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34話 油断大敵迷宮踏破

 

 昨夜は3人娘達と初めて野営をした。

 俺が生活玉で[サラマンダー][ウンディーネ][ノーム]を呼んで準備をしていると3人娘が尊敬の眼差しでその様子を眺めていた。


 カナンは生活・大玉が余っていると知り、吸収したいと言ってきた。

 しかし明日から迷宮踏破に挑むため、すぐには吸収出来ないと告げて、後日落ち着いた時に吸収させる約束をした。


 夜間は魔物除けの魔道具のお陰か一度も魔物が襲って来なかったため、夜明けまで一度も目を覚まさずに寝ることができた。


 3人娘も体調は万全のようだ。

 アリアに厳つい手甲、足甲を渡して装備を促す。

 俺の予想では20階まで素手でいけると思うのだが油断は禁物だ。


 1つ間違えれば死ぬことだってある。

 気をつけすぎて体が動かなくなるのも良くないが油断して怪我をするよりはマシだろう。


「では準備できたらいよいよ迷宮踏破に挑んでもらう。俺は手を出さないし、手伝わない。

 3人で協力してどんどん踏破を進めていってくれ。」


 神妙に頷いてカナンから迷宮に入っていく。

 入り口の横幅は3メートルほどしかないので並ぶと入りづらい。

 奥に行けば広くなるので武器も振るえるし、動きもしやすくなる。

 カナン、リサ、アリア、俺の順番で並んで進む。


 低階層は動物に毛の生えたような魔物しかいないので俺は緊張もないが、3人娘は初めての迷宮なのでおっかなびっくり進んでいく。


 一応話してはあるんだけどな。

 でも俺も最初はビビってた。ゴブリンと一緒にな。

 なんてことを考えながら後ろからついて行く、


 10分ほど迷路のように迷いながら進んで行くと、初めての魔物と遭遇する。

 ビビリ兎だ。

 カナンの刀ひと撫でで声もなく討伐されるビビリ兎。

 すぐにリサが解体ナイフを取り出して魔石のみを回収した。ビビリ兎は弱すぎるな。


 その後も同じ作業の連続だった。

 アリアは何もしていないので完全に手持ちぶたさだ。

 指を組んだ腕にトントンと当てて暇をアピールしている。俺も暇だ。


 2階に降りるとアリア、カナン、リサ、俺の順番で並んで歩く。

 俺は知っている。

 多分この階もビビリ兎だ。しかも数が増えるだけ。


 アリアは俺直伝の極小高速ファイアーボールで目に入るビビリ兎達を殲滅していく。

 どんなに弱く調整してもオーバーキルになり、ひどい時は2羽貫通とかしている。

 今回の魔石回収はカナンが行う。

 リサから受け取った解体ナイフでどんどん魔石を回収していく。


 3階に降りるとリサ、アリア、カナン、俺の順番で進んでいく。

 俺は知っている。

 多分この階もビビリ兎だ。しかも数が増えるだけ。

 あれ?全く同じ事をさっきも考えていたような気がする……。気のせいかな?


 通路にピョンピョン集まるビビリ兎をリサの厳つすぎる大鎚(テンチュー君)でひと撫ですると凄惨な光景に早変わりする。

 今回の魔石回収はアリアだがすごく嫌そうだ。

 だって原型とどめた兎がいないもん。


 俺はリサに20階まで大鎚禁止を言い渡した。

 流石にアリアが気の毒だ。

 それ以降順調に魔物を討伐し続けてどんどん攻略を進めていく。


 やはり俺が踏破した時の20階層までNO戦闘でひたすらダッシュは例外なのだろう。

 1つの階層を下るのに30分から2時間程度かかっている。


 3日で踏破するので1日10階層なのだが最終日がきつくなるはずだ。今日だけで15階層は進んでおきたい。


 皆に一度魔物の相手をやめてもらい、そのままスルーでどんどん進む提案をすると、とても嬉しそうな顔をされた。

 うん。弱すぎて意味なかったよね。もうやめるよ。


 そのままどんどん走ってもらい、どうしても邪魔な時は皆で一気に殲滅させた。

 そして15階層に到達し初めての迷宮踏破の1日を終えた。


 2日目はわずかに魔物も強くなったが3人娘の敵ではなく次々と討伐していく。

 25階層で初めてのカナンが2刀流を使う魔物が出てきた。オーガだ。


 俺は以前の迷宮踏破3連覇の時にオーガ、ハイオーガと闘ったが特に印象には残っていない。

 こいつらは力が強く知能もあるがスピードが速くない。極小高速ファイアーボールで瞬殺だった。


 カナンが2刀流を出したのは攻撃を受けて片手で押し切れず2刀流で対応した為だ。

 決して苦戦したわけではない。


 だって隣のアリアはあくびしてるし、リサは床に絵を描いてる。

 緊張感があったのは最初だけで、今は完全にリラックスして早く地上に戻りたいとしか考えていない。


 そんなことを考えている間にカナンはオーガを斬り伏せてこちらに戻ってきた。


「主よ。手応えがなさすぎる。

 いつになったら強敵(とも)は出てくるのだ?」


 知らねーよ。つーか俺が強敵(とも)のこと教えたのか?……記憶にないな。

 まぁダンジョンマスターはそこそこ強いだろう。


「ダンジョンマスターなら強敵(とも)になり得るかもね。

 楽しみに待っておきなよ。」


「今日はもう休憩なしでこのまま踏破しちゃわない?

 強い敵もいないし、早く外に出たいわ。」


「そうですね。この階層に来てもこのテンチュー君を受け止める相手は出て来ませんからね。」


 リサのテンチュー君は簡単に受け止められないからね。トゲトゲしてるし。

 普通の敵は掠っても大ダメージだよ。


 アリアの提案にカナンも賛成してそのまま踏破を目指す。

 26、27階層はオーガだったのでリサのテンチュー君の餌食になってもらった。


 28階層はレッドオーガだった。

 早く倒さないとバーサクして強くなるらしいが強くなる前に倒せるし、バーサクしても何ら問題なく討伐できた。


 強敵(とも)のいない迷宮にみんなのテンションが下がりまくっている。

 29階層に下りて、少し強い敵は出ないかと期待していたらなんとオークが現れた。


 この状況にみんなは狂喜乱舞。

 オークの美味さはずば抜けているし、売値も高い。

 テンチュー君だと売値が下がるのでアリアの高速極小ファイアーボールで倒していった。


 この階層だけ6匹のオークを回収し、ホクホク顔でダンジョンマスターの部屋に向かう。

 ゴツい鉄扉をカナンが開ける。

 ギギギと軋む音を立てて鉄扉があいていく。


 俺は、何が出るかな?何が出るかな?と唱えて最後に部屋の中に入る。


 広い部屋の真ん中に体長15メートルほどの蛇がとぐろを巻いて待機しており、こちらにゆっくりと頭を向けようとしていた。


(バジリスクです!

 目を合わせないでください!石化されます!)


 俺はその言葉で反射的に目を逸らしたが3人娘はバジリスクを見つめたまま動かない。いや動けない。


(早く倒さないといけません!

 石化が進みすぎると戻らなくなります!)


 俺は索敵魔法でバジリスクを見つけて極小高速ファイアーボールをバジリスクに向かって連射する。


 クソ!完全に油断していた。俺のせいだ。

 初めての迷宮なのにしっかり注意しなかった俺のせいだ。絶対に助けてやる!速攻でぶっ殺してやる!


 一瞬で数え切れないほど極小の光線を浴び続けたバジリスクは姿形がなくなり、バジリスクがいた場所には抉れた地面と散らばる肉片、わずかに残った白い骨と輝く魔石のみが残されていた。


 俺は急いで3人に駆け寄る。

 硬直していた体は僅かにほぐれて少し動くことができそうだ。


(無事に間に合いましたね。これなら数分で元どおり動けるはずです。

 しかし30階層にバジリスクとは驚きました。

 バジリスクが30階層のダンジョンマスターである情報、知識はありませんでした。)


「はぁぁーー。」


 俺はマリちゃんの話を聞いて安堵のため息を漏らす。

 本当に間に合ってよかった。

 もし石化が解ける(すべ)がなければ一生悔やんでいただろう。

 多分迷宮踏破も諦めて引きこもりになっていたはずだ。


「主よ。一体どうしたのだ?

 手は出さない約束だったのに瞬殺してしまったではないか。

 体は動かなくなったがすぐに動けるようになったし。」


「もしかしてあの蛇やばいヤツだったんじゃないの?でもそんなに強そうには見えなかったけど。」


「せっかくのテンチュー君出番が……。」


 などと3人娘は呑気なことを言っていたので事情を説明する。


「……あれはバジリスクだよ。

 お前ら石化されかけてたんだ。

 俺が瞬殺しなければ一生石化が解けないで、大変なことになっていたんだぞ。……だから俺が討伐した。

 間違った判断だとは思っていない。」


 その言葉を聞いた3人娘は驚き、俺に謝罪して来た。


「本当にごめんなさい。

 初めての迷宮なのに油断してヤマダさんに心配をかけたわ。

 もうこんなミスはしないからこれからも私たちを鍛えて下さい。お願いします。」


「主よ。アタシが注意していなかったからだ。

 もう二度とこのような醜態は晒さない。

 本当に申し訳ない。」


「山田様、助けてくれてありがとうございます。

 このような怠慢は二度としません。

 お願いします。許してください。」


「うん。3人とも油断してたよね。

 でも俺も油断してたんだよ。

 今回のミスは俺のせいでもあるし、3人のせいでもある。だから許すし、許してほしい。


 迷宮ではちょっとした油断やミスで命を落とすんだ。

 今回は低階層だけど中階層からは罠も出てくるし。

 これからはもっと気を引き締めて迷宮を踏破していこう。」


 そう言ってダンジョンマスターのコアを回収し、ダンジョンコアの部屋に入る。


 俺はもう何度も見ていて感慨深さもないが相変わらず綺麗だな。

 さて誰が触るのか?


「主よ。アタシが触っていいか?」


「うん。俺はいいけど、2人にも聞いた方がいいんじゃない?」


「私は今度でいいわよ。今回は譲ってあげる。」


「私も今回はいいです。活躍してないですし。」


「ありがとう。2人とも。では触るぞ。」


 そしてカナンはゆっくりとダンジョンコアに両手を添えてる。

 両手が張り付きしばらくすると自然と手は離れて奥の壁に鉄扉が現れた。

 やっとお楽しみの踏破者報酬だ。



 奥の部屋もいつもと同じで壁に作り付けの棚。

 そこに並べられた能力玉と、魔道具。

 恩恵付きの服に恩恵付きの武器。

 そして床には木箱が2つ。

 変わるのは能力玉の大きさくらいで大迷宮でも見た目同じだからな。


 俺は能力玉を眺める。

 今回の報酬は中玉2つに小玉4つだ。

 未来予測・中玉、身体・中玉

 未来予測・小玉2、身体・小玉、生活・小玉


 すっげえ偏ってんな。

 つーかこの迷宮大当たりなんじゃないの?

 さすがダンジョンマスターがバジリスクなだけあるわ。


 マリちゃんからの未来予測玉の効果をきく。

 即死、重症を負うような負傷を避けるための能力らしい。


 小玉は自身の目線での負傷を負うシーンが脳内にイメージされる。

 小玉では連続の発動はしない。

 つまり即死性の連続攻撃には初撃にのみ発動するのだろう。


 中玉は負傷を負うシーンが自身の目線と自身を中心に置いた第三者視点で脳内にイメージされる。

 中玉だと連続発動して常に回避イメージが頭に浮かんでくる。


 小玉だと後ろからの攻撃や自分の目線外で襲ってくる罠には対応が難しくなるのだろう。


 中玉になると自分目線と第三者視点で周囲からどのような攻撃が来るかわかるため、まず攻撃を食らうことはなくなる。連続攻撃も回避可能だ。


 大玉は回避前、回避後のカウンター攻撃のイメージが浮かぶらしい。

 そのイメージ通りに攻撃すれば相手が未来予測を持っていない限り有効なダメージを与えることが出来る。


 極大玉はわからない。

 情報閲覧に規制がかかっているとのことだ。


 大玉凄くないか?

 これを手に入れたら無敵じゃない?と思い聞いてみると。

 未来予測・大玉のみ手に入れた人と身体・大玉のみを手に入れた人だと身体玉を手に入れた人が圧勝するらしい。


 予測はできても対応できる能力がないと意味がないとの事。

 だが能力が高い人が手に入れると本当に無敵になることが可能な玉なことは事実。

 現在この世界に未来予測・大玉の吸収者はいないと教えてくれた。


 それを説明した上で、みんなに何を吸収したいか聞いたところ。

 リサはテンチュー君のために身体・中玉を希望。

 俺とアリア、カナンは未来予測を希望した。


 俺は別に最強になりたいわけではない。

 帰還が目標だ。

 仲間と一緒に強くなり、世界樹の迷宮を踏破する事が俺の望んでいる事なんだ。


 だから3人でジャンケンをする。

 この世界にもジャンケンがあったので助かった。

 結果は1回で決まった。カナンが勝ち、俺とアリアは涙を飲んだ。


 こうして誰も揉めることなく分配が終わった。

 これからはいよいよスペシャル・タイム。

 略してST。嘘です。

 能力玉の吸収タイムです。

 今回のカナンはどんな声で鳴いてくれるのか楽しみです。



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