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8話 魔物の腹の中で

 

 あの後3つの大玉を使用して何度か死にかけた俺は今、木箱に腰掛けて自分の体に起こった変化を確認している。


(どうですか?自分の中の秘めた力が目覚めた感覚は?(笑))


「何ですか?その厨二みたいな問いかけは。

 まぁ、不思議な感覚ですよ。

 今まで魔法なんてない世界にいましたからね。

 体が自分じゃないみたいな感じかな。

 自分の中に膨大な何かがあるのはわかります。」


(それが魔力です。知覚できるのであればそれを全身に隈なく行き渡らせて下さい。

 手の指先から足の指先まで。)


「はい。」


 そして俺は言われた通りに体の中にあるその膨大な何かを動かしていく。

 自分が望んだ通り淀みなく動くそれはクリスタルとの激闘で傷ついた俺の体を瞬く間に癒していった。


「傷が治った…。右足の痛みも消えてる。これって治癒魔法なんですか?」



(えっと…はい。

 そのようなものだと認識していただいて構いません。そのほかにも体調が悪かった場所も治っているはずですし。

 魔力は自己自然治癒を最優先に行います。

 でも山田さんが手に入れた魔力は大玉ですのでその程度の治癒では殆ど魔力は減らないはずです。

 どうですか?少し馴染んできましたか?)


「全身に隙間なく動かすことは出来ました。

 でもまだ馴染まないですね。

 違和感はかなりあります。

 でも不快感というわけでもないですね。」


(魔力は体の中心に集まる性質があり放っておくと魔力操作が上手くいかなくなります。

 まずは全身に隈なく行き渡ることを常に意識していて下さい。

 違和感はすぐに無くなるはずなので。

 では、魔法の講義を始めましょう。

 山田さんは魔法ってどうやって発現するものだと思っていますか?)


「えぇ?魔法ですか。そうですね。

 自身の中にある魔力を放出して発現させる感じですかね?」


(そうです。今山田さんの体の中の違和感こそが魔力で、それを"放出する際、"明確に"イメージすることによって発現します。

 この"明確に"がとても大事です。)


(イメージ出来ない、曖昧なイメージだと放出しても発現しない。

 もしくは発現出来ても殆ど威力、効果のない魔法になり魔力を大幅に使ってしまいます。

 なので魔法を使える人は自身がより明確にイメージして発現しやすい魔法ばかりを使用します。

 この世界での攻撃魔法は殆ど火魔法ですね。

 水魔法を使用する場合は殆どが火魔法のレジストになります。

 水で攻撃するイメージができないんですよ。

 土魔法で攻撃される方もいらっしゃいますが魔力効率がかなり悪そうです。

 身体・大玉の人が手で投げた方が威力はありますし。

 風魔法で攻撃する人も殆どいません。

 風魔法では殺傷能力まで威力を込めることができないのです。)


(あと魔力・小玉で魔力を手に入れただけでは殆ど攻撃魔法は発現されません。

 魔力操作・小玉も手に入れて初めて数発発現できる程度です。

 しかし、魔力操作は魔力を持つ方なら何年か訓練すれば習得することができる場合が殆どです。

 つまり魔力操作玉のみを手に入れた方はユニークで魔力持ちでない限り魔力自体がないので、発現することは出来ません。)


「なるほど。つまり両方の大玉を習得した俺はイメージさえしっかり出来れば魔法を発現することができるということですね。あとはイメージかぁ。

 雷魔法とかカッコいいと思うんですけど、どうですかね?」


(発現出来なくないとは思いますが、方向性をつけることが困難ではないでしょうか?イメージ出来ますか?)


「うーん。そうですよね。

 狙った方向に飛ばすのが難しいですよね。

 スタンガンみたいに自分の手の中であれば出来るのか…。

 まぁそれは後で実験するとして、簡単にイメージできるのはやはり火魔法ですかね?」


(ここは室内なので実際に放つのはダンジョンを出てからにしましょう。

 まずこの部屋にあるものすべて収納袋に入れて下さい。これから必要なものもありますし、不要なものは売れば良いのですから)


 俺はマリちゃんに言われた通りに部屋にあるものを片っ端から背嚢型の収納袋に収めていった。

 もちろん俺の持っていたスーツもそのまま入れておく。

 あからさまに普通の背嚢では10個くらい使わないと入らない量なんだけどスルスル入っていく。

 つーかこれどんだけ入るんだよ。


(その背嚢型の収納袋は馬車4台分くらいの収納力があります。普通の背嚢型収納袋は馬車1台分くらいです。そこまでの容量の収納袋は珍しいので貴重ですよ。)


「異世界すげえな。やっぱり文明も高いんですかね?俺なんかが街に行ったら田舎もん扱いされるのかなぁ。やだなぁ。」


(この世界には地球のように電気、化石燃料といったものはないんですよ。

 代わりに魔石を使った魔道具文化が発達しています。その収納袋も魔道具です。

 そして魔道具は高価なのですべての人が持っているわけではありません。

 ですかとても長持ちするのでとても普及していることは事実です。)


「へぇ。魔石に魔道具ですか。やっぱり魔石は地面から掘るんですか?」


(いいえ。魔石は殆ど魔物からとります。

 強く大きい魔物ほどより大きい魔石を有していますので大きい魔石ほどより高値で取引されます。)


「大きい魔石ってどんなのなんですかね?やっぱり綺麗な宝石なんですか?」


(山田さんは既にかなり大きな魔石を見てますよ。

 ダンジョンコアです。あれも魔石です。というかダンジョンコアという魔石があるので一応ダンジョンも一つの魔物と考えられています。)


「…まじかよ。」


 衝撃の事実だよ。じゃあ俺ずっと魔物の腹の中にいたって事なのか?もう1秒でも早く脱出したい。けど、まだ木箱の硬貨を回収してねぇ。


(さぁもう全部回収しましたか?この部屋が終わったらダンジョンコアを回収してダンジョンから脱出しましょ〜。)



 俺の気持ちをわかってるはずのマリちゃんからの呑気な声援を聞きながら俺は1秒でも早く脱出するために急いで巾着袋の中に硬貨を詰めていった。



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