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第一話 下級戦闘員は美少女!?

平成28年11月26日、全面改稿を実施しました。

 僕はいつものように、早朝の河川敷をランニングしている。


 名前は高木慎一といい、高校の2年生で、特に体育会系クラブには所属しておらず帰宅部なのだが、健康増進のために、小学校の頃からの日課であるランニングを惰性で続けていた。


 河川敷はいつもと様子が異なり、地面が(えぐ)れていたり、河川敷に沿って植えられている桜並木の一部が折れたり、焦げたりしていた。


 別に台風が来た、とかの自然災害ではない。


 僕たちの世界には、『悪の秘密結社』やそれに対抗する『正義の味方』が普通に存在するのだ。


 ここは昨夜、彼らの戦闘が行われた場所であり、この惨状は、その名残(なごり)なのだ。


 先程まで、警察が現場検証のために、立ち入り制限をかけていたのだが、僕がランニングする頃には、立ち入り制限を解除し、引き上げるところだった。


 物珍しげに周囲の景色を眺めながらランニングを続けていると、草むらの中に何かある。


 興味を()かれて近づいてみると、悪の秘密結社の下級戦闘員と思われる『もの(・・)』が倒れていた。


 戦闘現場から少し離れた場所であったため、警察も見逃したのであろう。


 このコスチュームは確か……、悪の秘密結社『ネクロ』の下級戦闘員服だったと思う。


 以前に、テレビの報道番組で、死霊超人の周囲にて「キィー」との奇声を発しながら戦闘支援しているこいつらを見た記憶がある。


 通常、このような場合には、警察に通報すれば、直ちに身柄を引き取りに来てくれる。


 ここで警察は、通常の一般人が相手では、取り調べたり拘留したりと、ごく普通の対応をするのだが、悪の秘密結社構成員には、人権が無く容赦がない。


 戦闘後、証拠隠滅のために、遺体も含めて未帰還戦闘員が自爆してしまうので、危険な害獣や野良犬などと同列の扱いとなるのだ。


 この下級戦闘員は、何らかのトラブルで自爆できなかったようだ。


 滅多に無いことだが、生きたまま捕縛された場合には、問答無用で防爆仕様のガス室に送られ処分される。


 そして遺体は、そのまま焼却処理され、ガス室から出されるときには一握りの骨灰になっているという。


 集められた骨灰で、仏像を作って供養はしているようだが、扱いとしては野良犬や野良猫と同列なのである。


 僕も市民の義務に従い、通報しようと思ったのだが、近付いてみると下級戦闘員は、戦闘による負傷から気を失っているだけのようだった。


 そして、全身に泥を被り薄汚れてはいるものの、身体の一部が欠損しているとか、多量の血液を流すなどといった、外見的な異常は無いようである。


 危険が無いと勝手に判断して、間近で観察してみると、破損したマスクの隙間から、(つや)やかな黒髪と、可愛い顔の一部が(のぞ)いていた。


 僕は興味本位にマスクに手をかけ、取り外してみたのだが、まだ幼さの残るとても美しい美少女の(かんばせ)が現れた。


 どうやら、一瞬の内に昏倒(こんとう)させられたのか、ただ眠っているかのような表情で、長い(まつげ)、小作りで筋の通った鼻梁(びりょう)、固く閉じられた可愛い口元と完璧なパーツが、理想的に配置された美しい顔だった。


 また、素肌も色白で肌理(きめ)も細かく、染みひとつなかった。


 この瞬間、僕の意識は、この下級戦闘員が草むらに落ちていた『もの』から『ひと』へと変化していった。


 呼吸も浅いながらしっかりしており、いつ気付いても良さそうな状態だったのだが、軽く()すっても起きる気配はなかった。



 多少の危険があっても、これはもう、お持ち帰りするしかないでしょう!!



 と言った結論に直ぐに到達した僕は、早朝でしかも先ほどまで立ち入り制限されていたためか人通りのない道を、彼女を背負って歩き出した。


 それから、遺留品を残しておくと、後々面倒が起こる可能性もあるため、取り外したマスクなどもしっかり回収した。


 しかしながら、家まで誰にも見られずに戻ることは困難なので、川沿いに建っていた廃屋(はいおく)に彼女を運び込んだのである。


 廃屋の2階の寝室に、残されていた古びたベッドに彼女を寝かせ、僕は必要なものを取りに一旦、自宅に戻ることにした。


 自宅に戻ると時間的には、いつものランニング帰りと大差無かった。


 僕は大急ぎで朝食を摂った後、母響子(きょうこ)の部屋に忍び込み、勝手に衣装を(あさ)った。


 それから自室に戻り、ネットの掲示板で金を出せばなんでもしてくれるという触れ込みの石田医院を探し出し、最後に今まで貯めた貯金を握り締め、いつも通りを装って家を出た。


 学校には向かわず廃屋に戻ってみると、下級戦闘員の少女は、まだ意識を取り戻してはいなかった。


 このことに安堵しながら、彼女の着ている戦闘服を脱がせていった。


 意識が無く、弛緩した彼女の戦闘服を脱がせるのには大変苦労した。


 また、戦闘服なので、普通の服にはない構造の、織り込まれたプロテクターや意味不明の意匠(デザイン)の突起なども、脱がせる障害となったのである。


 そして、その戦闘服の下は、胸にサラシを(きつ)く巻き、下半身には安物の色気も無いパンツを穿()いていた。


 彼女の身体(からだ)つきは、まだ少女特有のアンバランスさを残しているものの、とても綺麗なのだが、腹部と胸部に内出血のためか変色しているところがあり、痛々しかった。


 サラシを(ゆる)めてみると、予想以上に豊かな胸が零れ出た。


 下着は持って来なかったので、サラシを改めて巻き直そうとしたのだが、どうしても上手(うま)く出来ず、(あきら)めることにした。


 サラシが取られて(さら)された彼女の乳房は、とても柔らかそうで、今までに女性の乳房を生で見たことなど無かった僕には、目の毒だった。


 僕は、彼女の乳房から視線を()らせながら、自宅から持ってきた母の洋服を着せたのだが、脱がせるよりも更に大変で、汗だくで悪戦苦闘することとなったのである。


 脱がせた戦闘服は、折りたたんでカバンに放り込み、着替えさせた彼女を背負って廃屋を後にした。


 今の彼女であれば、誰も悪の秘密結社の下級戦闘員だとは思わないだろう。


 いつもなら、学校で授業中だなと思いつつ、河川敷を歩いていると、うまい具合に流しのタクシーが通り掛かったので乗り込み、ネットで探した医者の所に向かったのであった。


 タクシーに乗り込む時、意識の無い少女を背負った僕のことを、運転手が(いぶか)しむかもしれないと心配したのだが、目的地が医院であったためか、特に問題は起こらなかった。


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