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36話 50階層迷宮踏破1 〜カナン無双〜

 

 翌朝、陽の光を感じて目を覚ます。

 昨夜のララァとの狂宴(ランデブー)は凄まじかった。


 優しく海のような物語を紡ぐマリンちゃんとは違い、お互いが相手を攻め落とす1年戦争のような攻防が繰り広げられた。

 まぉ俺の完敗だったが……。


 軽くなった腰に満足感を覚えて、出発の準備をすませていく。

 多分3人娘たちも起きて準備をしているだろう。

 手早く準備を終えて1階の食堂スペースに足を向ける。


 丁度3人娘たちも降りて来たので皆で朝食を食べる。

 食事をしながら3人娘に昨夜は大人しくしていたのか聞いた。


「昨夜は出かけてないわよ。

 3人でカードをして遊んでいたわ。

 ヤマダさんをリサが誘いに行ったけど出かけていたそうね。

 随分とスッキリして、さぞお楽しみだったのでしょうね。」


「楽しんでいない、と言ったら嘘になるので言わないよ。

 でもカードって何?俺でも出来そう?」


「初めての人でも簡単に覚えられるゲームなんです。

 ヤマダ様とみんなで楽しみたかったので、呼びに行ったのですが出掛けていて残念でした。

 そのゲームは色んな図柄のカード見えないように裏返しにして2枚表に返して同じ図柄だったら自分のカードにできるんです。」


「神経衰弱か。簡単だけど頭使うよね。

 誰が一番強かったの?」


「主よ。

 そのシンケースイジャクとは何だ?」


「神経衰弱ね。

 俺の世界にあったそれと同じゲームの名前だよ。」


「そうだったのか。

 で、この"メモリー"が強かったのはリサだ。

 ぶっちぎりで一番だったな。

 いつもアタシとアリアでビリ争いをしていた。」


「へぇ。以外だね。

 アリアが一番強いと思っていたよ。

 でもリサだったんだ。

 リサはもしかしたら勉強したら凄く頭が良くなるかもしれないね。」


「失礼こと言うのね。

 私もカナンも頭悪くないわよ。

 ただリサが強すぎるのよ。

 ゲームを始めたリサの集中力は凄まじかったのよ。

 本当賭けなくて良かったわ。」


「……お金は賭けるなよ。

 でもそんなに強いんだったら俺も相手してもらいたいな。

 この迷宮が終わって次の宿に行ったらみんなでやろうか。」


「そうですね。

 次の街に着いたらみなさんでやりましょう。」


 そんな話をして朝食を食べ終わり、ミルドの店に向かう。

 開店直後でお客は殆どいなかった。

 店員に声をかけて査定室まで案内してもらい先日の迷宮で討伐したオーク5匹を売却した。


 1体はグリーデンに戻ってから解体してもらい、みんなで食べる用として取っておく。

 オークは傷が殆どない状態だったので最高品質として買い取ってもらうことができた。


 このまま街を出て迷宮に向かうつもりだ。

 街から迷宮まで徒歩で2時間、軽く走れば30分ほどで着く。

 何日かかるかわからないので食事パンでも買おうか、と考えながら歩いてあると周りの様子が少しおかしい。


 冒険者のような格好をした男達が3人娘を見てヘコヘコしている。

 当の3人娘は眼中にないようで、その様に気づいてすらいない。


 昨日冒険者ギルドで相手をした奴らなんだろう。

 面倒くさいことにならなきゃいいけど。

 しかし声をかけてくることはせずそのまま街を出ることができた。


 ここからは軽く走って迷宮を目指す。

 走りながら3人娘達に先ほどのことを聞いた。


「街の中で厳つい男達がヘコヘコしてたけど、あれが昨日の相手だったの?」


「顔は覚えていないな。

 あんな顔の奴もいたような気もするが。」


「あいつらはリサが相手した奴らよ。

 カナンには最初から手が出ないと思ってリサにイタズラ目的で対人訓練を申し込んだのよ。

 でもリサに返り討ちに遭っていい笑い者になっていたわ。」


 リサにイタズラしようだなんてふざけた野郎だ。

 今回は力量に差がありすぎてイタズラはできなかったみたいだが、そういう不届き者もいるのか。

 カナンにイタズラしよう、なんて馬鹿はいないと思うけどアリアとリサは危ないのかもな……。


「アリア、リサはさっきみたいな奴がこれから出てきたら痛めつけて構わない。

 純粋に対人戦闘訓練を挑んでくる奴には手加減しないとダメだけど、邪な考えがある奴は許しちゃダメだ。」


「はい!わかりました!

 そういう不届きものはテンチュー君の鯖にしてやります!」


「……いやテンチュー君は使用禁止ね。

 あれで殴ると痛めつけるんじゃなくて即死するから。

 アリアも手甲、足甲は禁止ね。

 素手でやりなさい。」


「わかったわ。

 こないだヤマダさんがバジリスクにやったみたいに原形をとどめないように蜂の巣にすれば良いのね。

 まだヤマダさんのような連射はできないから少し時間はかかるけれど。」


「ダメだから。

 相手が余程強くない限り、あの連射は使っちゃダメ。

 2人とも強いんだから殴る蹴るで十分だよ。

 でも相手を殺しちゃダメだよ。

 そう言う手加減も訓練になるんだから。」


「……主よ。

 なぜアタシの名前が出ないのだ?

 一応アタシも女なのだが……。」


「カナンにイタズラしようって奴はいないでしょ。

 だって俺より見た目は強そうだし。

 でもカナンもイタズラされそうになったらやって良いよ。

 殺さないことが前提だけどね。」


「……わかった。」


 カナンは不機嫌そうに俺から視線を逸らして走る速度を上げていく。

 なぜカナンの機嫌が悪くなったのか、よくわからない。

 アリアとリサもそれ以降は話すことはせず黙って走っている。

 女の子の気持ちはよくわからないな、なんて考えながら迷宮を目指して俺は足を動かし続けた。



 中層迷宮に到着した。

 入り口の広さは約5メートル。

 低層迷宮の入り口とは2メートルほどしか変わらないはずだが威圧感は何倍にもあるように感じる。


 今回も極力戦闘はしない方向だ。

 相手が強くならない限りはアリアの手甲、足甲はつけない。あれ地味にうるさいんだよ。

 リサも移動に邪魔なテンチュー君は出さないでもらった。


 迷宮内に足を踏み入れると低階層とは違い少し通路が広く若干明るい気がする。

 この迷宮は冒険者が多く来るので多少は整備されているのかもしれな。

 しかし後4日で崩落する予定だ。


 なお迷宮内に人が残っている場合は崩落が遅れるらしい。

 走って最短で戻れば崩落には巻き込まれないようになっているらしい。

 しかしチンタラしていると崩落してしまうので皆、命がけで走るとのこと。

 今まで俺が踏破した迷宮は不人気迷宮で他人がいなかったから知らなかった。


 ダンジョンコアに触れて踏破者登録をすると迷宮内の魔物は弱体化するようだ。

 崩落までに僅かな魔物は迷宮を出ることもあるが、低層階の魔物ばかりなので被害は出ないらしい。


 ダンジョンコアに触れて踏破者登録をした後にダンジョンコアを回収しないと、長い年月をかけてダンジョンコアが元に戻り、またマンジョンマスターを生み出してしまうので必ず回収しなければならない。



 迷宮内に足を踏み入れた俺たちはそのまま一気に下層を目指すべく走り出した。

 5階層までは他の冒険者にも会わず魔物を振り切り走ることができたが6階層でビビリ狼の群れに手こずっている少年3人組を見つけてしまった。


「カナン助けに行ってくれ。

 狼を斬り伏せたらすぐに再出発だから。」


「わかった。」


 カナンは風のような速度で狼の群れに突っ込んでいきそのままこちらに戻って来る。

 素人目には刀をまともに振るったようには見えない。

 しかしカナンが通り過ぎた後、狼たちは次々と体から大量の血を噴出させて崩れ落ちていった。


「お見事。」


「いやいや。主でもこれくらい簡単だろう。

 多分魔法でアタシよりも早く出来る。」


「まぁね。でも凄いよ。

 カッコ良かった。」


「ふふふん。

 そう言ってもらえると嬉しいものだな。」


 そう言い合ってまた走り出す。

 その姿を少年たちは唖然と見送っていた。


 その日は20階層まで降りることができた。

 途中苦戦をしている新米冒険者を何度か助けたが、全てカナンの剣技で仕留めてもらった。


 俺たちの魔法は特殊すぎるのであまり見せない方が良い、とマリちゃんからの指示が出ている。

 俺は他人の魔法を見たことはないので知らなかったのだが、この世界の魔法使い達はでかくて派手な魔法を好むらしい。

 イメージがしやすいからだろうな。


 アリアも言っていたが、俺の高速ファイアーボールのような魔法は見たことがなく、革新的だと驚いていた。


 だが魔力操作・中玉を吸収していないと発現することすら出来ない。

 魔鎧の維持が難しいのだ。

 小玉吸収者でも似たものは発動できるが、高速とは呼べず貫通力もかなり劣る。


 翌日も走りながら踏破を続ける。

 この階層からは中堅冒険者がオークを狩りに来ているので助ける事も少なくなるだろう。


 26階層をマッピングしながら走っていると通路の先から戦闘音が聞こえてきた。

 この先に行かなければ先に進めないのでこっそりと戦闘を観察する。


 基本は他の冒険者が戦闘しているところに断りもなく参戦、通過する事は禁止されている。

 許可を取らなければならないのだ。


 魔物はレッドオーガ3体で冒険者達は6人パーティのようだ。

 既に戦闘が長引いてレッドオーガがバーサクしている。

 あれでは分が悪いかな?

 俺は意を決して冒険者達に大声で話しかける。


「通りがかりの冒険者でーす。

 加勢は必要ですか?

 必要なければ横通らせてもらいまーす。」


「どう見ても苦戦中だろ!

 加勢してくれ!魔石は譲るから!」


「魔石は要らないですけど加勢しますよ!」


 俺はカナンに加勢して来いの合図として頷く。

 満面の笑みで頷き返してきたカナンは刀を2本抜き飛ぶようにレッドオーガに突っ込んでいった。


 それに気づいたレッドオーガが上段から拳を振り下ろす。

 しかしカナンは振り下ろした腕に刀を振り抜きそのまま首も断ち切る。

 残りの2体は冒険者達と戦闘中だがカナンを脅威と感じたのだろう。

 慌ててカナンに向き直り各々が拳を突き出してきた。

 流れるように振り抜かれた腕をすり抜けながら腕を切りつけ返す刀で首を落とした。


 この間わずか5秒ほど。

 6人組の冒険者達はあまりの早業に目を見開き驚いている。

 カナンは強くなったな、なんて呑気に構えていると刀についたレッドオーガの血を振り払いながらカナンが戻ってきた。


「お見事。本当に強くなったね。」


「主に褒められると照れるな。

 未来予測玉でどこから攻撃が来るか分かるので今までよりスムーズに動けるようになったからだ。」


 それであんなに綺麗に躱せてたのか。

 納得した。

 微笑ましくカナンを出迎えていた俺たちに6人組の冒険者達が声をかけて来る。


「加勢してくれてありがとう。

 助かった。

 しかしとんでもない速さと正確さだな。

 さぞ名のある冒険者なのだろう。」


「いや。

 俺たちのことは気にしないでくれ。

 魔石も貰ってくれて構わない。

 それより先を急ぎたいんだ。

 進んでもいいかな?」


「…あ、ああ。

 先に行ってくれ。

 俺たちにはまだこの階層は早すぎたみたいだし。

 上の階に戻るとするよ。

 こんなこと言うのは失礼かもしれないが気をつけて進んでくれ。」


「ありがとう。

 では失礼するよ。」


 そう言って冒険者達と別れてさらに下層を目指して走る。

 まだここまでは大した戦闘をしていない。

 人助けの時だけだ。

 このままどこまで行けるか試してみよう。


 そして魔物を躱しつつ探索を続けて30階層に到達した。

 確か冒険者ギルドの情報では、この階層からゴーレムが出るのか。

 一度戦闘してみて動きが遅かったり、訓練にもならないほど弱ければ無視して進もう。


 それを3人娘に伝えて30階層の探索をしていく。

 索敵魔法を幾度も放ち周囲の気配を探りながら通路を進む。

 すると索敵魔法に反応があった。この角を曲がり18メートル進んだところに1体の反応がある。


 1体ということは冒険者ではないはずだ。

 俺は魔法で直径30センチほどの岩を作り出し、右手に持った。

 角を曲がりゴーレムの姿を確認する。

 そこには体長2メートルほどの岩で形取られた4足歩行の何かが居た。


 相手はこちらに気づいていない。

 このまま無抵抗で倒しても強さも何もわからない。

 わざと足元の石を蹴飛ばし音を立てる。


 こちらに気づいた4足歩行のゴーレムはゆっくりこちらを見て襲いかかってきた。

 …別に足は早くないな。



 わざと攻撃を食らうのも癪なので右手に持った岩で迎撃する。

 こちらに向かって走ってきたゴーレムに岩を投げつける。

 目にも留まらぬ速さでゴーレムの正面を捉え、岩同士の砕ける破壊音が迷宮内に響いた。

 予想よりうるさかったな。


 ゴーレムを見ると岩の当たった正面部分は大きく抉れ足が一本無くなっている。

 しかしダメージがないのか、未だこちらに向かう足を止めようとはしなかった。


「山田様。

 ここは私とテンチュー君に任せてください。」


 そう言って自身の収納から厳つい大鎚を取り出し振り回すリサ。

 身体・中玉を吸収したお陰か、今までのようにフラついたりせずしっかり体の軸を保ち大鎚を巧みに振り回している。


 まぁ無機物だから潰れてもグロはないし、もう弱ってるから怪我もしないだろう。

 俺は了承を告げてリサにとどめを任せることにした。


 了承を告げた途端にゴーレムに近づきゴーレムの体の中心めがけ高速フルスイングでテンチュー君を振るリサ。

 俺の投げた岩との衝突よりも、激しい音を立てて粉々になりながら吹っ飛ぶ元ゴーレム。

 今はただの岩になっちまったな。


 満面の笑顔で戻ってきたリサを俺は褒める。

 褒められたことが嬉しいのか、テンチュー君を思いっきり振れたことが楽しかったのかは分からない。


 しかしゴーレム恐るるに足らず、だな。

 魔石を回収して、皆とこれからの事を話す。


「ゴーレムも大した事なかったけど、みんなも一回ずつ戦っておく?

 そうすれば1人の時襲われても対処できると思うけど。」


「そうね。1人1体は倒して見ましょうか?

 いい経験にもなるし。」


「ゴーレムだけではなくて、これから先新しい魔物が出た場合は1人1体は相手にしたほうがいいだろう。

 その方が今は時間がかかっても今後の迷宮で役に立つはずだ。」


 カナンの言う通りだな。

 でもこいつの場合ただ自分が戦いたいだけ、ってのもあると思うけど。

 でもカナンは刀でどうやって岩と戦うんだ?

 まさか斬らねーよな?


 その事を黙ったまま次のゴーレムを探す。

 流石にアリアは素手では危険なので手甲、足甲を装備させた。

 すぐにもう一体見つけたのでアリアに相手をさせる。


 離れた距離から高速極小ファイアーボールで撃ち抜いていくが、ダメージがないので気にせずこちらに走ってくる。

 あと5メートルほどに近づいた瞬間アリアがゴーレムの左側に飛び込み左胸を手甲で殴りつけた。

 トドメにはならなかったが、大きく横に吹っ飛んだゴーレムにテニスボールほどの大きさの高速ファイアーボールを魔石の位置に放った。


 全く危なげなく勝利したアリアだが顔には不満が表れていた。


「やっぱり今の装備と身体・小玉だとこれが限界ね。

 このゴーレムは倒せなくないけど今の私と相性が良くないわ。

 身体・中玉か魔力・大玉がないとこの先厳しいかしら。」


「そうだね。アリアは魔力を上げてきたからゴーレムは厳しいかもね。

 正面から走られたら魔石は狙いづらいし。」


「もし倒さなければならないのなら本気を出せば瞬殺できるけど魔力を大幅に使っちゃうしね。

 ゴーレムはリサに任せるわ。

 相性かなりいいでしょ。」


「はい。私とテンチュー君の敵ではないですね。

 あの程度であれば20体同時に相手できると思います

 。」


「待て、次はアタシだ。

 実はどうやって倒すか考えていたのだが、良いアイデアを思いついた。

 楽しみにしていてくれ。」


 そう言って早く次に行こうとするカナン。

 俺は若干嫌な予感を感じながらゴーレムを探すために索敵魔法を放っていく。


 程なく1体のゴーレムが索敵に引っかかった。

 まずはこちらに意識を向けさせる。

 すぐにこちらに気づいて走ってくるゴーレム。


 カナンは無手でゴーレムに走っていく。

 そのままチキンレースのように加速していくカナン。

 しかし相手はゴーレム。

 痛みも恐怖もないただの岩だ。


 あと少しでぶつかる、というところでカナンが転移魔法を使い消える。

 突然獲物がいなくなったゴーレムはこちらに向かって来ず、急ブレーキで止まった。


 その背中の上に転移したカナンが出てきた。

 そして上から魔鎧で固めた拳を力一杯叩きつける。

 感知できない上からの攻撃で地面にめり込むゴーレム。

 そのままカナンに魔石を抜かれ、4足歩行の姿を保っていた岩は崩れていった。


 やっぱりカナンは戦闘センスの塊だな。

 武器が使えない状況でゴーレム瞬殺だ。


 さっきのチキンレースとか転移するまで、そのまま突っ込むのかと思ってたもん。

 でも考えたら岩に向かって走って行って突っ込んだら大怪我するよな。


「すごいです!カナンさん!

 瞬殺だったじゃないですか。

 私カナンさんがそのまま突っ込むのかと思ってドキドキしちゃいましたよ。」


「いや。アタシでも魔鎧無しではゴーレムと正面衝突したら、ただでは済まないぞ。

 良くて骨折、普通に内臓破裂くらいはするだろう。

 でも作戦がうまくって良かったよ。」


「ではカナンさんもゴーレムを倒さなければならないときは参加しますか?

 今ところ参加はヤマダ様と私とテンチュー君だけです。」


「私は遠慮しよう。

 間違って刀を使ってしまい、刃こぼれなんかしたくないし。

 ゴーレムは主とリサとテンチューで討伐してくれ。」


「じゃあリサがメインで俺が援護するよ。

 でもわざわざ討伐はしないよ。

 基本は今まで通り最速で下層を目指す方針で。」


 そんな会話をして30階層の探索を続ける。

 ゴーレムの数も少なく戦闘をせずに31階層に降りる階段を見つけた。


 33階層までは戦闘する必要もなくスムーズに進めたが34階層から迷宮内部が突然広くなり、落とし穴の罠がちらほら見受けられるようになった。


 これからはペースが落ちるのは仕方がない。

 注意して進むしかないのだろう。

 俺たちはペースを落として、罠や魔物の気配を探りながら進んでいく。


「ねぇそろそろ休憩しない?

 今34階層でしょ。

 4日で踏破するという事は初日に20階層、2日目は35階層、3日目は45階層、4日目50階層踏破でいいんじゃないの?」


「そうだね。

 あと1階層降りたら野営にしよう。

 それにしてもこの階層に降りてから迷宮内が急に広くなった気がする。

 通路も広いし、下に降りる階段までの距離も長くなってるんだろうな。」


「ヤマダ様4日で終わるのでしょうか?

 このまま下層に降りて迷宮内が広がり続けたら時間が足りない気がします。」


「あくまで目標だからね。

 別に4日に拘ってないよ。

 でも40階層を超えたら魔物除けの魔道具が効かなくなるらしいから全員同時に休む事は出来なくなるね。

 休む順番でも決めておこうか。」


 そんな会話を交わしながらその日は35階層まで進みそのまま野営をした。

 みんな40階層からはしっかり休めない事が分かっているのか、早々とロープに包まり体力を回復させるために眠りについていった。







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