お昼の用意
謎の<ドングリのオブジェ>を作った千早は、
「そうだ! これを夏休みの工作にしよっと!」
と声を上げました。
なるほど確かに、ちょっとした前衛芸術の作品のようにも見えます。
これをそのまま夏休みの工作として提出するというのもアリかもしれません。
するとヒロ坊くんも千早と同じようにドングリを連結させ、こちらは<ロボット>のような形になっていました。
こういうところはやはり男の子ということなのでしょうか。
「ヒロ、すっごい! よ~し! 私も負けてらんない!!」
千早がそう声を上げて、さらにドングリを連結させていきます。
そこに、アンナが、
「じゃあ、壊れないように接着剤でしっかりと補強しましょう」
と、接着剤を取り出し、接合部を接着していきました。
かと思うと、カナとフミは堅実に独楽とヤジロベエをいくつも作っていました。イチコは穴を開けたドングリに糸を通し、ネックレスのようなものを作っています。
また、玲那さんは、丁寧にドングリを連結させ、丸い鍋敷きのようなものを作っていました。立体かつ大きさなどもあり千早のやヒロ坊くんの<作品>の方が存在感はありますが、形の美しさという点ではさすがに玲那さんのそれの方が上でしょうか。
なお、沙奈子さんは、形や艶の美しいドングリをテーブルに並べ、うっとりとそれに魅入っていました。そういう楽しみ方ももちろんアリだと思います。むしろ、『女の子らしい』という意味では一番かもしれませんね。
そうして千早やヒロ坊くんらが楽しんでいる間に、アンナはスッとリビングを出ていきました。おそらく昼食の用意をしに行ったのでしょう。
今日の昼食は、リクエストのあった手作りピザです。石窯で焼くピザですので、準備に時間がかかります。
ですが皆さん、夢中になってドングリで遊んでいますので、ちょうどいいでしょう。
その様子を見守りながらまたレポートをしたためていた私でしたが、ふと時計に視線を向けた時、ちょうどいい頃合いだと感じました。
「そろそろアンナがお昼の用意を始めてるはずです。石窯でピザを焼くので、もしよかったらその様子を見に行きますか?」
私がそう声を掛けさせていただくと、
「え? 見る見る! 見たい!!」
千早が手にしていたドングリと竹ひごをテーブルの上に置いて立ち上がりつつ、
「沙奈! ヒロ! ピザ焼くとこ見に行こ!!」
と、沙奈子さんとヒロ坊くんを促して、リビングを出ていきました。
それを追うようにして、私達も石窯のあるテラスへと出ます。
そこには、ピザピール(柄の長いヘラのようなもの)を手に、石窯を覗き込みつつ、何度もピザの位置を直して焼き具合を調節しているアンナの姿がありました。
それを見た千早が、また、
「うお~っ!」
と興奮したように声を上げたのでした。




