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ロボット

ところで、以前にも言いましたが、念の為に改めて申し上げておきます。


私が山仁さんのことを『お義父さん』と呼んでいるのは、いずれ彼と結婚した際の予行演習と言いますか、私としてはもう、彼との結婚は既定路線なので、私にとっては『お義父さん』なのです。


ですから、ヒロ坊くんにとっては<実のお父さん>ですので、その辺は誤解なきよう。




と、余談はこれまでにして、お祭りの方も会場に組まれたステージでの演目が全て終了し、ヒロ坊くんたちは体育館の中に用意されたプレイスペースへと移動してきました。


そこには、ビーチボールバレーの為のコートが用意され、幼児用の遊具がいくつも並び、体育館内のステージでは小さな玩具のロボットが列を作ってダンスを披露していたりと、楽しげな雰囲気に包まれていました。


「よっしゃぁ! 私もやるぞ~!」


カナがそう声を上げ、千早と一緒にビーチボールバレーに参加します。


しかしスポーツにはあまり興味のないヒロ坊くんは、ロボットを見にステージ前まで来ました。


「すごいね」


ロボットであるが故の一糸乱れぬダンスに、彼は感心したように呟きました。


「そうですね」


私も応えさせていただきます。そして、


「ヒロ坊くんはロボットは好きですか?」


と改めて訊かせていただきました。女の子に間違われることが少なくない彼も、決してジェンダー的な意味では<女の子>ではなく、それなりにロボットなどにも興味があることは存じ上げていましたが、今でもそうなのか確かめさせていただいたのです。


すると彼は、


「うん。好き。僕も将来ロボットとか作れたらなって思う」


と応えました。


もっともそれは、本当に他愛ない、子供の思い付きに過ぎない程度のものであることも伝わってきます。本気で将来のことまで考えてのという程の熱量は含まれていないのは分かりました。来年も同じ質問をしたらまた別の答えが返ってくるでしょうね、と感じるものであったのは事実です。


しかしそれでいいと思います。六年生の時期から自身の将来を決めてしまうというのは、立派なことであると同時にリスクも伴いますから。熱意を込めれば込めるほど、実現できなかった時のダメージも大きくなるでしょう。


大人はそういう時、


『それを目指して努力したことは必ず役に立つ』


とついつい言ってしまいがちですが、実はそれ自体、何の保証もない根拠もないものであることも私は知っています。そのように言われてそのようにしてきて、けれど挫折したことで人生を狂わせた事例があることも、裁判資料などを読み込んだ時に何例も見たのです。


それらの現実から目を背けて耳に心地好い言葉を掛けるだけではただの無責任でしかないと、私は考えているのです。



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