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21話 奴隷商人のバルア

長くなってしまいました。

ごめんなさい。


誤字脱字を修正しました。

読みにくくなっていました。すみません。

 

 ミルドと一緒に奴隷商の店内に入る。

 先触れが出ているのでこのまま目的の人物に会えそうだ。

 そういえばこの店の名前とオーナーの名前を知らない。今のうちにミルドに聞いておこう。


「ミルドさん、この店の名前とオーナーの名前、人となりを教えて下さい。」


「この店の名前は奴隷商バルアでオーナーの名前もバルアです。

 オーナーは女性です。

 まぁ人となりは会えば分かりますよ。」


 そうして1階の奥の部屋に通される。

 扉が空いてミルドが入る。


「失礼するよ。」


「よー!ミルド!元気だったか?

 相変わらずデカイ息子ぶら下げてるなw」


 と随分と馴れ馴れしい会話が聞こえてきた。

 俺も部屋の中に入り頭を下げて挨拶をする。


「失礼します。今日はよろしくお願いします。」


「おー!その兄ちゃんがミルドの連れてきた客か?

 随分と普通だな。

 …ん?お前変装してんじゃねーか。

 中身は黒髪か、珍しいな。

 ん?最近この街で噂になってるやつも黒髪だったよな。

 ふーん。成る程なぁ。

 面白いじゃねーか。」


 え?偽装バレてるし、なんか勝手に納得してるけど何で?怖いんですけど…。


「やぁ久しぶり。バルア。

 こちらの方はヤマダ氏だ。

 現在、訳があり私の邸宅で預かっているが本来は世界を旅している冒険家だ。

 こちらのヤマダ氏が奴隷について詳しく聞きたいそうだ。お前の主観で構わない。

 教えてあげてくれ。」


「初めまして。ヤマダです。一応35歳です。

 奴隷の購入を考えているのですが全くわからないので色々と教えて下さい。

 よろしくお願いします。」


 俺は目の前の女性に頭を下げた。


「ヤマダね。よろしく。私はバルア。

 年齢は秘密だよ。

 あんたが今世間を騒がせている黒髪かどうかは興味がある、けどその前に商売だ!

 あんたは奴隷を欲しがっている。

 どんな奴隷が欲しいんだ?

 奴隷にもね、いろんな奴がいるんだよ。

 すっげぇ強いやつとか、すっげぇ可愛いやつとか、すっげぇ面白いやつとかさ。

 で普通のやつもいっぱいいる。

 あんたは奴隷に何を求める?体か?」


 この人、地声がでけぇよ。

 見た目は綺麗なのに、声のでかさと口調で妙な威圧感がある。

 無理難題を大声で押し通す、おっさん営業マンに通じるものがあるな。

 しかも下ネタ織り交ぜてくるし。

 でも素直にここは希望を言ってみる。


「強くて乱暴者、横着者はいりません。

 素直でこちらの意図をある程度理解してくれる人を希望しています。」


 ミルドが慌てて聞いてきた。


「ヤマダさん強くなくて良いのですか?」


「ええ。強さは求めていません。

 素直で理解力のある人を探しています。」


「ふーん。あんた奴隷を育てる気だね。

 大体、迷宮とかに行って冒険するような奴が求めるのは強いやつだ。

 即戦力になるし、育てる金もかからない。

 すぐに自分で稼いで、奴隷解放し、また奴隷になる。野蛮な冒険者に多いんだよね。

 あんたは迷宮にも行くが、それよりもまず強くしてから行くつもりだな。

 安全マージンをしっかり準備して。

 でも安い奴隷だとお金が貯まったら自身を買い戻して解放を望むぞ。

 高い方がいい。なぜなら簡単に買い戻しができないからだ。

 そうなると必然的に長く一緒にいる事になり情が出てくる。うん。高い奴だな。」


 大声でまくし立ててるが正論なのだろう。

 でも買い戻しが出来たのか。知らなかった。

 他にも何かルールがあるんじゃないか?


「買い戻しが出来るなんて知りませんでした。

 奴隷購入にあたり他に何かルールがあるのですか?」


「あぁ。そこからかい。ったく。

 まず奴隷の購入者は手首の内側に小さい魔道具を埋め込む。

 この魔道具に所有する奴隷を登録する。

 この魔道具を故意に壊したり取ったりしたらもう2度と奴隷購入出来ないし、所有する奴隷も解放しなくちゃならない。

 まぁ主人と奴隷を登録する魔道具だよ。」


 バルアは気怠そうに続ける。


「奴隷には給金を払わなければならない。

 奴隷には住居、食事、衣服を与えなければならない。奴隷を故意に傷つけてはならない。

 これは奴隷を守る契約で、このどれかを守らないと2度と奴隷を購入はできない。

 あまりにひどい破り方をすると財産すべてを取られて投獄される 。

 でも例外もある。戦争奴隷だ。

 これは対戦国の戦闘員であれば通用しない。

 あとは獣人かな。この街には殆どいないけどね。

 あと街中だと靴を履かせなくても良い。

 流石に街の外では靴で履かせるが。

 こんなところかな。」


「故意に傷をつけてはならない。

 なんてどうやってわかるのですか?」


「心眼だよ。

 奴隷が重症を負ったり、死んだ場合は心眼持ちが調査しにくる。」


 俺が思っていたより奴隷制度はしっかりしているようだ。

 奴隷をただの道具のように扱えないようになっている。

 でもこれ主人の負担が多くないか?


「アンタは今奴隷を雇う事は負担が多いと思ったね。そうだよ。負担は多い。

 衣食住の保証に給金だ。

 でもそれ以外は保証しなくていい。

 例えば奴隷を購入して、強くするために能力玉を吸収させる。

 この能力玉の金は奴隷に請求するんだ。

 取り出すことが出来ないから奴隷自身の財産になる。

 それと迷宮に潜る時の装備も貸し出せば良いが奴隷本人が良い装備を望んで買い与えた場合も請求できる。

 そして給金として払った金を返してもらう。

 奴隷の購入資金と奴隷期間にかかった費用を給金で返済してもらい、返済が終わったら奴隷解放だ。

 その間にしっかりした信頼関係を築いていれば奴隷解放後もそのまま"雇用"も出来る。

 これがこの国の奴隷制度さ。

 因みに衣食住を保証しているから一般雇用よりも給金は安い。

 どういう用途で購入するのか奴隷に伝えないといけないしね。

 奴隷はメイド程度の労働を考えているのに迷宮に連れていかれたら死んじまう。

 購入を考えている奴隷とよく話し合ってお互いが納得してから購入するんだよ。

 奴隷にも拒否権はあるからね。」


 なかなか良く出来てるだろう。と、ドヤ顔で俺をみるバルア。


 うん。良く出来ている制度だ。

 どこかに穴があるかもしれないが。

 でも曖昧な制度ではないので、これなら憂いなく奴隷を購入できるだろう。


「よく分かりました。

 では実際に奴隷を見せてもらえないでしょうか?」


  「アンタの希望は素直で理解力のある奴だったね。

 今いるのだと…3人かな?

 連れてくるからちょっと待ってな。」


 そう言ってバルアは部屋を出て行った。


「態度が悪くてすみません。

 言葉は悪いんですが仕事はできる奴です。

 奴隷の管理もしっかりしてる。

 昔何度か言葉遣いを直せ、と言ったのですがね。

 直そうとすると気持ち悪いんですよ。諦めました。」


 気持ち悪いって相当酷いな。

 でもバルアと話していて悪い気はしない。

 どちらかと言うとミラの方が悪い。

 あいつには悪意がある。


 強い奴隷を指定しなかったのは能力玉があるからだ。

 今の俺なら低層迷宮で能力玉を取って来れる。

 強さは能力玉を吸収した後のイメージだ。

 明確にイメージして訓練する。

 これで誰でも強くなれる。

 俺だって能力玉とマリちゃんの助言で強くなれた。

 だから素直でこちらの言っていることを理解してくれる人材を求めている。

 半年や1年で世界樹に行けるとは思っていない。

 短くないその間にしっかり鍛えて強くなってくれればいいんだ。


 少ししてバルアが入室してきた。

 随分と機嫌が良さそうな顔をしている。


「おまたせ。連れてきたよ。3人だ。

 ヤマダの要望通り、素直で理解力のある奴隷だ。

 1人ずつ紹介するのは面倒だ、3人まとめて見てくれ。

 入っていーぞ。」


 扉が開いて3人入ってくる。

 …って3人とも若い女の子じゃないか。

 みな清潔な襟付きの白いシャツに茶色のズボン暴いている。血色も良く、健康そうだ。


「左からアリア、リサ、カナンだ。

 全員人族の女性。健康体。年齢は18、15、23だ。

 少し年齢は高めだが、どうだ。可愛いだろう?」


 …可愛いのは認める。

 でも男はいないのか?


「考えている事を当ててやるよ。

 男はいないのか?だろう。

 男の奴隷もいるがヤマダには勧められない。

 男の奴隷は戦闘特化で融通の利かない奴か、その他で意気地のない奴どちらかなんだよ。

 お前の求めているような奴は奴隷になったとしてもすぐに解放だ。

 大体理解力がある奴は頭のいい奴が多いからな。」


 バルアの言うことは正しいのだろうな。

 この世界はやはり男性が活躍しやすい世界なのだろうか?

 つまり女性の優良物件は選びやすいのかもな。


「では説明するぞ。

 まずアリアだが最近この商店にきた。

 自身で身売りする形だ。金の使い道は知らん。

 だが頭はいい。

 一度で大体ことは覚える。

 身売りの金額がかなり高かったので今日までこの商店にいる。

 お前の要望通りの性格だ。



 次はリサだ。

 元々でかい屋敷のメイドをしていたらしいがそこで問題を起こして借金奴隷になった。

 借金が高すぎるから多分その屋敷で嵌められたんだろうが何も言わない。

 こいつも金額が高い。



 最後はカナンだ。

 元傭兵だ。

 そこそこ強いらしいが能力玉は取得していない。

 紛争地帯で問題を起こして奴隷落ちした。

 起こした問題のせいか今まで売れ残っている。

 頭もいいし、理解力もある。



 今はこの3人がウチの商店からお前に売れる奴だ。

 お前が変態でもっと若いのが良いってなら話は別だがな。」


 俺は変態じゃねーし、若い子もいらない。

 ロリコンじゃねーし。

 胸も膨らんでない幼女と戯れる趣味は俺にはない。


 改めて3人をよく見る。

 3人ともマジで可愛いな。

 日本だったら1発スカウトだ。

 アリアは金髪を肩甲骨程まで伸ばしたストレートヘアーで碧眼だ。人形のような顔立ちをしている。


 リサは赤髪の癖っ毛をボブにしている。目が大きい愛嬌のある顔だ。

 身長も低くて可愛らしい。


 カナンは明るい茶髪で長い髪をポニーテールにしている。

 綺麗な顔立ちだが眼光は鋭い。

 やはり元傭兵というだけありカナンの体は引き締まっているように見える。


「1人ずつと話をさせていただいても良いですか?

 自分のしてほしいこと、望むこと、目標としている事を話してから購入を考えますので。」


「いいよ。そこの奥の部屋を使いな。

 私はミルドと話してるから満足するまで可愛い女の子達と話しなよ。」


 俺は奥の部屋に行き1人を呼んでもらう。

 部屋の中は6畳ほどで壁には窓と本棚があり、机一つで向かい合うように2脚の椅子が置かれていた。


 面接官のように奥の椅子に座ったところで扉が開いた。

 はじめに部屋に入ってきたのは赤髪のリサだった。

 リサは軽くお辞儀をして向かいの椅子に座る。

 可愛い顔には緊張しているのが表れている。

 まずは緊張を取るように優しく話しかけよう。


「はじめまして。ヤマダです。

 緊張しているかもしれないけどリラックスしてね。

 落ち着いたら名前と年齢と生まれた街を教えてくれるかな?」


 簡単な質問をして答えさせれば口がわずかにでも滑らかになり、その後の会話に繋げやすい。

 声を出させることによって緊張をほぐしていく。


「…リサと申します。…15歳です。

 生まれた村はノークス村です。」


「大きな屋敷で働いていたようだけどそのノークス村に大きな屋敷があったの?」


「いえ。ノークス村は寒村で大きな屋敷はありません。

 10歳の時にディートラント領の貴族様に屋敷で働くよう言われて働きはじめました。

 14歳で奴隷になる前まで同じ屋敷でずっと働いておりました。」


「その屋敷では主にどんな仕事をしていたの?」


「掃除、洗濯、買い出しなど一般メイドの仕事です。

 お茶出し、お召しつけなどの側仕えは上流メイドの仕事でしたので。」


「へぇ。そうなんだ。食事は作れないの?」


「食事は作れます。とても好きな仕事でした。

 一般メイド達の食べる料理は自分たちで作っていたので大丈夫です。」


「うん。教えてくれてありがとう。

 ではここから俺の話をするね。

 俺が奴隷を求めるのは迷宮に行くためなんだよ。


 でも今すぐ装備を整えて、すぐ出発。

 なんて事はしない。しっかり準備をする。

 迷宮に挑むメンバーには能力玉を習得してもらう。

 そして訓練をしっかり積んで迷宮に挑めるよう実力をつけてもらう。

 リサは迷宮に行ったことはある?訓練を受けた事は?」


「いいえ。

 迷宮に行ったことも戦闘訓練を受けたことも御座いません。

 多分私ではついて行けないと思います。」


「うん。そう思うよね。

 でも俺も1月前まで喧嘩も殆どしたことのない普通のおじさんだったんだよ。

 でも能力玉を手に入れて訓練したら、今では30階層の迷宮なら2日で単身踏破出来るくらい強くなったんだ。

 リサがもし俺の奴隷になってくれたのなら1ヶ月で迷宮単身踏破しろ!何て言わないよ。

 もっとじっくり訓練して強くなって貰いたい。

 これは夢じゃなくて目標なんだけど、俺の奴隷になってくれた人にはこの世界の人々が羨むような富と、名声、栄光を手にしてから奴隷解放するよ。


 1年では無理だけど何年後かには世界中の人からリサは尊敬される人になるはずだ。

 俺の奴隷になって活躍するのは危険じゃない。とは言わない。

 けど絶対に死なせない。

 それだけの力はある。」


「ただ迷宮を踏破しただけで世界中の人が尊敬してくれるのですか?」


「俺の目標はただの迷宮じゃないよ。

 世界樹。

 その根本にある(真理の迷宮)を踏破することが俺の目標なんだ。」


「は?世界樹ってあの空に浮いてる?

 あそこに行くんですか?

 今まで誰も行ったことがないのに…。

 しかも行くだけじゃなくてそこの迷宮踏破も。」


「そう。それが俺の目標だ。

 行ける事はわかってる。

 ただし俺1人の力では行っても踏破はできない。

 だからここに来た。

 リサには夢物語に聞こえるかもしれないけど俺は本気だ。

 リサが前の屋敷で何があったかは分からないし、聞かないけれど、少なくとも悔しい思いをして誰かを見返したい、誰かよりも上に行きたいと少しでも思うなら俺の手を取ってくれ。

 その高みへ間違いなく連れて行く。」


「…少し考えさせて下さい。」


「あぁ。考えてくれ。

 俺も実は今日は持ち合わせがない。

 だから7日後また店に来る。その時に答えを聞かせてくれ。

 ただ何もしないでは何も手に入らないんだ。

 俺の手を取った場合は相応に努力はしてもらうよ。」


 そう言うとリサは椅子から立ち上がり頭を下げて退出して行った。


 ふぅ。これがあと2人か、やっぱり大変だなぁ。と独り言を言うとマリちゃんから(頑張ってください)と声援をいただいた。

 頑張ります!



 すぐに扉が開きカナンが入って来た。

 茶髪をポニーテールにしてその房が歩みに合わせてゆれている。

 顔に緊張はないので気軽に話しかける。


「はじめまして、山田です。

 カナンだったよね。どうぞ座って。

 一応自己紹介してもらえるかな?

 簡単な事だけで構わないから。」


「カナン…です。23歳。元傭兵、戦屋。

 敬語うまくは使えないんだ。

 生まれは帝国の田舎町で多分もうない。

 特技は剣技と狙撃用魔導銃。

 奴隷になった原因は自軍副長の貴族を刺し殺してしまったから、です。」


 いきなり気になるワード満載だな。

 まず戦屋。傭兵がやって行けるほど仕事があるのか…。

 次は魔導銃。しかも狙撃用と来た。そんなんあんのかよ。でも魔法が打てるんだから有って当然だよな。

 自軍副長の貴族を刺し殺すか?何故そうなったのか理由が知りたいな。


「教えてくれてありがとう。

 訳があってこの世界の情勢には詳しくないから教えて欲しいんだけど、戦屋って事はこの世界では何処かの国と国が常に戦争をしているって事なのかな?」


「国と国とは限らず、大領地と大領地など国の中で戦をしている場所は常にあるんだ。

 そういった場所に赴き活躍する事を生業としていた。」


「わかりました。

 次に魔導銃って見た事ないんだけどどういった武器なのかな?」


「魔導銃は魔石を使って遠距離攻撃する魔導兵器のことを言うんだ。

 威力は高くないし、連射も出来ないけどね。

 1発撃つごとに1分程リロードが必要だし。

 代わりに射程が長く50メートル程なら外さない。

 100メートルになると当てるのは困難だ。

 しかし魔力玉を習得していなくても打てるので戦場では貴重な魔法師に代わり多用される。」


「なるほど。魔力が要らないのか。

 それは強力な武器だね。

 魔導銃の台頭により戦は大きく変わったはず。

 戦で怪我をしたり死ぬ事は怖くはないのですか?」


「その恐怖は常にあった。

 だから生き残れているとも思っているし。

 戦で気分が高揚し我を忘れた者は例外なく怪我を負ったり、死んでしまう、と常に自分を戒めていた、です。」


「冷静な分析だね。

 素晴らしいと思うよ。

 では、俺が何故君達のような奴隷の購入を考えているのか話します。」


 おれはリサに話したように迷宮踏破のために奴隷を集め能力玉を吸収させて、俺独自の訓練をする事を告げた。その話を聞いたカナンは


「話は理解した。

 しかし能力玉は高価で貴重品なはずだ。

 強化系の大玉1つを売れば一生遊んで暮らせるし。

 それを使用してまで踏破を続ける事が理解出来ない。

 今までの強化系の大玉を吸収したヤツは高額な給金で国に仕官する事が殆どだ、です。」


 この子、敬語が全然使えないけどは頭がいいな。

 自分が知りたい事を想像ではなく、しっかりと聞き出してくる。是非欲しくなって来た。

 俺は世界樹を、その根本にある迷宮の踏破を目標にしている事を話すとカナンは目を見開き、驚いていた。

 しかし蔑む様子はなく、目の色に僅かな尊敬の眼差しも見えている。良い感触だ。


「もしカナンが俺の奴隷になってくれたのなら、富と、名声、栄光を約束するよ。

 でも努力なしでは得られないので相応の訓練は積んでもらう。

 以上が俺からの話だ。」


「…はい。今すぐには判断出来ないけど。

 もし傭兵としてすぐに働けというのなら即決していましたが話が大き過ぎるし。

 でも強くなることへの願望もある。

 自分の一生に関わる事なので。

 少し考えさせてくれないか?


 ……なぜアタシが貴族を刺し殺した事を聞かないんだ?」


「うーん。カナンが自己利益や自己満足で刺し殺した訳ではない事は今までの話で感じたんだ。

 多分、事故か防衛のためでしょう。

 だから聞かなかった。

 話したければ話してもいいよ。」


「アタシも思い出したい事ではないし…。

 だけど今まで自分を購入したいと言ってきた者は全て一番最初に聞いてきた。

 傭兵ではなく、愛玩メイド用としての購入だったから断ったけど…。」


 愛玩メイド何てあんのかよ。異世界ハンパないな。


「では7日後にまた来るからその時までに考えておいて。

 よろしくお願いします。」


「はい。こっちこそよろしく頼む。」


 そしてカナンは部屋を出て行く。


 残るはアリアか。

 金髪碧眼のお人形さんだ。

 リサもカナンも美人だったが元の世界の価値観からか、1つ抜けて綺麗に感じる。

 まぁ綺麗、可愛いは人それぞれだ。

 俺が求めるのは共に迷宮踏破をしてくれる奴隷たち。

 それ以外は必要ない。


 なんて事を考えているとノックが響き、扉が開けてアリアが入ってきた。

 扉を閉める前にこちらに頭を下げて椅子の横に立つ。

 椅子を勧めると失礼します、と頭を下げてから腰を下ろした。

 …就活生みたいだ。

 前の世界では見慣れた光景だったがこの世界ではかなり礼儀正しいのではないのだろうか?

 高度な教育を受けているのかもしれない。


「はじめまして。山田です。

 緊張はしていないですね。

 まず自己紹介をお願いします。」


「はじめまして。アリアと申します。

 年齢は18歳です。

 リシテリア公国ミューニエル領出身です。

 7歳から16歳まで王都テリアの王立アカデミーに在籍していました。卒業はしておりません。

 自身でこの奴隷商店に身売りをしてここにいます。

 よろしくお願い致します。」


「王立アカデミーかぁ。9年も通っていたんだね。

 そこではどんな事を習っていたの?」


「王立アカデミーは将来国に仕える人材を育てる事を学業理念にしております。

 この国の歴史、文化、経済、礼儀作法など幅広く学びました。

 私は文官志望でしたので、戦闘訓練などは基本的なことしか習っておりません。」


「王立アカデミーは文官志望以外は何があるの?

 騎士志望?」


「王立アカデミーは文官、騎士、薬学、魔道、側仕え、研究の6つです。

 騎士、魔道は能力玉の吸収者が多かったです。

 ユニークの方は少数ですがいらっしゃいました。

 成績上位者はユニークが多かったです。

 研究にも鑑定の能力玉吸収者、少数のユニークがいました。」


「わかりました。教えてくれてありがとう。

 では俺が何故、君達のような奴隷の購入を考えているか話すよ。」


 アリアに前の2人に話したように、能力玉を吸収して、訓練をし、迷宮踏破して行くことを伝えた。

 その際アリアは余計な口出しはせずただ相槌を打ちこちらの話に耳を傾ける。

 最後の目標、世界樹の根元の迷宮踏破の話をした時は目を見開き驚いてはいたが口を挟まず、最後まで話を聞いていた。


「ではヤマダ様は私たち奴隷に能力玉と訓練で力を与えて富、名声、栄光を私達に約束してくださる、と言うことですか?」


「あぁ。今すぐに全てを与える事は出来ないが数年後には世界中の人たちから賞賛と羨望を得られるよ。

 約束する。」


「かしこまりました。少し考えさせて下さい。

 実は自身を身売りしたお金では足りず困っていたのです。

 すぐに必要という訳ではないのですが。

 富が得られるという事であれば願っても無い事です。よろしくお願い致します。」


 そう言ってアリアとの会話を切り上げて2人で部屋を出ると、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたバルアと疲れた表情のミルドがこちらを見つめていた。





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