表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第一章 アルケミナ編
2/72

第二話 錬金術研究の進め方

錬金術。いや。魔法陣の描写を詳細にしたら長くしました。


魔法陣の記号と意味は適当ではなく、実際の錬金術と同じ記号を使用しています。

実際の魔法陣はかなり複雑な構成ですが、本作ではシンプルに簡易化しています。


 錬金術研究の第一人者。世間から崇められている存在。それが五大錬金術師。

 今日は五大錬金術師たちが所属するフェジアール機関と世界最大級の巨大国家アルケアが協力して、世界を進化させる大切な日。


 クルスは黒色の手帳を取り出し、今日の予定をアルケミナに伝えた。

「いいですか。六時間後、この研究所に設置された記者会見場で、マスコミに対して本日行うEMETHプロジェクトについて、会見を行っていただきます。それから、一時間後例の座標に移動して、ヒュペリオンを出現させます。その頃には、ブラフマさんたちも例の座標に待機しています」

 クルスが説明すると、アルケミナは物静かに呟く。

「私が記者会見担当」

「不満ですか」

 クルスが聞き返すと、アルケミナは声のトーンを低くして首を横に振る。

「いいえ。研究所から座標までの距離が近いこと。以上のことから、私が記者会見を行うということは察していた」

「そうですか」

 クルスが納得して手帳を閉じる。それから、彼は研究所に設置された時計に視線を移す。

「先生。これからどうします。記者会見まで時間が余っていますが」

「研究を進める」

 即答。その答えは、クルスの予想した物と同じだった。暇さえあれば、研究に没頭する。その研究熱心さは、五大錬金術師で一番ではないかとクルスは思う。

「分かりました」


 クルスが元気に答え、研究所の室内に設置されたロッカーから、白衣を取り出し、それを着る。

「先生。今日はどういった実験をするのですか」

「極寒の地でも消えない炎」

 アルケミナが簡潔に答え、右手に白いチョークを握り、部屋の向いに位置する実験室に移動する。


 二人がいた研究室の廊下を挟んだ先にある部屋。その部屋のドアをクルスが押すと、そこには、広い正方形の空間が広がっていた。その部屋には何もない。黒い壁に覆われた、十畳以上ある広さの空間。床の色も黒い。白いのは天井だけ。

 そのためか室内は明るい。

 アルケミナは白いチョークを握り、床に大きな円を書く。その大きさは半径二十センチ程。

 その次は記号の配置。円の北側に炎を意味する上向きの三角形。西側に水を意味する下向きの三角形。北と西の間に煆焼を意味する牡羊座の記号。南に蒸留を意味する乙女座の記号。東に金を意味する太陽の記号。

 円の周辺に書き込まれた五種類の記号を、白い線で丸く囲む。それから、囲まれた五つの円を一本の線で結んでいく。

 円の中心に上向きの三角形を書き、その記号も円で囲む。これで魔法陣は完成。


「クルス。魔方陣が書けたから記憶の槌を持ってきて」

「準備してあります」

 クルスはアルケミナの作業の間、研究室に戻り、実験の備品を用意していた。

 彼は十センチ程の大きさの純白の槌をアルケミナに手渡す。

 アルケミナが床に書き込まれた魔法陣の中心でその槌を叩くと、半径五センチ程度の魔法陣が出現した。その魔法陣の円の中心に、砂時計のような記号が記されている。それ以外の記号は記されていない。

 その簡易的な魔法陣は、徐々に大きくなり、最終的には半径二十センチ程の魔法陣と同等の大きさになる。

 二つの魔法陣が重なった瞬間、二つの魔法陣が赤く光る。

「ここで」

 魔法陣が赤く光った瞬間、アルケミナが再び手にしている小さな槌で魔法陣を叩く。

 すると、床に書かれた魔方陣が消え、白かった槌が赤色に変化した。


「それにしても便利ですね。記憶の槌で魔方陣を叩けば、床に書かれた魔方陣が消えるから、一々魔方陣を消さなくてもいい」

 クルスが関心したように呟くとアルケミナは顔を上げる。

「昔は記憶の槌が高級品だったから、一々魔方陣を書いては消しての繰り返しだった。求めている結果が出るまで繰り返し。今の方が短時間で、新しい錬金術を生み出す実験がしやすいから、好きだけど、タイミングを間違えると記録に失敗するのがデメリット」

 アルケミナが赤く染まった槌を床に置きながら呟くと、クルスは両手に幾つもの記憶の槌を手にしてアルケミナに見せた。

「まだ記憶の槌の在庫があります。どんどんやりましょう」


 それから、二人は次々と新たなる魔方陣を記憶の槌に記憶させていった。砂漠に草原を出現させるもの。荷物を小型化させ、一度に多くの物品を運ばせるもの。

 合計二十個以上の新たなる錬金術を新たに生み出した頃には、記者会見開始一時間前となっていた。その間二人は食事を摂っていない。そのことを忘れる程、二人は錬金術の研究に没頭している。

 五時間で二十個以上の錬金術を新たに生み出すといった研究ができるのは、フェジアール機関の研究員のみ。さらに詳しく言えば、五大錬金術師とその助手が行う研究でなければ、この結果は生み出すことができない。

 普通の研究員は、五時間で五個の錬金術を新たに生み出すだけで精一杯。それほどフェジアール機関の研究員は優秀だ。

 これまで五大錬金術師が生み出した錬金術に失敗作はない。そのため、五大錬金術師が制作した錬金術は絶対的な信頼があった。この日までは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ