黒歴史 その3
『私のような優秀な人間が導いてあげなくてはダメということですね』
なんて、今から思えば自分で自分を半日ばかりお説教してやりたいくらい恥ずかしい思い上がりですが、当時の私は大真面目にそう思っていました。
だからこそ、正しい目的の為なら何をしても許されると考えていたのでしょう。
故に、御手洗さんを傀儡のように操り、実質的な支配を強めていったのです。
ですが、そのようなやり方は必ずどこかに大きなひずみを作るもの。それが軋轢を生み、人の心を蝕んでいきます。
当時の私がそれを理解していれば……
あのような<事件>がなくとも、イチコ達と友人になれていたのかもしれないのですが……
しかし、あの頃の私はそのようなことを考えることさえなく、己の目的に向かって突き進んでいたのです。
その日は、三日前から御手洗さんが学校を休んでいました。何やら様子がおかしかったのは私も気付いていたのですが、些細な問題と気にもしていませんでした。
それよりも、日直だった飯田さんが、委員会を終えた私のところに来て、
「放課後、いつまでも教室に残ってる人がいて戸締りできないんだけど、星谷さん、何とかなりませんか?」
とおっしゃるので、私はたまたま飯田さんと一緒にいた三条さんも伴い、教室へと戻ったのです。
するとそこには、三人の女子生徒がたむろして何やら歓談していました。その三人は、いつも部活が始まるぎりぎりの時間まで教室に残っている人達でした。
まったく。他人の迷惑というものを考えないのでしょうか。
許せませんね。
なので、
「あらあらこれは三軍の皆さまお揃いで、勉強会ですか? でも教室を勝手に使われては、日直の方が戸締りできないじゃないですか。あなたたちの勝手で迷惑を掛けちゃいけないですよね?」
と、声を掛けさせていただきました。なのにその女子生徒の一人が、
「え、でも先生は、部活が始まるまでの時間ならいいって…」
などと口答えをしてきます。
やれやれ。なるほど担任は口頭ではそんなことを言ったのだとしても、そんなものは何の根拠にもなりません。自由と身勝手をはき違えた輩ですね。呆れます。
ですから私はさらに言わせていただいたのです。
「そんなの関係ありません。授業が終わったら教室の戸締りをするのが決まりです。今日の日直の飯田さんが、あなたたちがいるから戸締りできないって困ってたんです。だから副委員長の私が注意しに来たんです。さ、早く出てください。時間まで待つのは部室の前で良いはずですよ」