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人材の質の保証

『大学には進学しない』


そう言うカナを翻意させるだけの材料は、残念ながら今の私にはありませんでした。カナの人生はあくまでカナ自身のものです。それに私が過度に干渉するのはやはり望ましくないでしょう。


現在の社会は、大学を出たからといって将来が保証されるわけではありません。それは紛れもない事実。あくまで当人に生き抜く力が求められています。そして<学歴>は、昔ほどは生き抜く力の足しにはなってくれません。


にも拘らず誰も彼もが大学に通い、しかもそこで自らを高める努力をするのならまだしも、ただ社会に出るまでの猶予期間として無為に過ごすどころか、漫然と遊び呆けているだけという方も少なくない。


これでは、企業側としても、『大学に通っていた』という程度では人材の質の保証と見做すことはできないでしょう。


結果として、学生側自身が、大学というキャリアの質を貶めてしまったと言わざるを得ません。


となれば、学歴が必須の職場であればまだしも、あくまで本人の能力だけが求められるような職業や職場では、『大学に通っていた』というキャリアは必ずしもアドバンテージとはならないと、私も思います。


学歴によって給与に差がつけられているのは事実でも、それはあくまで身分が保証されていれば、勤続年数によって大きく差がついてくるというだけの話。有名一流大学を出ていても、入社十年でリストラされれば、その後も会社に残った凡百な大学を出ただけの方に追い抜かれるのも自明の理でしょう。


そして、リストラされるかどうかは、企業にとって有益な人材であるかどうかで決まる。加えて、能力がいくら高くても、それが必ずしも企業にとって<益>となるかは分からない。


某有名家電メーカーの役員である父も、


「出身大学だけでは、人材の質は判断できない。確かにいい大学を出ている人間はそれだけの努力を重ねてきているものの、中には、無駄にプライドだけが高く、すぐに自分が評価されないと拗ねてしまって明らかにモチベーションが下がるのも実際にいる。


しかし、企業における実績というのは、大学の試験やレポートのようにその場その場ですぐに結果が出るものとは限らない。分かり易い結果がすぐには出ない地道な積み重ねというものも求められるんだ」


とおっしゃっていました。


この話を聞いた時点では私も、


『それでも、結局は出身大学によって振り分けるのでしょう?』


と考えたりもしましたが、玲那さんの<声>を取り戻すための研究に協力してくださっている企業の技術者の方々と実際にお話しすることで、父の言葉が事実であったことを思い知らされたのでした。



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