4話 幽霊は怖い
おれは今、目の前の棚にある一つの玉と向き合っている。(世界の真理・大)と理解はできるがよく分からない文字で書かれた玉だ。
ビビりながらも触ってみる。
何でできてるんだろう?つるつるするな。
かなり固そうだ。重さはどうだろう?と持ち上げてみた。
「そんなに重たくないな。」
冷たくない。無機物のような冷たさはなく持っていて不快感は全然ない。
「何に使うものなんだろう?」
似たような玉は後5つあり、それぞれ何か文字が書かれているが理解出来ない。何故かこの玉だけは理解できる。
とりあえず戻そう、と思い棚の方へ手を向けた途端、何故か玉が手から滑り落ちた。
ヤバイと思い右足でトラップしようとするも痛くて上手く動かせない。
地面に玉が落ちて表面に大きな亀裂が走り、中から紫色の煙が噴出した。
そして俺の事を覆い始める。
俺は壊してしまったショックで判断が遅れ、その煙から逃れることが出来なかった。
煙を僅かに吸い込んだ際、強烈な頭痛と耳鳴りに襲われ立っていることもままならない。
しゃがみ込んだ俺はまた僅かに煙を吸ってしまい、更なる頭痛に襲われる。
ヤバイ…。死ぬ。なんて事を思いながら、息する事を我慢しつつ床に倒れこむ。
しかし煙は俺から離れない。
強烈な頭痛のせいでまた浅く呼吸をしてしまい、更に頭痛が増した。
この痛みに身体が拒否反応し、俺はここで意識を手放してしまった。
(……だ…ん。……ださん。や…ださん。)
誰かに呼ばれている事に気がついて、少しずつ意識が覚醒してきた。
俺は意識を失ったままの姿勢で床に転がっていた。
(やまださん、意識が戻ったのですね。)
正直まだ頭が痛い。
なんだったんだよ、さっきの煙は。
毒の罠だったのか?何が(世界の真理・大)だよ。
殺す気満々のトラップじゃねーか。
(…山田さん大丈夫ですか?)
俺は体を起こし周りを見渡す。
そこは倒れる前と何も変わらない光景。
俺は水を飲むために木箱の近くに置いてあるバックに近づいた。
(あの…山田さん)
俺は木箱に腰掛けバックからミネラルウォーターを取り出し勢いよく飲み干す。
そして頭痛の残る頭を抱えてため息を吐き出した。
(もしもし…山田さん…)
もう一度周りをよく見る。うん。
間違いない、俺、頭おかしくなったわ。幻聴聞こえるもん。
この部屋に俺以外誰もいないし。だけど声が聞こえるんだよね。
コールセンターのお姉さんの声が。よくいる声だけ可愛いいタイプだわ。
間違いない。
(…おい。コラ)
…やべぇ。幻聴のお姉さんなんか怒ってるよ。
どうしよう。
でもさ、仕方なくね。
煙に襲われて強烈な頭痛で意識を失ったと思ったら可愛い声のお姉さんの幻聴が聞こえるんだよ。
誰だって頭がおかしくなって狂ったと思うでしょ。
少しくらいの暴言許してほしいなぁ…。
(ったく、仕方がないですね。
今回の暴言は許します。
混乱しているでしょうし。
ちなみに幻聴ではないですよ。
聞こえているのでしょう?山田さん。)
「はい。先程からずっと聞こえています。
幻聴ではないとしたらどちらさまでしょうか?
……まさか幽霊!?」
俺は幽霊が嫌いだ。
見たこともないし、触れたこともない。
本当はいないかもしれないし、いるのかもしれない。自分の力では関与できない未知の存在。
恐怖以外の何者でもない。
(いいえ。違いますよ。
ちなみにこの世界には幽霊というか死霊は存在します。魔石を保有するアンデットですね。
そちらは後で説明いたします。
わたしは先程あなたが落とした特殊能力玉、世界の真理・大玉です。
あなたに知識と情報を授けるための存在です。
どうぞよろしくお願いします。)
「え?あぁよろしくお願いします。
じゃあ、あなたはあの玉に封じ込められていたんですね。
それを俺が解いた。つまり恩人だ。
ということは現世でやり残した事をすれば成仏する、って事でファイナルアンサー?
協力しますよ。」
(だから幽霊じゃない!って言ってるでしょう。
話聞けよ!
私は特殊能力玉、世界の真理・大玉で山田さんにこの世界[アマルテア]の知識を授ける存在です。)
「え?[アマルテア]?なんですかそれ?
ここは地球でしょう。地球のどこかはわかりませんが変な設定やめてください。
つーか知識あるなら俺をここから早く出して、元いた場所に戻してくださいよ。」
(…ここ地球じゃないですよ。
山田さんは何者かに転移させられて、この世界[アマルテア]に連れてこられたんです。
私は先程、山田さんと同期したので山田さんの記憶も知識も全て把握しております。
また元々の世界の真理・大の知識も情報もあります。
私も全ての真理を知るわけではないですし、情報の閲覧も制限がかかっております。
なので誰が山田さんをこの地に飛ばしたかはわかりませんが、間違いなく山田さんは転移により地球から[アマルテア]に飛ばされています。)
「は?ここ地球じゃないの?……まじで?」
俺はその衝撃の答えにしばらく茫然自失とするのだった。