第三十二話 ブラフマ・ヴィシュヴァの狩猟
同じ頃小太りに金髪のリーゼントの男、ハント・フレイムと金髪のスポーツ刈りで黒いローブを着ている男、ブライアン・フレイムの二人は夜のエクトプラズムの洞窟に向かっていた。
ハント・フレイムは月明かりを浴びながら隣を歩くブライアン・フレイムに話しかける。
「ブライアン兄さん。今回は久しぶりに夜の狩りか」
「ああ。エクトプラズムの洞窟に生息する恩スターは夜になると凶暴化するが、その分モンスターの血液の成分が変化する。その血液は錬金術の材料として高額で売れる。今回の狩りを成功させて大金持ちになろう」
「噂では新種のモンスターがアイザック探検団を全滅させたらしいぜ」
「関係ない」
ブライアンが言い放つと、二人はエクトプラズムの洞窟の入り口に入っていく。
辺りは暗闇に包まれている。ハントが黄色の槌でランプを召喚して、歩き出す。
それからしばらく歩いていると二人の前に体中に紫色の水晶を生やした大蛇が現れる。
ハントは赤色の槌を地面に叩く。それにより、周囲を白煙が包み込む。一方ブライアンは錬金術で召喚した弓矢で大蛇を狙おうとする。
だが、大蛇の尻尾が地面を叩き、白煙が掻き消される。大蛇はそのままブライアンたちに襲い掛かる。
大蛇の動きが速すぎるため、ブライアンの放つ弓矢は全て外れてしまう。
大蛇は牙を見せブライアンの頭を噛もうとする。
「ここまでか」
ブライアンが目をつむると、突然ブライアンの目の前に巨大な壁が出現する。
煉瓦造りの大きな壁。大蛇はその壁に激突し、反動によって飛ばされる。
その直後、暗闇から一人の男が現れた。黒色のローブに身を包んだ長身の男。世のすべての女性たちが振り向くほどのルックス。逆立った緋色の髪。吊り上がった目。
男は大蛇を見て頬を緩ませる。
「やっと見つけた。この三日間張り込んで正解だった。欲しかったんじゃよ。夜パープルスネークの皮膚に分泌されるエキスがしみ込んだ、そなたの尻尾が」
男は地面に手を置く。すると地面に魔法陣が出現する。中央に逆三角形に横棒を加えた記号。東に牡羊座。北に火星。西に双子座。南に土星。その記号によって構成された魔法陣は、大蛇の這う地面まで移動していき、瞬く間に檻が大蛇を閉じ込めていく。
男は身動きができない大蛇まで近づき、剣を見せる。その後男は大蛇の尻尾を切断。
「安心せぇ。尻尾は三時間もすれば生えてくる。それまでの辛抱よ」
男が大蛇の尻尾を袋に入れると、ブライアンとハントの二人は拍手する。その時男はこの場に二人がいることに気が付いた。
ブライアンは男に近づき握手を求める。
「お兄ちゃん。助けてくれてありがとう」
「何。助けたつもりはないよ。わしは大蛇の尻尾が手に入ればそれでよかっただけ。ところでお前たちはハンターか」
「そうだぜ」
ハントがはっきりと答えると、男は人差し指を立てる。
「だったら今日の狩りは止めたほうがいい。このレベルのモンスターに苦戦するようなら、出口に住み着いている奴に瞬殺されるのがオチ。もう一度忠告する。夜のエクトプラズムの洞窟は危険じゃから、今日は帰ったほうがよかろう。朝になったらここで狩りを楽しめばいい。この一週間エクトプラズムの洞窟に住み着き、サバイバル生活をやっているわしの意見じゃ。聞くか聞かないかは任せるが、次は助けんよ」
ハント・フレイムとブライアン・フレイムの二人は男の意見に耳を貸し、足早に洞窟の入り口へと戻る。
その男の名前はブラフマ・ヴィシュヴァ。五大錬金術師の一人である。




