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理解できるとは

私の両親はそのような方でなかったので、正直申し上げてフミの気持ちが理解できるとは言えません。ですが、自身でも抑え切れない懊悩を抱いてしまうことについては、覚えがあります。私の場合はそれは両親よりも他人に向けられてしまいましたが。


玲那さんは応えてくださいます。


「私は、あの人達のことを両親だなんて思ってないよ。私にとってあの人達はただの『加害者』だから。


私がそうしてるんだから、フミに対して『親を敬え』なんて言えない。


それにさ、子供に敬ってもらえないような人間なのは、その人自身の問題じゃん。子供が悪いわけじゃないでしょ? 子供が親をそんな風に育てたんじゃないんだからさ。


別にいいじゃない。親だってどうせ自分とは違う人間なんだからさ。血が繋がってたって同じ家で生活してたって、自分じゃない人間は結局は『他人』なんだよ。その人達がどんな人間になるかなんて、どんな人間なのかなんて、子供の側からはどうしようもないんだよ。


尊敬できないような人を尊敬なんてしなくていいと私は思うよ。私だって、誰かから尊敬してもらえる人間じゃないしさ」


それは、玲那さんの奥深いところから自然と湧き出してくる言葉だと感じました。彼女にとっては実感そのものなのでしょう。


さらに玲那さんが続けます。


「自分の方からどう譲歩したって尊敬も信頼もできない親だったら、もう尊敬も信頼もしなくていいと思うよ。同じ家に住んでるだけの赤の他人でいいじゃん。そのために、『レンタル家族で集まってるだけ』っていう設定で家に帰るんだよね? それ、いいアイデアだと私も思った。私もあの人達を自分の親だなんて思ってなかった気がする。私を誘拐してきたただの誘拐犯だくらいに思ってたかもしれない。あの頃の記憶は、正直、曖昧な部分も多いけどね。


いいよね。家の外にこうやって集まれる場所があるのってさ。私もこういうのが欲しかったなって思う。でも、今はもう必要ないけど。


フミもいつかは、自分が安心して『帰りたい』って思える家庭が持てればいいね。それまでは私達が家族ってことでいいじゃん。私もう、フミのことを妹みたいに思ってるよ」


「玲那さん……」


フミが潤んだ瞳で玲那さんを見詰めます。そこには安堵の表情も含まれていたようにも見えました。


玲那さんのおっしゃるとおり、これまでにも何度か触れてきたとおり、今はもう、私達がフミの家族なのです。正直な気持ちを吐露し、ただ安らげる関係。


そういうものが人間には必要なのだと私も感じているのです。



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