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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第二章 ノワール編
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第十四話 サーベルキメラの正体

 シャインビレッジは外来種であるサーベルキメラの襲撃を受けたのか、ゴーストタウンのように静かである。おそらく村民たちは小屋の中に避難しているのだろう。

 村一番の錬金術師を失った今、この村からサーベルキメラという脅威に立ち向かうものはいない。

 村を歩くアルケミナに向かい、風が吹くと問題のサーベルキメラが姿を現した。

 瞳にEMETHという文字が刻み込まれたキメラと対峙するアルケミナは、意外な真実を口にする。

「あなたの名前はノワール・ロウ。村一番の錬金術師で、EMETHシステムの被験者」

 その真実にキメラが驚き、テレパシーで言葉を伝えた。

『なぜ分かった。誰も俺の正体に気が付かないのに』

「最初は正体が分からなかったけど、大体のことは一目会った時に察した。あなたの瞳にはEMETHという文字が刻み込まれていたし、あなたの見た目はサーベルキメラ。この国には存在しない外来種。あのシステムには体に著しい変化を与えるという欠陥があるから、あなたがEMETHシステムの被験者の一人であることが分かった」

 突然現れた少女の推理を聞き、キメラは再び尋ねる。

『なぜ俺がノワールだと分かった』

「トーマスとアニーの証言を聞いたから。ノワール・ロウという男が漆黒の幻想曲発生直後に失踪したこと。ノワールは村一番の錬金術師で、EMETHシステムの被験者になったこと。そして、あなたが最初にテレパシーで伝えた言葉。『錬金術を使えない』この三つの事実を統合すると、ノワール・ロウはEMETHシステムによってサーベルキメラ化して、錬金術が使えなくなった。動物は錬金術を使えないから」


 その少女は真実を察している。そのように判断したノワールは、犯行を見破られた真犯人の如く、自供する。

『そうだ。俺はノワール・ロウ。村一番の錬金術師だった男だ。俺は絶対的能力を使い、この村を守りたかった。だけどあの日、体がサーベルキメラになってしまい、錬金術が使えなくなった。おまけに、絶対的能力はテレパシー。どうやら、世界の人々とテレパシーを通して会話することができるらしい。サーベルキメラになって言葉を失った俺にとっては生命線だな』

 ノワール・ロウが笑い飛ばすと、アルケミナが聞き返す。

「その能力に間違いないの」

『ああ。サーベルキメラになってから村の森林に潜んで、自分の能力を調べた。それで能力はテレパシーだと知った。海外にいる有名人とテレパシーで会話したから、間違いない。その有名人には気味悪がられたけどな。本当に最悪だ。錬金術は使えなくなるし、絶対的能力はテレパシー。森林に潜んでいても何も変わらないと思い、村に戻れば、外来種が襲撃したと言われる。アニーとの関係も終わりだ』

 ノワールは全てを諦めている。そう感じ取ったアルケミナは、彼の考えを否定してみせる。

「違う。あなたは確かに錬金術が使えなくなったけど、サーベルキメラ特有の能力を同時に手に入れた。あなたは錬金術を使わない別の方法で、この村を守ることができる」

 アルケミナの言葉に共感したのか、ノワールは決意を固めた。

『そうだな。俺はサーベルキメラの能力を使ってこの村を守る』


 その頃、村役場に備え付けられた電話を使い、トーマス・ダウが塔の外にいるハンターに連絡した。

「サーベルキメラが村に現れた。駆除してくれ。何をしても構わない」

『分かった。俺たちに任せろ。明日の早朝に到着する』


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