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聖者の半分  作者: 落花生
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竜の寂しい記憶

 夢だ、と実感しながら夢をみることは結構多い。現実ではありえないことが連続しておきて、とても馬鹿馬鹿しい内容だからだ。


 俺が今見ている夢の内容も、そうだった。


 夢の中で、俺は竜だった。しかも、黄金に輝く鱗を持った、とても大きな竜だった。俺が空に飛び上がるだけで大地には巨大な影が落ち、人間が作ったもろい建築物は風圧で壊れていった。そして、着地するだけで地震のような地響きが鳴り響く。


 俺は、黄金の竜だった。


 人間にとって、俺は恐怖の対象であり信仰の対象でもあった。そして、他の竜にとっても俺はそうだった。俺以外の竜は、人間に狩られて数を少なくしていた。


 俺は、そのことに対して悲しみを覚えなかった。俺は竜であったが、あまりに大きく、余りに強すぎて、自分を竜だとは思っていなかった。人間とも思っていなかった。竜も人もそれは同じだったらしくて、俺は神様みたいに扱われていた。


 数が少なくなった竜は、俺に懇願した


『人間を皆殺しにしてください』


 俺を信仰する人間たちは、俺に祈りをささげた。


『他の人間に戦争で勝つために、もっと強い武器をください』


 俺は長く生き過ぎて、強大になりすぎた。


 もう俺は生物ではなくって、神のような存在になっていた。誰も親しくしてくれないし、誰も側に寄ってきてくれない。俺の側にくるのは、俺を信仰し、俺の力で望みを叶えようとする竜と人間たちだけ。


「――いいよ。叶えよう」


 俺は、人間と竜たちを前にしてそう言った。


「君たち双方の望みを叶えよう。人から戦争を、竜から脅威を取り除こう」


 いっそ世界を滅ぼしてしまおう。


 そのための魔法があった。


 だが、その魔法を使うには俺ですら魔力が足りない。


「この魂をすり減らし、千回の旅をしよう。そして、その最後に……あなたたちの災いを全て取り除こう」


 俺は黄金の竜で、神様みたいな存在だった。でも、ほんの少しだけ生物のさびしい心を残していた。俺と誰も親しくしてくれない世界なんて壊れてしまえと俺は自暴自棄に願っていたのである。


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