第五十四話 制限時間
ラスは気絶したマエストロの顔を見ながら、ルスに話しかける。
「ルスお姉様。やりすぎですよ。殺したらお仕置きです」
「大丈夫ですよ。死なない程度にやりましたから」
「ルスお姉様。何をしたのですか」
「簡単に言うなら空気感染でしょうか。僕の場合、能力の発動条件が二つあります。一つは、僕が魔法陣に触れた場合。もう一つは、爆風に乗って空気中を漂うバグが、魔法陣に付着した場合。その場合は、バグが魔法陣に付着した時に爆破するのではなく、僕が魔法陣に触れた時に、同時爆発する」
「ルスお姉様。怖いですね。ところでマエストロをどうします。殺人以外何でもありならば、気絶している状態の相手を攻撃しても悪くないのでしょう」
「僕は嫌いですね。こういうシチュエーションは。だから攻撃するのなら、ラスがやってくださいよ」
「ルスお姉様。一つだけ聞きます。僕たちの真下に書かれている魔法陣。それをお姉様は触れました。なぜ爆発が起きないのでしょう」
「あの時僕は、二回魔法陣を触りました。二回魔法陣を触れば、時限爆弾にできるのです。爆破時間まで残り五分」
ルスの告白にラスが固まる。そしてラスは、再びルスに尋ねる。
「ルスお姉様。なぜそんな大技を仕掛けたのですか」
「タイムリミットがあった方が面白いでしょう。因みに、僕たちの真下に描かれている魔法陣が爆発すれば、この建物は、確実に倒壊します」
「建物が倒壊すれば、亡くなりますよね」
「そうですね。その前に僕たちの力でマエストロとルクシオンを瞬間移動すればいいだけの話でしょう。もしくは五分以内に決着を付けるか」
「なるほど。制限時間ね。面白いじゃない」
ルクシオンが声を出し、ルスとラスの前に姿を現す。
「ルクシオン。すぐに決着を付けなければゲームオーバー。この建物を吹っ飛ばす程度の爆発が発生して、建物は倒壊。もちろん逃げ場は残されていません。即ちここにいる四人が全員死亡します。面白いゲームでしょう」
ラスがルクシオンに近づきながら呟く。
「そうね。あなたたちは得意の瞬間移動で外に脱出するのでしょう」
ルクシオンがラスに問うと、ラスが頬を緩ませる。
「もちろん。ルクシオン。取引しませんか。メランコリアの能力についての情報を開示すれば、あなたを助けますよ」
ルクシオンは一瞬考え、結論を述べる。
「分かったわ。メランコリアの能力は、半径五十メートル以内にいる悪意を持った人間の動きを封じるというもの。その能力は自分の力では制御できないって言っていた」
「なるほど。分かりました。能力名を付けるとすれば、絶対領域でしょうか」




