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巻き込まれた人からしたら

カナも言います。


「私もさ、兄貴のことでレイプとか痴漢ってことに対して、頭で考えるより体が先に動いちゃうんだ……


痴漢に見えたら、それが本当に痴漢じゃなくてもまた飛び蹴り食らわしちゃうかもしれない。だけどそれじゃ駄目なんだよ。


兄貴が逮捕されて裁判になって、色々調べたし教えてもらったし考えたんだ。その中で、レイプ冤罪とか痴漢冤罪の事件のことも知ったんだ。被害者側の一方的な訴えで、本当はそんなことしてない人の人生が滅茶苦茶にされてるっていうのが実際に起こってるんだ。


レイプとか痴漢ももちろん許せないけど、そういうのも、巻き込まれた人からしたらそれこそ命を取られるのと変わらないくらいに酷いことなんじゃないかな。


だからさ、今度のことがちゃんと調べられて、本当に間違いなくフミが痴漢に遭って、私が思わず飛び蹴り食らわしちゃった相手が悪いヤツだっていうのを証明するために私が逮捕されるのも必要なことなんだったら、私はそれを受け入れるよ。


私、玲那さんを尊敬してるんだ。自分の罪とちゃんと向き合った玲那さんのことをね。だから玲那さんの前でみっともない真似したくない。堂々と自分がやったことと向き合いたい」


「カナ……」


カナの名前を呟いたフミの顔は、涙や鼻水で大変なことになっていました。けれどそれは、カナのことを想えばこそのものです。それを嘲笑う方がいたとすれば、私はそういう方こそを残念に思います。ご自身のことをここまで想ってくださる方が身近にいらっしゃらないということなのでしょうから。


そして、自らの罪に向かい合おうとしているカナのことを誇りにも思います。だからこそ彼女のために最大限の情状を引き出さねばと思うのです。


ここでカナが自らを正当化し詭弁を弄して言い逃れようとするのであれば、正直申し上げてここまで思えることはなかったでしょう。


カナは続けます。


「私もさ、別にすぐにここまで覚悟できたわけじゃないんだ。小父さんやイチコと何度も話して、それで言ってもらったから覚悟できたんだ。『いつでも帰ってきてくれたらいい』『いつまでも待ってる』って言ってもらえたから、覚悟を決めることができたんだ。


ちゃんと帰れる場所があるから、嫌なこととでも向き合おうって思えたんだ」


けれど、フミは言うのです。


「だけど、カナのお父さんはどうすんの? ここでカナまで逮捕されたら本当にヤバいんじゃないの? 追い詰めちゃうことになるんじゃないの?」



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