モンスターペアレント? その1
恨み晴らさでおくものか。
というのは少し大袈裟かも知れませんが、正直な気持ちとしてはそのくらいの気分ではありました。彼に意地悪をして落ち込ませるとか、どこの性悪女の仕業でしょう。
『そのような輩にはそれなりの報いを受けさせるべきですね…!』
と私は思います。
そこで私は、まずその性悪女の素性を調べることにしました。彼と同じ小学校を卒業した生徒の中に、兄弟姉妹や身近な親類縁者が現在その小学校に通っている人がいないか、できれば彼のクラスメイトがその中にいないか、一人一人当たってみたのです。すると幸運なことに、隣のクラスの女子の妹さんが、まさに彼のクラスメイトだと言うではありませんか。これこそ千載一遇の好機だと思いました。
「ごめんなさい。ちょっといいですか?」
その女子に声を掛け、いったい彼の身に何が起こったのかを、彼女の妹さんから訊き出してもらうことにしました。
「妹さんに、先週の金曜日、クラスの中で何か変わったことがなかったか、訊いてもらえませんでしょうか?」
私の言葉に、若干、怯えているかのような戸惑った様子も見せながらも、
「? うん、まあ、訊くくらいなら……」
と応じてくださいます。
すると翌日には、呆気ないくらいに簡単に状況が判明しました。
「石生蔵千早っていう、クラスの女子が、その男の子にしつこくちょっかいを掛けたみたいで、男の子が教室を飛び出しちゃったみたい。
しかも授業が始まっても戻ってこなくて、これはヤバいとクラス全員で探したら、運動場の片隅の築山にこもっていたところを発見されたんだって」
とのことでした。なるほどこれなら印象に残ってても当然です。
しかし何ということでしょう! 幸い大事には至りませんでしたが、もしそれで彼の身に何かあったらと思うと私は冷静ではいられませんでした。これは早速その石生蔵千早とかいう性悪女に会って詳しい事情を訊き出さなければと思いました。
ですがその前に、一応彼のお父さんにお断りをしておかなければと思い、お父さんに直接説明する前段階としてイチコに仲介をお願いするべく話をしました。そうしたらイチコは、
「何かやってると思ったらそんなことしてたんだ。でもそれ、たぶんお父さんは許してくれないと思うよ」
と言うではありませんか。
「何故ですか!?」
と思わず迫る私に、
「だってそれだと、最近話題になってるモンスターペアレントみたいじゃない? 子供同士の問題に親が直接出向いてあれこれ言うとかってやつ。さすがにまだその段階じゃないと私も思うんだけどなあ」
と、いつもの様に呑気な口調でそう言ったのです。
モンスターペアレント…? まさか私が?




