第四十一話 ラプラスの疑惑
その後、何も質問が出なかったため、説明会は打ち切られる。最後に助手が集まった絶対的能力者たちに伝える。
「以上の説明で、当研究所の実験に協力したいと考えている方は残ってください。それ以外の方は帰って構いません」
八割以上が残ったが、アルケミナは出口に向かい歩き出す。その後ろをクルスが追いかける。
「待ってください。先生」
アルケミナは無言を貫き、研究所を後にする。
それから数分後、研究所の建物から少し離れた路上でアルケミナは立ち止まる。
「ラプラス・ヘア。私は許せない」
このアルケミナの一言を聞き、クルスは戸惑う。
「ラプラスさんが何をしたのですか」
「EMETHシステムには、必ずフェジアール機関が試作段階で見逃したバグがある。この一言を私は許せない。フェジアール機関に対する悪口に聞こえた。クルス。悪いけれど、ラプラスの意見は聞かない」
「先生。待ってください。ただ悪口を聞いただけで、突然変異の権威であるラプラス・ヘアの意見を聞かないのですか」
「悪口だけではない。ラプラスはとんでもないことを考えている。突然変異の権威という称号を悪用した陰謀」
「どういうことですか」
クルスが首を傾げると、アルケミナは一歩を踏み出す。
「ラプラスたちが、絶対的能力者たちから検出したデータを元に何かしらの悪事を働いているとみて間違いない。システムの不具合を探すのは、フェジアール機関が行う。全くプロジェクトに関わっていない、ラプラスの研究所が不具合を探しているのはおかしい」
アルケミナの意見は一理あるとクルスは思った。そして、クルスはアルケミナに尋ねる。
「これからどうするのですか」
「絶対的能力を利用した悪事を見逃すことはできない。だから私はラプラスと戦い、悪事を暴く」
アルケミナが打倒ラプラスに燃えていると、クルスは再度質問をアルケミナに伝える。
「聞きたいことがあります。あの質問の意図です。最後の質問が悪事を探るための物なら、その前の二つの質問にはどのような意図があるのですか」
「個人的興味。ラプラスの見解が聞きたかっただけ。これだけでも当初の目的であるラプラスに意見を聞くというのが達成できた。これ以上の意見は必要ない」
意外な答えにクルスが肩すかしを食らう。それからクルスは、右手を挙げる。
「先生。ラプラスさんが悪事を働いているという証拠はありませんよね」
「大丈夫。証拠はこれから探る。そのためには準備が必要。潜入捜査は日が暮れてから行う」
アルケミナがクルスに伝え、歩き出す。クルスはアルケミナの勝手な推理を尊重することしかできなかった。




