一色さゆり著「神の値段」
栄えある1冊目は、2016年度このミステリーがすごい！ 略してこのミスで大賞を受賞された一色さゆりさんの著書、神の値段。
なぜこれを1冊目に選んだかというと、ちょうど今日読み終えたからです。なんとそれだけです深い意味はありません。(これからも鮮度が高い感想を心がけるつもりですが、ストックが切れてくると過去に読んだ作品からピックアップしていくかもしれません。よしなに)
まずは本作の軽い紹介をさせていただきます。
『メディアはおろか関係者の前にも一切姿を見せない現代美術家、川田無名。彼は、唯一繋がりのあるギャラリー経営者の永井唯子経由で、作品を発表し続けている。ある日唯子は、無名が1959年に書いたという作品を手の内から出してくる。来歴などは一切伏せられ、類似作が約６億円で落札されたほどの価値をもつ幻の作品だ。しかし唯子は突然、何者かによって殺されてしまう。アシスタントの佐和子は、唯子を殺した犯人、無名の居場所、そして今になって作品が運び出された理由を探るべく、動き出す。幻の作品に記された番号から無名の意図に気づき、やがて無名が徹底して姿を現さない理由を知る──。』本作粗筋より引用
画商の世界を舞台としたサスペンスです。あちこちに散りばめられた伏線が、終盤にかけて一気に収束していく、繋がった時のカタルシスを楽しむ推理小説というよりは、物語が進むにつれ、徐々に真相へと近づいていく、刑事ものに似た展開のサスペンス方面に傾倒したミステリーだと思います。
普段触れることのない画商という職業。芸術という少し変わった商品を扱う世界が緻密に描かれていて、心躍る劇的な展開こそありませんが、まるでまだ駆け出しの佐和子と共に、画商の世界を旅しているかのような入り込める作品でした。終盤を盛り上げるオークションの場面では、思わず吸い込まれるようで、佐和子と共に、文字通り固唾を飲んで見守ってしまいました。
芸術ってなんなんだろうか。紙切れに絵の具を垂らしただけで数億のお金が動く世界です。意味がわかりませんよね。某お宝鑑定番組を眺めながら、「こんなん俺でも描けそうやん」と呟いたことがあるのは自分だけじゃないはずです。作者は、そして佐和子はそんな疑問に、ひとつの答えを見つけ出したみたいですよ。
「芸術とは、宗教のようなものだ……」
唯子を殺した犯人は？ 推定６億の作品に隠された意図とは？ 顔のない芸術家、川田無名とは？ そして、神の値段とは……緻密に描かれた美術ミステリー。一色さゆり著「神の値段」でした。
気になった方は是非とも最寄りの書店まで。
