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不具合の部分だけを見て

私と玲那さんのやり取りを受けて、山下さんも、


「うん。玲那の件でも感じたけど、ネットって怖いものだっていうのと同時に、まだできて間もない、どう使っていけばいいのかよく分かってない新しい道具なんだろうなっていう気もしたよ。だからみんな、試行錯誤してる。その過程であまり好ましくない使い方もされたりもしつつ、やっぱりそれじゃマズイって思うのも人間なんじゃないかな」


と、ご自身の意見を述べられます。私もそれを受けて、


「はい。不具合の部分だけを見て『悪』と決め付けてネットを断罪するのも好ましい行為ではないと私も再確認できました。ネットはあくまで道具でしかありません。核物質を爆弾に使うのも発電に使うのも人間なのですから。その中で不幸な出来事もありましたが、その災禍を教訓として活かすことができるのもやはり人間なのでしょう。


人間なんていつまで経っても成長しないと嘆いているだけでは変わりません。努力をしない人が言う『無理』に意味があるとは思いません。慎重と諦観は違うのです。フミの弟さんのことについても、私にできないことをやってくださる方がいるということが確認できました。私ができないからといって誰にもできないわけではないのです。


この世にはまだまだ可能性があるというのを実感します。玲那さんの<声>を取り戻す研究についても、私にできないことをできる方に協力していただくことで実現に向けて動いているのですから」


自身の考えを述べさせていただきました。


山下さんも玲那さんも絵里奈さんも、まずは相手の言葉に耳を傾けてくださいます。相手の発言を遮ってまでご自身の意見を押し付けようとはなさいません。それが素晴らしいと思うのです。


世の中には、相手が自らの意見を述べることさえ許さない方がいらっしゃいます。


『自分の考えが正しいんだから、四の五の言わずに従え!』


とでもおっしゃりたいのでしょうか?


そう、それはまさにかつての私自身。その私がどのような結果を招いたかは、いまさら改めて語るまでもないでしょう。


あれらはすべて、私自身が招いたことなのです……




「けっけっけ、ざまぁ……!」


翌日、部活を追えて下校の途中、信号待ちをしていると、スマホで弟くんのアカウントを見たフミが嬉しそうにニヤニヤと笑っていました。まさに<嘲笑>という言葉がぴったり来る笑みでした。


弟くんに絡んでいる方のコメントばかりが並び、本人のコメントはそれに埋もれるように僅かなそれになっていたのです。しかも、明らかに根負けしているのが分かるそれで。


でも、私はこの時、『ざまぁ』と嘲笑(わら)うフミの姿を見て、悲しい気持ちになったのでした。



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