好き
そういえば、と。
そんなことを思い出したのは、本当に唐突な発想だろう。
楓に、ちゃんと好きって伝えたことが、最近はないことに。
「これは由々しき事態だ」
「ん? どうかした?」
隣にいる楓が、不思議そうに聞いてくる。
「いや、こっちの問題。それより楓、ちょっとその場にいてくれ」
「え? あ、うん……」
一瞬だけ寂しそうな顔をしたことを、俺は忘れない。
思わず抱き締めたくなりそうになったが、今は気持ちを伝えないといけない。
高難易度任務だ。ランクSに相当される。
俺はその場から立ち上がり、楓の後ろに行く。
「え?」
後ろから優しく抱き締めて、耳元で囁く。
「いつも、傍にいてくれてありがとう。愛してるよ」
「え? え、え?」
慌てる楓を無視して、頬に優しくキスをした。
すると、一瞬でゆでダコのように真っ赤になり、口をパクパクしている。
「最近、楓に伝えてないな、と思ったんだ。ほら、思うが吉日って言うじゃん?」
あと『好き』って言おうとしたのに、なぜ『愛してる』に変わったのか。
まあ、本当のことだからいいんだけど。
「さて、伝えたし、行くか」
「え?」
困惑している楓を無視して、お姫様抱っこをする。
「え、えっと……ゆ、悠斗?」
「ん?」
「どうしていきなりこんなことを……?」
「好きだからだよ」
それだけ言い残し、楓を抱っこしながら、自室のベッドまで向かった
最終話なので、いつも以上の『日常』を書く気持ちでやりました。
ブクマしてくださった皆様、評価を入れてくださった方々
彼氏彼女の日常、これにて完結です!