第七話 烙印の在り処
五分後二人は十階にある研究室にいた。そこの研究室のロッカーに創造の槌が隠されている。
アルケミナはロッカーから、創造の槌を取り出す。二メートルに及ぶ槌は五歳の体型には似合わない。五歳のアルケミナにとってこの槌は大きすぎる。
しかし、アルケミナはその槌を軽々と持っている。そのことにクルスは違和感を覚え、つい疑問を口にした。
「先生。どうして、創造の槌を軽々と持っているのですか」
「特殊な槌は使用者を選ぶ。使用者の体型によって重量が変わる。つまり、創造の槌は幼女化したこの体型に合わせた重量に変化している」
「なるほど」
クルスが縦に頷くと、アルケミナはクルスの目の前でブカブカになった衣服を脱ぐ。その様子を見て、クルスの思考が三度固まった。今度はそれだけではなく、クルスの顔が三つ見るうちに赤くなっていく。
「先生。何をしているのですか」
「今着ている衣服から、今の体型にあった衣服を創造する。そのためには、一度ブカブカになった衣服を脱がなければならない」
クルスは次の一手としてある提案を持ちかける。
「絶対的能力を使って、衣服を創造しませんか。絶対的能力と二回使うんです。一回目は衣服を創造するため。もう一回床に触ったら、一瞬のうちに早着替え」
「嫌。あの能力は使いたくない」
クルスの全裸目撃回避作戦は、アルケミナの我儘によって不発に終わる。だが、クルスは諦めない。
「だからと言って、僕の目の前で脱がないでください」
「女の子が女の子の裸を見ることは恥ずかしいことではない」
「しかし、中身は男です。目の前で裸になられては、セクハラをしているような気分になります。兎に角、体にバスタオルを巻くか、僕を研究室から退室させるか。選んでください」
「一瞬。一分も満たない」
アルケミナはクルスの問いに答えない。
クルスは、目の前で裸になっていくアルケミナの姿を見て、一瞬の内に赤面する。
それに追い打ちをかけるように、アルケミナは提案を持ちかけた。
「体のどこにEMETHという文字が刻まれたのかが気になる。衣服で隠れたところに刻み込まれたとすると、裸にならないと確認できない。鏡や目視で確認できる箇所には文字が刻まれていなかった」
「えっと。僕も裸になれということですか」
「そう。温泉に行ってもいいけど、早く旅に出かけたいから」
最悪な展開。これが俗に言う羞恥プレイという奴だと、クルスは思った。
アルケミナは容赦なく、クルスの衣服を無理やり脱がす。そうやって、無理やり裸にされたクルスの体を、アルケミナが凝視する。
「なるほど。クルスの背中に、あの文字が刻み込まれている」
アルケミナが、クルスの体に刻み込まれた文字を確認すると、彼女はクルスの前方に回り込む。
「確認して」
クルスの顔がさらに赤くなる。まるで、ゆであがったタコのように。
クルスはジロジロとアルケミナの体を観察する。そんなクルスの目に、あの文字が飛び込んできた。
「右の胸の真下。そこにEMETHという文字が刻み込まれています。分かったら、早く着替えてください」
クルスは、視線を彼女の裸体から反らしながら促す。アルケミナが首を小さく縦に振り、脱ぎ棄てられた衣服を創造の槌で叩く。すると衣服は幼女化したアルケミナの体型に合った衣服に変化した。
アルケミナがその下着を履くと、クルスは失神した。鼻から血が飛び、クルスはそのまま倒れる。
目の前で異性の全裸を観察。さらに目の前で異性の着替えを目撃する。
これらはクルスにとって恥ずかしいことだった。そこから、顔はタコがゆであがったように赤くなり、結果失神したのだろう。