第二十三話 怪人との追跡劇
パラキルススドライの裏路地に一人の幼女がいた。その幼女は息切れを起こしている。
その幼女。アルケミナ・エリクシナは生きていた。
あのコンクリートの壁が崩壊した直前、アルケミナは槌を叩いた。それによりアルケミナが立っていた地面に魔法陣が出現。地面に入り口を作り、そこから危険な場所から脱出した。
その錬金術で創造された空間。入り口は自由だが、出口は半径二キロ以内のどこかに作られる。その出口は自由に選べない。
この脱出劇はアルケミナにとってギャンブルだった。仮にパラキルススドライの怪人の近くに出口ができたら確実に殺されていたから。
それだけではなく、魔法陣を構成する記号にエーテルが含まれていたことも、賭けである。
エーテルは、プロの錬金術師でも使い方を間違えれば、命を落とす危険な物質。
だが、アルケミナは脱出劇の直前、落ちてくる瓦礫によって右足の太ももに出血を伴う切り傷を負った。
さらに、アルケミナの体力に限界が襲い掛かる。これまで九十九人も殺した無差別殺人鬼が発するプレッシャー。
切り傷によって生じた右足の痛み。
これらがアルケミナの体力を徐々に削っていく。
「この近くに高さ五十メートルくらいのビルがあったら、確実に、このエリアから脱出できる」
アルケミナはパラキルススドライの怪人による襲撃に警戒しながら、新たなる脱出劇の舞台となるビルを探す。
パラキルススドライの怪人はアルケミナを殺すため町中を探し始める。
「どこにいる。餓鬼」
怒りに身を任せたパラキルススドライの怪人は、周囲にあるコンクリートの壁や建物を手刀で破壊しながら、標的を探す。その手がかりは血の匂いのみ。
捜索の間、パラキルススドライの怪人は感じていた。
新開発の錬金術。錬金術を利用した脱出劇。標的の幼女が只者ではないと。
頑丈な建物が次々破壊されていく。
パラキルススドライの怪人の通り道にできるのは瓦礫の山。無数にある瓦礫の山のどこかに誰かの遺体が埋まっていてもおかしくない状況。
既に被害者数は百人を突破している。
この瞬間、パラキルススドライの怪人の考えが変わった。百人目の被害者としてあの餓鬼を殺すことから、何人殺してもいいから餓鬼を殺すことに。
強まっていく殺意。残忍な怪人による魔の手は少しずつアルケミナに迫っている。
捜索から十分後、パラキルススドライの怪人は裏路地に辿り着く。そこから血の匂いは発生している。
さらに、ポタポタと地面に付着している血痕。それを見て、パラキルススドライの怪人は高笑いする。
「絶対逃がさない。この血痕がお前の墓場への道標だ」
パラキルススドライの怪人は血痕に導かれて、ビルに辿り着く。
高さが五十メートルあるビルを、パラキルススドライの怪人が見上げる。
「このビルが餓鬼の墓場か」
パラキルススドライの怪人は、徐々にアルケミナを追い詰めていく。




