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7話 睡眠学習からの目覚めと神の訪れ

ズシンッ!


シズは3回目の尻もちをついた。もう3回目ともなると慣れたもので、すぐに体勢を立て直す。


「まずは剣を……剣を出さなきゃ! ―――来い。 我が(つるぎ)


さっき剣の生成に成功した感触がまだ残っているうちに、右手に集中し始める。

今回は、前回よりもスムーズにイメージすることができ、素早く剣を生成した。そして、シズの後ろにいるであろう神獣化したトゥカに向かい身構える。


「やあトゥカ。 また戻ってきたよ」

『ア……ア"ア"ァ』


前回、前々回と同じ反応のトゥカ。そして、トゥカが次の行動を起こす前に、シズが攻撃に出る。


「ごめんねェェエエ!!」


刃がトゥカの左胸から右脇腹へと斜めに一線を引く。初めて肉を絶つ感触を刃を通じ感じたシズは床にそのまま座り込む。


『イア"ア"! ア"ア"ァア"ァア"ア"ア"!!』

「う……う"ぅ……」


胸を押さえ必死に血を止めようとするトゥカの様子を見て、シズは最悪感とともに吐き気も覚えた。夢だとは言え、親友を断ち切り、負傷する姿は彼女には耐え切れなかったのだ。

すると、トゥカが最期の力で光を纏わせ突っ込んでくる。


『ア"ァ!』

「うそ……」


床に座り込んでいたシズは反応できずに、茫然としてしまう。だが、トゥカの軌道は右に大きくずれ、そのまま家具や壁を破壊しながら突っ込む。


『……。』

「トゥカ? ねぇトゥカ?!!」


シズは蝋燭に火をつけ辺りを明るくし、横になったまま動かないトゥカに駆け寄る。トゥカは家具や壁にぶつかったことにより、切り裂かれた胸だけではなく、全身血だらけになって息絶えていた。


「嫌だよ……。 嫌だよこんなの―――」


ピシャンッ!!


「な、なに?!」


トゥカの亡骸から目を逸らした瞬間、天井が大きく縦に割れる。そこからは、淡い赤色をした光が差し込んでいて、視界を覆うようにどんどん強くなっていく。

あまりの強い光に目を閉じると、またも不思議な感覚がシズを襲う。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「シ~ズ~。 もう朝だよ~。 起きてっ!」


聞こえてきたのはいつもの明るいトゥカの声だった。目を開けると普段と変わらない朝日が窓からベットに差し込み、室内を明るく照らしている。

シズは、久しぶりにトゥカに会ったかのように感じ、彼女の首に腕を回し優しく抱きつく。


「トゥカ……」

「えっ! え、何?! どうしたの?!!」


急に抱き着いてきたシズに、顔を赤くし動揺する。だが、いつもより元気がないと感じると、トゥカは母親のように尻尾をシズの背中に絡ませ、頭の後ろを撫でてあげる。


「怖い夢でもみたのか?」

「(―――コクリ)」

「そうか。 それは災難だったな」


シズは、自分のスキル“睡眠学習”について、トゥカにだけは話しておこうと思い、昨日のことを話すことを決意する。


「実はね―――」




「そうなのか……。 そんなスキルがあったとはね」


トゥカは、シズから聞いた内容に頭を悩ませる。そして、自分が光源以外にもスキルを隠していたことの申し訳なさを感じていた。


「ごめんな。 私がスキルを隠していたばっかりに、シズに迷惑をかけてしまった」

「いいのいいの! 現実に被害があったわけでもないし」


2人は面と向かって話し合い、今後について考える。トゥカの“神獣解放”、シズの“睡眠学習”それぞれ厄介なスキルだ。2人はいくつもの対応策を考えるが、一向に解決策というまでの案は出てこない。

すると、埒が明かないと思ったトゥカが結論を出す。


「私のスキルはやっぱり、私自身が強くなってコントロールするしかないと思う。 シズのはまだ分からないことが多いから、様子を見るしかないと思うの」

「そうだね、そうするしかないよね……」


結果的に、トゥカが昨日話していた通り騎士になり、シズは様子を見つつ安定してきたら、冒険者として生活していくことになった。


トントントンッ


玄関の扉を叩く音が聞こえた。村の人なら、慣れ親しんでいるのでノックもなしにいきなり入ってくるものだが、違うということなら外部の人。つまりは村の人以外ということになる。

警戒しつつ、シズは玄関の横にある窓からそっと顔を覗かせる。


「誰だろ―――あっ!!?」

「シズの知り合い?」


続いてトゥカも窓から玄関の前を覗く。


「えぇぇぇえええ!!」


トゥカも続いて驚き耳がぴょんと跳ね上がる。2人は顔を見合わせ、同時に訪問にしてきた人の名前を呼ぶ。


ミラちゃん(・・・・・)!!」

ミト様(・・・)!!」


――――――。


「「??」」


どうやら2人は別々の人に驚いていたようで、不思議そうな顔をする。


「ミト様?」

「ミラちゃん?」


「「(誰……)」」


困惑しつつも未だに玄関に訪れずにいると、玄関先にいたミトが窓から覗いている2人を発見する。2人もそれに気づくと、ミトは玄関を指差す。そして、口を開き『開けて』っとジェスチャーをする。

シズは玄関まで走り、玄関を勢いよく開ける。


「ミラちゃ~ん!!」

「シズお姉ちゃ―――ふごっ!!」


シズは玄関を開けると同時に、ミラに抱き着き小さな胸の中に沈める。その後からトゥカもゆっくりと玄関に現れ、冷や汗をかきながらミトに対し一礼する。

するとミトは、シズの頭を撫でるように触る。シズはミラとのハグを中断する。


「ミラちゃん。 この綺麗な人は誰?」

「ん~? シズお姉ちゃんこの世界の人なのに知らないの? 私のお母さんだよ」

「余計に知らないよ!!」


その言葉を聞いたミトが膝から崩れ、玄関にもたれかかる。自分のことが知られていないことがショックだったようだ。


「そうね……。 私はまだ辺境の地の神レベルなのかしら……」

「そそそ、そんなことないですよミト様! この馬鹿が世間知らずなだけですから!!」


すぐさまトゥカがフォローに入る。


「ありがとうトゥカちゃん……でよかったわよね」

「はい。 昨日はお世話になりましたトゥカ・リティナです」

「昨日? ってことは―――」

「神様だよ! シズが本来お世話になる予定だった!!」


衝撃の事実にシズはすぐさま頭を垂らす。トゥカもそれに続き、玄関先で膝を曲げ頭を垂らす。

ミトはようやく威厳を取り戻せたことに喜び、復活する。


「いいのいいの! 普通にして。 今日はその昨日のことで話に来たのだから」


2人は言われた通りに体勢を崩し、ミトとミラを家の中へと丁寧に案内した。

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