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黒歴史 その5

「今日の自習時間は、臨時の学級会を行います」


これまで下準備を整え、その日、私は、この学校を私の思う<通う価値のある学校>にするべく、いよいよ具体的に行動を開始しました。まず手始めに、私のクラスで実証実験に入ります。


一時間目、教科担任の先生が体調不良で自習になったのは幸いでした。この機会を待っていたのです。


突然の私の提案に、教室がざわつきます。しかも、私の手駒となった方々以外の生徒は、まるで真剣にとりあおうとしていません。


ですが、これ自体が私の狙い通りです。目の前で起こっていることを自分のこととして捉えずに思考を放棄すること。


やはり私のように優秀な人間が導いてあげなければ何もできない、典型的な衆愚ですね。


そこでまず、単刀直入に提示します。


「今回の議題は、クラスを一軍から三軍にグループ分けすることです」


と。


すると案の定、大半の生徒が「はあ?」という顔をして、中には、


「お前何言ってんの? バカじゃね?」


などと口にした男子生徒までいました。侮蔑と嘲笑が、教壇に立った私に向けられます。


並の人ならばそれに耐えられず、感情を昂らせ、声を荒げたりもするでしょう。無能な教師などにもよく見られる対応です。しかしそれこそが能力の低さを表しているのだということにさえ気付かない人が多い。


ですが私にとってはむしろ口元が緩んでしまいそうになる、望んだそのままの光景でした。これでこそ操りやすいのです。


そして私は続けました。


「このグループ分けは、能力のある人を一軍として、その一軍が責任ある立場に立ってクラスを引っ張ることで無駄な諍いを無くしてクラス運営を円滑にし、ひいては高校生活を楽しく有意義なものにするために必要なものなんです。


大人の社会でも、能力の無い人が無駄に権利を主張して大事なことが決められずにグダグダになってる例を、私達は見て来てるはずです。だから、私達はそんな大人の失敗を繰り返さないように、責任を負える能力を持った人によって社会を引っ張っていくことを実践するべきだと思うんです。


その為に、今からそういうことを身に着けていくべきだと思うんです。それがこのグループ分けの目的なんです…!」


と、民衆を扇動し意のままに操った独裁者に倣い、身振り手振りを交えて、熱く語ったのです。


すると、最初は嘲るように私を見ていた生徒達の目付きがみるみる変わってくるのが分かりました。特に、


『能力の無い人が無駄に権利を主張して大事なことが決められずにグダグダになってる例』


と私が口にした辺りからはっきりと変わっていくのが、私には見えていたのでした。



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