表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/464

別に怖くないです

カナがスラックスを着用することになり、これで、当校でスラックスを着用している女子生徒は二人ということになりました。


一人は、当然、カナです。そしてもう一人はイチコでした。


私達が入学した当時には三年生に一人、スラックスを着用していた女子生徒がいたそうですが、その方は三年生の途中からスカートに切り替えたそうです。


噂では、お付き合いしている男性ができたことで、女性として目覚めたからだとか。


それが事実かどうかは私には重要ではありませんし、本人の望むことであるのでしたら口を差し挟む必要もないでしょう。ですが、それによってスラックスを着用している女子はイチコ一人だけになってしまったことも事実です。


それでも、イチコはまったく動じませんでした。元より、中学に進学した頃からずっとスラックスを着用し続けていたイチコにとっては、他人の選択などまったく関係のない話だったのでしょう。


これがイチコという<人>なのです。


彼女は、一年生の時に、校長先生に、


「どうして君はズボンにしたのかな?」


と尋ねられても、堂々と、


「スカートが嫌だったからです」


と応えたそうです。その上で校長先生に、


「君も分かってると思うけど、今、女子でズボンなのは君だけで、少し前まで三年にも一人いたけれど、その生徒も今ではスカートを穿くようになった。君は自分が一人だけだっていうことが怖くないかね?」


と重ねて尋ねられても、まるで臆することなく、


「一人なのは寂しいですけど、別に怖くないです。悪いことしてるわけじゃないですから」


そう応えてみせたのだと、カナから聞きました。そしてそのことが、カナが友人としてイチコと関わるようになったきっかけなのだとか。


その話を聞いた時、私も、


『イチコなら当然、そう言うでしょうね』


と感じたのでした。


そんなイチコに憧れ、自らもスラックスにすることを決心したカナでしたが、ご両親はやはり認めてはくださらなかったそうです。


女子がスラックスを選択するにおいていろいろと心配することはあったのかもしれません。ですが、中学進学当初からスラックス着用を貫いてきたイチコは平然と、


「別に困ったこととかなかったよ」


と言いのけます。そしてそれは強がりなどではなく、彼女にとっては本当に『困ったことなどなかった』とのことでした。


それはもちろん、学校側の受け入れ態勢が整っていたというのもあるのでしょう。イチコが入学する以前から、既に何人かの女子生徒がスラックスを選択してきたそうですし。


当然、スラックスのままで女子トイレにも入ります。最初はギョッとされることもあったそうですが、イチコが放つ空気感は確かに女性のそれであることもあってか、すぐに誰も気にしなくなったそうでした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ