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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第一章 アルケミナ編
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第八話 旅の行き先

 それから、何時間が経過したのか。クルスは幼いアルケミナの膝の上で目を覚ました。

「ごめんなさい。時間を無駄にしたでしょう」

「そんなことはない。クルスが失神している間に、錬金術の実験を進めたから、無駄な時間は存在しない」

 まさか助手が気絶している間も研究をしていたのかとクルスは思うと、彼女は怒りを覚える。だが、ここは堪えて、クルスがアルケミナに尋ねる。

「介抱していたのではないのですか」

「介抱した所で時間の無駄。錬金術の実験や旅の準備をしながら目を覚ますのを待った方が時間を有効活用できる」

 

 合理主義者らしい言葉だとクルスは思う。そこで、クルスは再びアルケミナに質問する。

「ところで、旅の準備は整いましたか」

「準備は終わっている。食料及び旅に必要な物は、既に準備した」

「行き先はどこですか」

「天使の塔。そこが最初の目的地」

 天使の塔。八大都市ノームに一番近い古い塔で、錬金術伝説が伝えられている。

「そこに、残りの五大錬金術師の一人がいるのですか」

 クルスが尋ねると、アルケミナは首を横に振る。

「その場所に彼らはいない。EMETHシステム解除方法の手掛かりが残されている。天使の塔の内部にある、シャインビレッジで栽培されている草花には、浄化作用がある。現在では所有が禁じられている呪言の槌の解除方法に必要なアイテムが、栽培されているのもシャインビレッジ」

 呪いという意外な言葉を聞きクルスが再び疑問を口にする。

「つまり、EMETHシステムは呪いだったということですか」

「それは違う。EMETHシステムと呪いを一緒にしないでほしい。薬の材料が天使の塔にあるということ」


 アルケミナの説明にクルスが納得して、再び質問を重ねる。

「なるほど。今日中に天使の塔に到着できるのですか」

「時間と距離などを考慮すると、今日中の到着は不可能。今夜は天使の塔への道中で野宿する。天使の塔へは明日の午前中に到着する予定」

 野宿。聞き間違えではないかと思い、クルスがアルケミナに確認する。

「野宿ですか」

「大丈夫。寝具とテントは準備してある」

「因みに、テントの個数を教えてくれませんか」

「テントは一張り。道中には宿泊施設がないから、テントで野宿する。テントは一人用だけど、この体なら大丈夫」

「それは一人用のテントの中で、先生と一緒に寝るということですか」

 そのクルスからの質問に対して、アルケミナは首を縦に振った。

「そう。旅の予算を節約したかったから、テントを一人用にした。この体なら一人用のテント内でクルスと寝たとしても、十分なスペースを確保できる」

 アルケミナの答えに、クルスが声を荒げる。

「先生。少しは考えてください。本当のあなたは年上の女性。本当の僕は青年。そんな二人が一つ屋根の下で寝ると考えたら……」

 クルスは再び赤面する。その鼻からは鼻血が垂れている。鼻をハンカチで押え止血しようとするクルスの顔を、アルケミナが見つめる。

「現在のクルスは、現在の私にとってお姉ちゃんのような人。小さい妹とお姉様が一緒のベッドで寝るのは普通のこと。恥ずかしいことではない」

 アルケミナの正論には負ける。クルスは一度目を瞑り、返答する。

「分かりました」

 なんとか鼻血が止まったクルスは、今夜の睡眠を心配する。


 そして、五大錬金術師とEMETHシステム解除方法を探す旅に出かけるために、歩き始めた。



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