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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第一章 アルケミナ編
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第六話 五大錬金術師たちからのメッセージ

 クルスが変わり果てた自分の姿に茫然としている中で、アルケミナは再び床に手を置く。

すると、クルスの前に出現した鏡の壁が跡形もなく消えた。その光景を見ながらアルケミナが呟く。

「なるほど。錬金術を解除しようという意思で床に手を置くと、能力で出現させた物が消滅。そこは普通の錬金術と同じ」


 アルケミナが自分の能力の考察を行うと、クルスが冷静になりアルケミナに尋ねる。

「先生。これからどうしますか」

「研究所に戻る。ブラフマたちと今後について相談しないといけないから」

 そのアルケミナの答えは正しいと思った。研究者として今後のことを相談して、対策を考察することは、研究者の常識だ。


 二人は神殿の階段を降りる。だが、アルケミナはブカブカな衣服を着ているため、歩きにくい。白衣の裾を足が踏み転びそうになることも多い。

 アルケミナは順応性が良いのか、この現状に対して開き直る。そうして、彼女はクルスの目を見ながら、意外な要求を口にする。

「クルス。おんぶして。歩きにくい」

 その要求にクルスが戸惑う。

「いつものように、錬金術で衣服を創造すれば、いいでしょう」

「お姉ちゃんが幼い妹をおんぶすることは、普通のこと。それに創造の槌は、現在研究所のロッカーの中にある。それまではこの衣服を着ないといけない」

 正論だとクルスは思った。我儘な一面もある彼女らしいとも。確かに現在のアルケミナとクルスは遠くからみれば、姉妹のようにも見える。

 それならば、別に構わないのではないかと、クルスは考え、返事する。

「分かりました」

 クルスがアルケミナをおんぶする。幼くなったアルケミナの体重は軽いと、クルスは感じた。元のグラマーな体型のアルケミナをおんぶして神殿の階段を下ると、かなり疲れるが、幼女化したアルケミナをおんぶして階段を下ったとしても、疲労は感じない。


 十分程で二人が研究所に戻る。研究所の自動ドアを二人が潜った瞬間、一斉に電話が一鳴り響く。

 クルスが慌てて、一階にある事務室に足を運ぶ。その部屋の異様な光景に、クルスは目を大きく見開いた。

 事務室に設置された電話がいつまでも、鳴り続ける。それだけではなく、ファックスやメールが大量に届いているようで、コピー機から印刷された大量のメッセージの紙が、部屋の中を埋め尽くす。

 嫌な予感を覚えながら、クルスはファックスの山から適当に一枚取る。

『どうしてくれる。EMETHプロジェクトに参加したら、顔が狼になったではないか』

「先生。どうやらこの現象は、十万人の対象者全員に起きているとみて間違いないと思います」

 クルスが顔を上げると、アルケミナはファックスの山から四枚のファックス用紙を探し当てた。その四枚のファックスには、ブラフマを含む残りの五大錬金術師の名前が記されている。

「残りの五大錬金術師からのメッセージ。四枚のファックスを要約すると、『アルケミナ。あなたは記者会見を行った。世間ではあなたが、このプロジェクトのリーダーであり責任者であるという認識になっているらしい。責任者として、この現象の対処はあなたに任せる。私たちのことは探さないでほしい』とのこと」

 

 鳴りやまない電話の音をバックに、アルケミナがクルスに伝える。その伝言を聞いたクルスは呆れる。

「ブラフマたちは、先生に責任を押し付けて雲隠れしたということですか。五大錬金術師はリーダーを決めないという方針で、錬金術研究を進めていたのに」

 クルスが呆れたような表情を浮かべると、アルケミナがある決断をクルスに伝えた。

「十万人の対象者が被害を受けた現象の解除方法と残りの五大錬金術師を探す」

「見つかるのですか。残りの五大錬金術師も容姿に変化が起きているでしょう。解除方法は原因が分からないことには、見つけようがありません」

「原因なら分かる。EMETHシステムには、人間の遺伝子レベルで書き換えを起こし、人間に能力を付与するというメカニズムがある。

その付与する段階において、プログラムが本来なら『書き換えなくても良い情報』を書き換えた結果が、この現象だとすれば、説明ができる」

 アルケミナがスラスラと原因を説明すると、クルスが首を傾げる。

「それが原因だと、解除方法が分かりませんよね」

「原因を取り除けば、解除できるという問題ではないということ。どうする。EMETHシステムの解除方法と残りの五大錬金術師を探す旅に行くのか。行かないのか」

 アルケミナからの突然の問いかけ。その答えは既に決まっていた。

「行きます。元の体に戻りたいから」

「分かった。それでは旅の準備を始める。一緒に研究室に来て」


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