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12話 チートの片鱗

 

 久しぶりの食事を終えた俺は満たされた腹をさすりつつ、気になっていた事をマリちゃんに聞いた。


「アマルテアの事を少しずつ教えて下さい。

 あんまり詳しく聞くと大事な事を覚えられないから当面街に出て困らない程度の事だけで構わないのですが。」


(はい。わかりました。

 けれどその前に野営の準備をしましょうか。

 夜は活動が活発になる魔物が多いので襲われると危険です。

 まず背嚢から三角錐の形の魔道具を取り出して下さい。)


 俺は背嚢型収納袋に手を入れ三角錐の魔道具を思い浮かべる。すると手の中に硬いものが当たる感触がありそれを引き抜いた。

 手に持っている魔道具はとても不思議な構造だった。三角錐の金属の枠の中に魔石が浮いている。どういう構造になっているのだろう。


(それは結界の魔道具です。それを使えば野営の際、魔物に襲われる事はありません。

 結界の力を保つために中の魔石を使います。

 中の魔石は消耗品で回数を重ねるごとに劣化していき、最後は砕けてしまいます。

 その場合は新しい魔石を入れればまた使うことができます。

 今、中に入っている魔石は質が良く濁りもないのでまだまだ使用可能ですね。

 では魔道具を地面に置いて中の魔石を握って下さい。)


 俺は先程の焚き火から少し離れた大きな岩の上で野営する事に決めていた。見晴らしも良い。なにより上部が平らで寝やすそうだったからだ。

 決してバカだからではない。

 ノームはその岩の周りをトテトテと歩いている。


 魔道具を岩の真ん中に置き三角錐の中の魔石を握る。

 手を離すと魔石が淡く発光しクルクルと回り始めた。

 めちゃくちゃ綺麗だ。こんなに綺麗だと逆に目立つんじゃないの?なんて思っていると。


(これで魔物はその魔道具から半径2メートル以内には近寄れません。その輝き自体が魔物が嫌う灯りなので安心してください。)


 魔石が発する淡い光は何処かで見たことあると思ったらダンジョンコアだ。あれのミニチュアだ。

 魔物が嫌う灯りだからあの部屋にはダンジョンマスターは入ってこれなかったのか。



(ノームの警戒に、認識阻害のローブ、結界の魔道具。こんなに豪華な野営は滅多にお目にかかれないですよ。竜種が来てもへっちゃらです。)


「…今なんて言いました?りゅう?

 もしかしてこの世界にはドラゴンがいるんですか?」


(はい。ドラゴンはいますよ。ただ竜種にも強いものから弱いものまで様々です。

 最弱はワイバーンと言われる飛竜。あと土竜もそうですね。

 最強といわれる竜種になると古竜種の天空竜が筆頭です。その下に古竜4属性の炎王竜、風帝竜、水聖竜、地獄竜がいます。それぞれここ400年ほど姿を現してはいないので存命かはわかりかねますがどの竜も単体で国を滅ぼせるほどの力を持っています。)


 …。ここは変に考えるとフラグが立つな。無心でただの情報として受け入れよう。古竜はやばい。っと。


(先程の質問でこの世界[アマルテア]のことを教えて欲しい。とのことでしたが、どのようなことでしょうか?)


「これから向かう街。その街がどんな国に属しているか。自分の常識と照らし合わせてどんな軋轢が起こりうるのか。ですね。最低限でいいので教えて下さい。」


(はい。これから向かう街はリシテリア公国の城塞都市グリーデンという街です。

 リシテリア公国は人間の治める3カ国では規模、人口ともに一番少なく王制を敷いています。主な産業は農業、建築などです。鉱山も有していますので鉄鋼業にも力を入れています。

 公国内にある高難易度ダンジョンは3つ。全て80階層で人気は有りますが未だ攻略はされていません。

 特にこの国、固有の禁忌などはないので山田さんの常識と照らし合わせて軋轢を生むような事は無いと思います。

 …あぁ、奴隷制度があります。これは[アマルテア]すべての国にある制度なのでご注意下さい。)


 うむ。城塞都市グリーデンね。つまり首都では無い。あっ、王都か。

 自分行っても特に問題なさそうだな。

 奴隷は見て見ぬふりをするしか無いし。

 あと聞きたい事は…そうだ。


「そういえば俺は現地の人と少し違うと言っていましたがどの様に違うのですか?少し詳しく教えて下さい。」


(…現地の人間は鼻が高く、瞳も明るいですし、髪も明るい色をしています。稀に黒に近い髪や濃い茶色の瞳の方もいますので劇的に違いはないのですが…。)


 あれ?これは遠回しにカッコ悪いと言われてるんじゃない?

 まぁ俺だって西洋系の顔立ちはカッコいいと思うから別に良いんだけどね…。


(別にどちらが優れているとかではないのです。

 ただ、現地の人間と少し違うだけですので。)


 やべえ。マリちゃんに気を使われてる…。話題を変えよう。


「えぇと…この結界内は魔法使っても大丈夫ですか?少し練習しておきたいので…。」


(はい。大丈夫ですよ。外からの攻撃のみ反応しますのでこちらから魔法を放つ事は可能です。

 そろそろ暗くなって来たので"認識阻害のローブ"に着替えていただいても良いですか?

 着替え終わったらイメージしやすい攻撃を思い浮かべて魔力を放出して下さい。弱い放出から始めて、慣れたら強い放出にしていきます。

 ですが最初に意識するのは攻撃魔法の明確なイメージと発現速度です。

 くれぐれもノームに当てないで下さいね。)


 忘れてたよ。ローブ着替えるの。やっぱりマリちゃんはしっかりてしるな。


「では着替えたら早速、魔法の練習を始めたいと思うのでご指導よろしくお願いします。」


 俺は手早くローブを着替える。

 そして魔力を放出しやすいように右手のひらを前に突き出す。まずは小手調べのファイアーボールだ。

 森に打って火事にでもなったら目も当てられないので川に向かって打つ。

 自分の掌の前に魔力を燃料とした火の玉をつくり、それを魔鎧で強く打ち出すイメージ。

 方向がブレると良くないと思い筒も作り、発現と同時に強く押し出した。


 突き出した手の前が光った瞬間に川に向けて赤い光線が飛んだ。

 その光線は川面を蒸発させながら突き破り川底の石や砂も蒸発させながら爆散。

 その衝撃で瞬間的に川面は膨れ上がり大量の水と石や岩を吹き飛ばす。

 遅れて爆音が響いた。水や石が空高く舞い上がり、自由落下で落ちて来る頃に被害の全容が見えてきた。

 川幅は4メートル深さは腰ほどしかなかった場所は向こう岸に向かって8メートルほど抉れており水深は一部だけ5メートル程になってしまった。


(「………。」)


 何も言えなかった。

 マリちゃんも何も言ってくれなかった。

 でもわかる。俺はまだ魔法は使っちゃダメだ。オーバーキルすぎる。ファイヤーボールの威力じゃないでしょ。

 もし使うにしてもしっかり訓練して威力を抑えないとただの大量破壊兵器になっちまう。


(えぇ……と。山田さんそろそろ疲れていませんか?今日はもうお休みになられた方が良いと思います。

 魔法の訓練はまた明日やりましょう。)


「………はい。そうします。いやぁ何だか今日は疲れたなぁ…。」


 なんて言いながら岩の上に寝転び、こんなに早く寝れるかよ。とマリちゃんに秘密のツッコミをいれていると視界の端にノームがひっくり返りバタバタと藻搔いている姿が見えた。

 あいつ鈍臭いな。



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