道部に入っているということでそれに付き合っているだけというのも否めませんので、本格的に茶の道を究めようとは考えていません。
ただ、カナは、最近、
「な~んか、ここで和菓子を食べてるうちにさ、こっちには興味が出てきたんだよね」
とは言い始めています。お茶については今も『好き』とまでは行かないものの、和菓子については、種類によっては好きになってきているそうです。甘いものは苦手だったはずなのですが、やはり嗜好というのも変化するものなのですね。
そのようなカナのことさえ、部長さんは受け入れてくださっています。自身の身近な大人達の行いに反発すればこそ、自らは柔軟さを保ちたいと心掛けているとのこと。
立派だと思います。
カナは今日もイチコの看病があり先に帰りましたが、フミと私も部活動を終え、図書館に移動し課題の残りを済ませ、受験勉強も行いました。
午後五時。そろそろ千早を家まで送り届けなければと思い、フミと一緒に下校します。
その際、フミがカナにメッセージを送ると、
「今日はだいぶ熱が下がって体も楽になったから病院に行くって。まあ熱が下がったんならきっと大丈夫だよね」
カナからの返信を見つつそう言ったのです。
フミの言葉に私も、
「それは良かった」
と安堵しました。この時点で熱が下がるのであればインフルエンザである可能性も低いのでしょう。
あとは実際の診断で確定が出るのを待つだけですね。




