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37話 50階層迷宮踏破2 〜リサ無双〜

 

 50階層迷宮に入って3日目。

 目を覚ました俺たちは早々と出発の準備を整え探索を開始した。


 この階層にも所々に罠があるのだか、腰までの深さしかない落とし穴のみで重傷や致命傷に至るようなものではない。

 しかし目立ちにくい場所にあり、今までのように走って探索をする事は出来なくなっていた。


 しかも迷宮内部も広がっており下の階層に降りる階段の探索時間が嫌が応にも長くなっていく。


 時間短縮のためになるべく魔物との戦闘は避けてきたが、避けているだけでは負傷してしまうような魔物も出てくるはずだ。

 そろそろ魔物を討伐しながら進んだ方が良いのかもしれない。

 俺は歩きながら3人娘に話しかける。


「そろそろ魔物を避けるだけではキツくなってきた。

 1対1で相手をして負傷するのも馬鹿みたいだし、みんなで討伐していこうか?

 前衛はカナンとリサで中衛が俺、後衛はアリアでどうかな?」


「私は戦闘狂でもないし後衛で良いわよ。

 でもゴーレムが出た時はカナンは下がった方が良いんじゃないの?」


「私はテンチュー君を活躍させるならどこでも良いです。

 やっと身体・中玉にも慣れてきたのでどんどん活躍させてあげたいですし。」


「基本の並びはそれで、戦闘中は臨機応変で良いのではないか?

 アタシは何処でも構わないが。」


「じゃあ通路も広くなったし並んで行こうか。

 前衛リサとカナン、後衛に俺とアリアで戦闘時は臨機応変に対応する、ってことで。」


 そうして4人が2列になり進んでいく。

 この階層の魔物はチャコールリザードだ。

 2足歩行で手足の長いワニのような魔物だ。

 皮膚が硬く動きも早い。

 戦闘を避けて逃げようとすると4足歩行で追ってきて嚙みつこうとしてくる怖いヤツだ。


 索敵魔法を適当に放ちながら進んでいくと曲がり角の向こうに2体の反応がある。

 多分チャコールリザードだろう。

 前衛の2人に曲がり角の先に2体いることを告げて警戒をさせる。


 角を曲がり10メートルほど先にいるチャコールリザードを確認するとリサとカナンが走り出す。


 僅かにカナンの方が早く、一体のチャコールリザードに切り掛かり左手を切り落とした。

 そしてカナン諸共ぶっ飛ばそうと大鎚を振りかぶるリサ。

 リサの大鎚が当たる直前に転移したカナンは、もう一体の背後に現れて背中を袈裟懸けに斬りつける。

 突然背後から斬りつけられたチャコールリザードは振り向きカナンに喰らい付こうと口を伸ばした。


 しかし先程の一撃で左腕のないチャコールリザードを壁まで吹き飛ばしたリサはカナンに迫る大口を開けたもう一体の背後から脳天めがけて大鎚を振り下ろした。

 脳天への一撃を食らったチャコールリザードは大口を開けたまま地面に突き刺ささり動きを止めた。


 脳天に大鎚を食らったチャコールリザードの顔は原形を留めていない。あれは即死だろう。

 一方の左手の無いチャコールリザードは壁に激突したままの体勢で動こうとしない。

 リサの大鎚で殴られた場所は大鎚の鋭利な突起で傷つけられて血が吹き出している。


 万が一生きていても反撃もできないだろう。

 俺は左腕のないチャコールリザードの頭をファイアーボールで吹き飛ばした。


「良い連携だったよ。

 カナンは転移をうまく使えているし、リサは振り回される事なく大鎚を振れてるね。

 この調子で討伐して行こう。」


「……私何もしていないのだけれど。」


「今は2人だとオーバーキル気味だけど、これから階層を下がれば魔物も強くなる。

 そうすれば必然的に出番があるよ。

 だから油断だけはしないでね。」


「しかしリサの攻撃は怖いな。

 私は未来予測で自分が潰されるイメージが出たので転移で避けたが、無ければ食らっていたぞ。」


 えぇ?

 連携したんじゃないの?

 避けれなければフレンドリーファイアじゃねーかよ。

 つーか俺なら自分の視線外だから未来予測でも見えなくて食らっちまう。

 これは注意しないとな。


「……リサ、今の話は本当?

 練習していた動きではないの?」


「……はい。

 でもカナンさんなら避けられると信じてあの攻撃を選びました。」


「……それは今後絶対に禁止にしてくれ。

 カナンは未来予測・中玉と補助・小玉があるから今の攻撃を避けられたんだ。

 俺やアリアなら今の攻撃は避けられなくて即死するよ。

 その大鎚の攻撃範囲に味方がいる場合は攻撃しないか一声かけるかどちらかにしてくれ。

 それができないんだったらリサは今後迷宮には連れて行かない。」


「……はい。

 申し訳ありませんでした。

 今後は気をつけて攻撃します。」


 買う時に考えていたけど、あの大鎚は危ないな。

 いやリサが危ないのか?

 だけどこの迷宮で連携の訓練をしていけばいいことだ。

 マリちゃんに相談して連携の効率の良い訓練方法を教えてもらおう。


 そんな事を考えながら探索を進める。

 先程の戦闘とは違いカナンもリサも突っ込むことはせずに落ち着いて魔物を討伐していく。


 実力的にこの階層の魔物は3人娘より格下だ。

 落ち着いて戦えば怪我をすることもない。

 先程は奇襲の先手必勝のような戦い方だった。

 多分2人とも相手の実力がわからないので先に攻撃を当てようと焦ってしまったのだろう。


 その後も戦闘を重ねながら36、37、38、39、と階層を降り続けて40階層に到達した。

 今日だけで討伐した魔物は40体を超えている。

 殆どカナンとリサの功績だ。


「40階層に着いたけど、どうする?

 カナンとリサばかり戦闘していてアリアと俺は体力が余っているんだけど。

 もし良ければ前衛、後衛を代えてみないか?」


「ああ。流石に少し疲れた。

 交代してくれるのなら助かる。」


「私も交代します。

 テンチュー君もいっぱい振れましたし、満足できたので。」


「じゃあ、この階層から俺とアリアが前衛ね。

 どう戦っていく?

 アリアが援護してくれるのなら俺が突っ込むけど。」


「それも交互にしましょう。

 私も接近戦に慣れていないとダンジョンマスター辺りで負傷するかもしれないし。」


「わかった。では交互でいこう。

 はじめは俺が突っ込むよ。援護お願いね。」


 40階層はさらに天井も高く通路も広くなっていた。

 多分下の階層に降りるまでの階段の距離も比例して伸びているのだろう。


 この階層の魔物は体長6メートルほどの地竜だった。

 はじめはデカさにビビったが落ち着いて攻撃をすればしっかりダメージを与えられるし、そんなに強くはない。


 アリアも最初は驚いていた。

 しかし手甲で殴りつけ、足甲で蹴りつければある程度のダメージが与えられることに安堵したのだろう。

 一体倒してからは不安な顔を一切見せずに地竜に突っ込んでいった。


「私が地竜と接近戦で戦えるなんて3ヶ月前には想像も出来なかったわ。

 まぁ身体・小玉だからヤマダさんのように数発で戦闘不能には追い込めないのだけれど。」


「それは仕方のない事だよね。

 次に身体・中玉か大玉が手に入ったら優先権はアリアにあるからね。

 そのかわり魔力・中玉か大玉はカナンに、魔力操作・中玉か大玉はカナンとリサに優先権があるよ。」


「そうだな。

 それが公平だろう。

 私も身体・大玉は吸収したいが、いつまでもアリアが小玉では危険だし。」


「私もテンチュー君のために身体・大玉を吸収したいですけどアリアさんを危険に晒すわけにはいきません。」


「うん。

 俺はみんなに公平に強くなってほしいからね。

 戦闘スタイルで遠距離、近距離の得手、不得手はあると思うけど能力玉は公平に吸収してもらうつもりだよ。」


「そうよね。

 特定の能力玉を吸収したくない。

 なんてわがままを言っていたら世界樹には行けないものね。

 ……私は強くなるわ。そして富を手に入れるの。

 誰にも奪えないほどの富を。

 それが私がヤマダさんの奴隷になった1番の理由。」


「……そっか。

 何故そこまでお金に拘るのかは聞かないよ。

 今は話したくないだろうし。

 でも俺たちは仲間だからさ、辛い事とか悲しい事は相談して欲しいとも思っているよ。

 1人よりみんなでなら解決できることもあるしね。」


「……ありがとう。ヤマダさん。」


「主は奴隷にも優しくするんだな。

 でも元の世界に家族を残しているのだろう。

 あまりアタシ達に優しくすると、ミラのように惚れられて大変になるんだぞ。

 少し自重したほうがいいな。」


「俺は他人を自分を映す鏡だと考えているんだよ。

 だから優しくされたい相手には優しくするし、好きになれない相手には優しくはしない。

 聖人君子でも何でないから相手が高圧的な態度で来れば、俺も高圧的な態度で返す。

 この世界の全ての人に優しくされるのは不可能だし、優しくするのも不可能なんだ。

 でも俺は極力女性には優しく接するよ。

 まぁ失敗もするけどね。

 少し前に騙されたばかりだし。

 ……でもこの性格は変えられない。

 そういう環境で育ったからね。」


「面白い考えね。でも一理あるわ。

 相手は自分を映す鏡……ね。

 だからミラの想いには答えられないけれど優しく接しているのね。

 私も気をつけないとヤマダさんに惚れたら大変だわ。

 ……いや、私たちね。」


「無自覚に優しくしているわけではない、ということか。

 余計タチが悪い気もするが、主は主だ。

 アタシも惚れ込むのは気をつけよう。」


「私は……ヤマダ様の優しいところは大好きですよ。

 前のお屋敷は酷いところでしたので、こんなに優しいご主人様がいらっしゃる、と知って驚きましたし。

 それまでの境遇は何だったのか、とも思いました。

 けれど私はヤマダ様と結ばれることはできません。

 ミラさんに殺されてしまいます。」


「ははは。ミラの想いは凄いよね。

 俺もたまに驚くよ。

 でもミラは俺への想いが初恋で周りが見えていないだけなんだよ。

 目が見えるようになったミラには俺よりもっと良い男が相応しいんだ。

 いつかミラも気づくはずなんだ。

 元の世界に帰還する子持ちのおっさんはそう思うよ。」


「……すいぶんと希望的観測ね。」


 能力玉の話から恋愛話になってしまったが仕方ない。

 俺のスタンスを話しておかなければ3人娘との信頼も築けないだろう。


 久しぶりの甘酸っぱい雰囲気に頬が緩みそうになるがここは迷宮内。

 一瞬の油断が生死を分ける場所なんだ。

 俺は3人娘に気合いを入れ直すように言って探索を続けていった。


 42階層も地竜が出たが数が増えていないし、群れてもいない。

 俺とアリアで苦戦することなく討伐し43階層に降りる階段を見つけることができた。


 ここからアイアンゴーレムが出るという話だ。

 どの程度の硬度か分からない。

 3人娘にいきなり相手をさせて、怪我でもすれば目も当てられない失態になる。

 初めは俺1人で相手をすることを告げてアイアンゴーレムを探しながら探索を進める。


 索敵魔法で探っていたのだが目視の方で早く見つけてしまった。

 直線の道で25メートルほど向こうに鈍く光る塊がある。

 相手には気づかれているかは分からない。


 3人娘に下がっているように言ってソフトボール程の大きさのファイアーボールを3つ発現する。

 少しずつ距離を詰めて相手の姿形を確認してみる。


 岩のゴーレムは大きめのイノシシの鼻と牙が無いような見た目だったが、アイアンゴーレムは頭のないゴリラのような姿だ。

 体長3メートル程で足は短く、手がゴツくて長い。


 魔鎧を発現していても攻撃を食らえばダメージを受けることは見た目でわかる。

 問題はこちらの攻撃が通じるのか?


 距離が15メートルほどになり試しに1つ撃ってみる。

 ソフトボールほどの太さの光線がアイアンゴーレムにぶつかり轟音を立てる。

 ファイアーボールが爆散した際に出来た煙が晴れて視界が通るようになり、アイアンゴーレムの姿が見えるようになった。

 貫通は出来なかったようだが攻撃の当たった右肩は深く抉れて腕は何とかぶら下がっている状態だ。


 俺は残りの2発を連続で撃つ。

 2本の光線がアイアンゴーレムまで高速で伸びた後、迷宮内に連続して轟音が響いた。

 アイアンゴーレムのいた場所が視認できるようになると、そこには腹から上をなくしたアイアンゴーレムが横たわっていた。


 横たわるアイアンゴーレムに近づき魔石を回収する。

 アイアンゴーレムの体表は製鉄されたような鉄とは違い、赤味を帯びた鈍い光を反射させるものだった。

 興味があるので千切れた腕2本と体を回収する。


 アイアンゴーレムの硬さは3人娘ではダメージが与えられないかもしれないが試してみたほうがいいだろう。

 俺が隣に控えて手に負えないと分かれば相手を変われば良いだけだ。


 索敵魔法で周囲を探したが近くにはいない。

 なので下層に降りる階段を探しながら索敵して見つければ相手をすることにする。


 しばらく歩き回りアイアンゴーレムの反応を見つける。

 まずはアリアに相手をしてもらう。


 アリアは魔力・中玉、魔力操作・中玉を吸収しているので上手くいけば魔法で倒せるはずだ。


 アリアが自身の周りにソフトボールほどの大きさのファイアーボールを3つ発現する。

 極小であれば8発は同時に発現出来るらしいがこの大きさだと3つが限界らしい。


 すでに相手もこちらに気づいているがまだ少し距離が遠い。

 こちらから僅かに近づいてアリアの必中の位置で撃つように声をかける。

 少しずつ近づいていたアリアが止まりファイアーボールを撃つ。


 高速で放たれたファイアーボールがアイアンゴーレムに当たり轟音を立てる。

 左肩に当たったようでそちら側を後ろに反らしながら前進してくる。


 アリアはもう1発撃つとアイアンゴーレムの体の正面に当たり上半身を仰け反らせた。

 それで前進が止まったところをさらにもう1発撃つ。

 体勢を戻そうとしていたアイアンゴーレムだったが、先程と同じところにファイアーボールが当たり海老反りになり後ろに倒れる。


 しかしアリアの魔法では魔石のある場所を吹き飛ばし活動を停止させる事は出来なかった。


 俺は倒れたアイアンゴーレムに近づき魔石のある胸の中心よりやや左側をファイアーボールで吹き飛ばし魔石を回収した。


 これは厳しいかもしれない。

 アリアの魔法で倒せないとカナンはもちろんリサには到底出来ないだろう。

 そう思いながら3人娘の場所に戻るとアリアは特に落ち込んだ様子もなく、カナンとリサと話をしていた。


「やっぱり魔法では厳しいわね。

 魔力操作・大玉でもあればもっと早くて精度のいい魔法が撃てると思うけど、今の私では足止め程度しか出来ないわ。」


「アタシの剣技でも足止めが限界だろう。

 鉄でも切れれば勝機はあるが今のアタシでは鉄は切れない。」


「テンチュー君で思いっきり叩いたら魔石出てきませんかね?

 次は私が試してみたいです。」


 落ち込んでるかと思えばそうでもないらしい。

 確かに刀では難しいが、リサの大鎚だったらあの硬い体を壊せるかもしれない。

 試してみる価値はあるだろう。


 そしてすぐに次のアイアンゴーレムを見つけたのでリサに任せてみることにした。

 これが上手くいけば俺とアリアでも倒せるし、カナンとリサでも倒せる。

 流石にカナンとアリアの組み合わせは出来ないが野営の時の見張りが楽になる。


 リサがアイアンゴーレムに突っ込む間に牽制としてファイアーボールで意識を俺に向けさせる。

 ヘイト管理は任せとけ。

 思いっきり決めてこい!


 俺のファイアーボールに気を取られリサから体の向きが逸れた瞬間、リサが飛び上がり縦に一回転しながらアイアンゴーレムの顔があるはずの位置にテンチュー君を思いっきり振り下ろす。


 今まで聞いたことのないほどの爆音が鳴り響き、俺は思わず耳を塞いだ。

 渾身の振り下ろしを食らったアイアンゴーレムは首の位置が腹まで凹みその圧力で胸の位置にあるはずの魔石が飛び出ている。


「やりました!流石テンチュー君です!」


 全身を使って喜びを表すリサに3人とも少し引いていた。


 俺はとんでもない化け物を育てているのではないか?と疑心暗鬼になりかけて、その当人を見てみると厳つい大鎚に笑顔で頬ずりしている化け物と感情のない瞳でその光景を見つめる2人の女性の姿が見えた。







書き溜めがなくなりました。すみません。

これからは更新頻度が週1、2度になります。


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