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おはよう

「もうすぐ朝食の用意ができます。よろしければダイニングにお越しください」


他の部屋のドアが開いた気配がしたかと思うと、アンナの声が聞こえてきました。それが聞こえてきた位置から察するに、おそらく山下さんご家族にそう声を掛けたのでしょうね。


そこで私も、ゆるりと体を起こしました。


するとそれを察したのか、


「お姉ちゃん……?」


千早の声が私の耳をくすぐります。


「おはよう。千早」


私が応えると、


「おはよう!」


彼女は勢いよく体を起こしました。


「よく眠れましたか?」


との問いかけには、


「うん! すっごく気持ち良かった! 家だとお姉ちゃんとかが蹴ってきたりしてちゃんと寝られなかったしさ」


『蹴ってきたり』


それは単純に寝相が悪いという意味ではありませんでした。何か機嫌が悪かったりすると、憂さ晴らしの為に寝ている千早を蹴ったりすることがあったそうです。こんな幼い子供が、安心して眠っていることすらできない家庭……


今も、その頃の千早と同じ思いをしている子供がいるかと思うと、私は胸が締め付けられる気がします。


しかし今は、目の前にいる千早の為にも……


「それは良かった。私も千早と一緒に寝て気持ち良かったですよ」


と素直な気持ちと告げさせていただきました。他人と一緒のベッドで寝るというのがこんなに安心できるものだとは、私は去年まで知りませんでした。去年、イチコとカナとフミをこの別荘に招待し、共に時間を過ごすまでは。


他人と一緒に寝ると安眠できないとおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。そういう場合もあるとは思います。ですがそれは個々人の感覚の問題ですから、どちらが正しいというものでもないと思います。


それに私も、イチコやカナやフミ、そして千早が相手だからというのも間違いなくあるでしょうから。


きっと、ヒロ坊くんと一緒では、気持ちが昂ってしまってそれこそ寝られなかったでしょうね。


私と触れ合うことでとても穏やかに安心して寝ている千早だったからこそ、私も満たされた気持ちに浸ることができたのだと分かります。


そんなことを実感しながらも二人して起き上がり、顔を洗いに行きます。どうやら山下さんご家族は先にそれを済ませ、リビングダイニングへと向かわれたようですね。


逆に、イチコ達はまだ起きてはこないようです。でもまだ時間も早いですし、ゆっくり寝ていてもらいましょう。


と思うと、かちゃりとドアが開き、


「あ、おはよう!」


彼が私を見て、にっこりと微笑みながら挨拶してくれたのでした。



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