人の身でも
フミが語った内容は、あくまでフミの側の主観に基いたものですので、母親側にも当然のこととして言い分はあるのでしょうが、現在までに判明している客観的事実としては、フミの話を裏付けるものになっていることも事実ではあります。
私達は決して、フミの家庭が崩壊するようなことを願っている訳ではありません。可能であれば、フミが、
『この家に生まれて良かった』
と思えるような家庭になっていただければと願っています。ですが、現状、フミの母親は他人の話を聞き入れるような態度はまるでなく、ただただ自身の思うままに生きたいと願っているようですね。
もちろん、『自身の思うままに生きる』ということそれ自体が問題なのではありません。他人を虐げても一方的に自分だけがそれを望むというのが問題なのでしょう。そのようなことをすれば、虐げられた方も大人しくはしていられないでしょうから。
つまるところ、そこが重要なのだと改めて感じます。他人を虐げれば、それによって恨まれ、疎まれ、大切にしてもらえなくなる。結果として自身の幸せを損ねることにもなる。
それを裏付ける多くの事例を、私は見てきました。故に私はもう、そのような生き方をしたいとは思いません。ましてやその所為でヒロ坊くんに累が及ぶなど、想像したくもないのです。
彼と幸せな家庭を築く為に必要な教訓が世の中にはたくさんあると感じます。
フミの母親もそれに気付いてくださればいいのですが……
『だったらお前が教えてやれよ』
とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。ですが残念なことに、聞く耳を持たない方には私の言葉は届かないのも事実。それもまた、思い知らされています。
その一方で、フミがイチコと出逢ったことで救われたように、その方と上手く噛み合う出逢いがあればその後の人生が大きく変わるというのも事実なのでしょうね。
フミ自身、母親に似て『他人の言葉に耳を傾けない』という一面もあるのです。それが現在は、イチコを始めとした私達の言葉には耳を傾けてくれる。
不思議なものです。
ですが、それをただ<不思議>と称して、何か特殊な、人知を超えた何者かによる仕業と考えるのも違うのだと私は思っています。
それらはすべて、人の身でも成しうることなのだと思うのです。その為の努力をしなければと思っています。
努力もせずに得られるものは決して多くありません。
私は、ヒロ坊くんと家庭を築き、子を生した時、私が知りえたことについてしっかりと伝えたいと思います。
その子が幸せになれるように……




