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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第四章 エクトプラズムの洞窟編
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第三十四話 三つに分かれた道

 それから数時間後、アルケミナとクルスの二人は、エクトプラズムの洞窟へやってくる。

 洞窟の入り口の前に立ったクルスが一歩を踏み出しながら呟く。

「先生。この洞窟を抜けた先に目的地、サラマンダーがあるんですよね。今日中に辿りつくことができますか」

「この洞窟を攻略するのに必要な最低所要時間は七時間。だから今から行けば、日が暮れる前にサラマンダーに到着することができる」

 クルスは確認を済ませると、暗闇に包まれた洞窟の中に入っていく。アルケミナもクルスに続くように、自分の足で入り口に向かい歩き出す。

 洞窟の内部は光が届かないため、暗闇に覆われている。アルケミナが錬金術でランプを召喚し、周囲を照らす。

 洞窟の壁には紫色の水晶が生えている。その内の一つが突然動き出す。


 二人の目の前に現れたのは、洞窟の壁に擬態していた紫色の水晶を生やした大蛇。

 その大蛇は二人を襲う。それより早くアルケミナが咄嗟に槌を叩き、大きな壁が召喚する。大蛇はその壁にぶつかり、反動により遠くに飛ばされる。

 アルケミナは小さくため息を吐く。

「このレベルなら本気を出す必要もない。ましてや、クルスの能力の出番もない」

 アルケミナがハッキリと答えると、クルスは心配する。

「アイザック探検団を全滅させたモンスターもいるかもしれないでしょう。断定するのは早過ぎます」

「大丈夫。その時はクルスの能力があるから」

 アルケミナが真顔で答える。

 それから二人がしばらく歩いていると、突然アルケミナが立ち止まる。その視線の先には三つに分かれた穴があった。

「分かれ道ですね。右か。左か。真っ直ぐ。どれを選びますか」

 クルスがアルケミナに問う。アルケミナは槌を叩き、昨日購入したエクトプラズムの洞窟の地図を取り出す。

「真っ直ぐ行く。それが一番近い」

 合理的な意見だと思いながら、クルスが地図を覗く。そこに書かれていたのは衝撃の事実。

「先生。真っ直ぐ行くのはいいですが、その先に生息しているのは主と互角に戦うことができるモンスターですよ。それが四匹います。本当に行くのですか。一番安全なのは左ですよ」

「構わない。本気を出さないという言葉は撤回する。一度に四匹のモンスターと戦うことになっても、クルスの絶対的能力と私の錬金術があれば負けない。左に行けば遠回り。時間の無駄」

「分かりました」

 クルスはハッキリと答え、死を覚悟する。これから行くのは近道だが、危険な場所。一度に強いモンスターが襲い掛かる地獄。

「先生。アイザック探検団を全滅させたモンスターが、この先にいるのではないかと思っているのですか」

「多分。この先がアイザック探検団のメンバー全員の遺体が発見された場所だから」

 二人は危険な近道へと足を踏み入れる。


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