シングルベッドを買う理由
何書いてるんだろうか、本当に
仕事も安定し、新居に済めることになったので、彼女とニットリにやってきた。
「タンス、食器、日常整品は買ったし、あとは……ベッドか」
「そうだね。お布団じゃなくてベッドにするの?」
「ベッドの方が、ナウなヤング風じゃん?」
「言い方はもう全然ナウじゃないけどね」
まさかのダメ出し。
ボケるとまた言われそうなので、仕方ないから話を進める。
「買った奴は全部配達してくれるし、大きいのを買っても無問題」
「でも大きすぎると逆にスペースが……」
「まあそれはほら、見て行って決めよう」
この店は、一つひとつの種類に分けられている。
食器なら食器コーナー。
タンスならタンスコーナー。
ベッドならベッドコーナーである。
目的の場所に向かい、売り物を見ていく。
「さて、どれにするか」
「う~ん……色々あって迷うね」
「ふかふかしてればいいだろ」
「もう、いい加減なんだから……」
呆れた声を出しているが、彼女──楓を見ると、少しだけ笑っていた。
これから同棲できるので、楽しみにしてるんだろう。
「まあ忙しい時期も過ぎたし、給料も多く貰った。結構良いのが買えるぞ。どうする?」
「どうしよっか……」
頬に手を当て、かわいらしく悩み始める。
腰まで伸びたストレートに、普段は凛とした顔つきだが、二人だけの時となると相応の顔になる。
「ダブル買うか」
「え? ……や、やだ!」
「おっと」
ダブルベッドがあるところに向かおうとしたら、服の袖を強く握られ、体勢が崩れそうになるが咄嗟に立て直す。
「どうした?」
「ダブルは嫌だ……」
「どうして?」
「だって……ベッドが大きいと、悠斗と密着しながら寝れないから……」
その言葉を聞いて、顔が熱くなるのを感じる。
今すぐ抱き締めたい衝動に駆られるが、ここは店内なので、他の人の眼があるため何とか踏みとどまった。
「それじゃあ、シングル?」
「うん。シングルがいい」
「おーけー。ならシングルベッドを買いに行こう」
そう言うと、楓は満面の笑みとなり、俺の腕に抱き着いてきた。
抱き着いたまま、俺の手を握り、指を絡ませてくる。
「えへへ、ありがとう」
「どういたしまして」
今の状況が恥ずかして、少しだけ冷たい感じになってしまう。
だが、楓はそんな俺の事を知っているので、何食わぬ顔だ。
これからの同棲生活を、期待と不安が胸の中で走るが、ただ今は、楓とのデートを楽しんだ。
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