第二十二話 怪人との激闘
その頃パラキルススドライの怪人と対峙するアルケミナは槌を手にする。それを見て怪人は高笑いする。
「逃げないのか。それとも恐怖で一歩も動けないか。一撃で殺してやるよ」
怪人は一歩も動かず、右手を上に伸ばす。その一瞬にアルケミナは水色の槌を地面に振り下ろす。東西南北に下向きの三角形、中央に温浸を意味する獅子座の記号。
その記号で構成された魔法陣は一瞬で怪人が立っている地面の上に移動する。
そして次の瞬間、怪人の足元を水の柱が持ち上げる。数十メートルまで伸びた柱が怪人の体を上空まで飛ばす。
しかし、上空に飛ばされたパラキルススドライの怪人の体は、風に煽られることなく、地面に着地する。
「お嬢ちゃん。小さいのにやるな。もしかしてお前も絶対的能力者か。例えば錬金術の威力を通常の十倍にするとか。お嬢ちゃんの年齢だと一メートルが限界だろう」
「あなたは絶対的能力者。一応私も絶対的能力者だけど、能力は使いたくない。さっきの錬金術は私のとっておきだったけど、効果がなかったから逃げる。このまま戦っても時間の無駄だから」
アルケミナは怪人に告げるとその場を走り去る。だが、パラキルススドライの怪人はそれを許さない。
「逃がすわけがない」
アルケミナは全速力で走る。全ては怪人から逃げるため。
しかし、パラキルススドライの怪人は一秒も経たずにアルケミナに追いつく。それはパラキルススドライの怪人の身体能力が凄いということではない。アルケミナの身体能力が幼女化したために低下したからである。
「逃げても無駄だ」
それは一瞬の出来事だった。パラキルススドライの怪人は、近くにあるコンクリートの壁を手刀で切断する。そのコンクリートの瓦礫は、アルケミナの体まで飛んでいく。そして、コンクリートの壁がアルケミナを押しつぶすかのように倒れた。
周囲に土埃が立ち、パラキルススドライの怪人は高笑いする。
「バカな奴だ。能力を使えば勝てたかもしれないのに」
その笑い声が土埃と共に鳴り響く。
パラキルススドライの怪人は一瞬高笑いを止め、瓦礫を撤去する。百人目の被害者の遺体を見つけ出すために。
だが、そこにはアルケミナの遺体が存在しない。
「どこに消えやがった。餓鬼の遺体は」
パラキルススドライの怪人が苛立つ。それと共に、彼の脳裏に仮設が浮かぶ。
あのコンクリートが崩壊する直前、この状況から脱出した。あの一瞬で、そんなことができるはずがない。
だが、周囲には血の匂いが漂っている。その匂いはコンクリートの壁を壊した直後から漂っている。
パラキルススドライの怪人は思う。この匂いの先に百人目の被害者がいると。
そして、パラキルススドライの怪人は血に飢えた鮫のごとく。匂いに導かれてアルケミナに襲い掛かる。




