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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第二章 ノワール編
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第九話 無限に続く螺旋階段

 翌日の昼下がり、アルケミナとクルスは森の中にそびえ立つ、石によって造られた古塔の前に立っていた。

 その古塔は、天まで伸びているのかと思うほど高い。

「ここが天使の塔。かつて錬金術師が光る大木を生成して、魔獣からの脅威から人々を救ったという伝説が残されている。一度行ってみたいと思っていた」

 アルケミナが塔の外見を眺めながら、伝説について説明する。だが、クルスはその発言が意外だと感じた。

「珍しいですね。先生が行ったことがないなんて」

「アルケアは錬金術で財を成してきた巨大国家。錬金術絡みの伝説が伝わる地は、膨大に存在する。全ての錬金術伝説が伝わる地を訪問するには、五十年必要。まだ私は五割しか訪れていない」

「もしかして、旅の目的は錬金術伝説が伝わる地を訪れることですか。残りの五大錬金術師とEMETHシステムの解除方法を探すことが旅の目的ではないのですか」

 クルスは当初の目的を忘れているのかと心配になる。だが、アルケミナの次の発言を聞き、クルスは安心した。

「この天使の塔に、解除方法の手がかりが残されている可能性がある。浄化作用がある草花が生息しているのは事実。錬金術伝説が伝わる地を訪れるのは、もう一つの旅の目的。解除方法と五大錬金術師を探す旅と錬金術伝説が伝わる地を巡る旅。それを同時に行えば時間の節約になる」

「そうですか」

 クルスはアルケミナの説明に納得し、旅に関することを確認する。

「この天使の塔へは、何日くらい滞在するのですか」

「一泊二日。それで十分」

 

 二人は天使の塔の入り口に足を踏み入れる

 塔の内部は煉瓦造り。一億段の螺旋階段。

 体力に自信があるクルスでさえも、息切れする程。クルスは重たい荷物を背負いながら階段を昇る。

 三百段程昇ったところで、アルケミナは足を止めた。彼女の額から大量の汗が落ちる。それだけではなく、アルケミナの呼吸は深くなっている。長距離を走ったかのように。

 おそらくアルケミナは幼児化により、体力が年相応な物に低下しているのだろうと、クルスは悟った。

 仕方がないとクルスは立ち止まり、階段の上で腰を落とす。

「先生。おんぶしますよ」

そのクルスの一言を聞き、アルケミナは首を小さく縦に振る。

そうして、クルスはアルケミナの体と思い荷物を背負いながら階段を昇る。


 階段が永遠に続くかのような錯覚。クルスは着実に一歩ずつ進む。

 残り五千万段。遂に、クルスは足を止めた。

「もう歩けません。先生。この塔にはエレベーターが設置されていないのですか」

 クルスの背中から降りたアルケミナは、真顔で答える。

「あるはずがない。古塔にエレベーターが設置されていないのは常識。この塔はアルケア及び世界三位の高さを誇る建築物。ちなみに世界一位の建築物は天使の塔の一兆倍。それと比べたら楽な方」

 アルケミナの話を聞きながらクルスは階段の上に座り込む。

「先生はその世界一位の建築物に昇ったことがあるのですか」

 クルスの疑問に対して、アルケミナは即答した。

「ない。あの場所は危険。世界一位の建築物の最上階を目指して毎年一億人の人々が命を落としているという噂だから。あの場所には、遭遇したら即死レベルの最強モンスターが住んでいる。さらに、建物内部には無数の罠が仕掛けられているから、最上階まで昇ることは五大錬金術師でさえも困難ではないかという噂がある。それと比べたら天使の塔はかわいい。罠が存在しないから、ただ一億段の螺旋階段をひたすら昇ればいいだけ」

 一億段の階段がかわいいとはよく言ったものだと、クルスは感じ、つい心にもないことを口にしてしまう。

「先生はいいですよね。三百段昇ったら、僕におんぶしてもらえばいいんですから」

 その発言を聞き、アルケミナは怒ったのか、声のトーンを低くして、クルスの顔を見る。

「元の体なら、ここまで自力で昇る自信があった。体力が低下している方が悪い。もう少し歩けば踊場がある。そこで休憩する」

 アルケミナが自力で階段を昇り始める。

 クルスは嫌な予感を覚えながら彼女の後を追った。


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