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それは絶対的能力の代償  作者: 山本正純/村崎ゆかり(原作)
第二章 ノワール編
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第十二話 キメラとの戦い

 キメラが咆哮すると、周囲の草花が大きく揺れ、木々の葉を巻き込む竜巻が発生した。小屋は頑丈なためか、破壊されない。

 アルケミナがキメラの体を観察すると、キメラの右の瞳に、『EMETH』という文字が刻み込まれていることが分かった。それが意味している事実は単純なもの。

「気を付けて。そのキメラはEMETH対象者。多分副作用でキメラ化したんだと思う。その証拠はキメラの右眼に刻まれた文字。そのキメラはアルケアに生息しない外来種。世界最大のスピードを誇るサーベルキメラ」

 アルケミナがクルスに伝える。一方クルスは息を飲みこみアルケミナに尋ねる。

「分かりました。あのキメラの暴走を止めることができるのは、僕たちだけのようです。ところであのキメラの能力は咆哮で竜巻を発生させるというものなんでしょうか」

 その質問に対して、アルケミナは首を横に振り否定した。

「違う。あの咆哮はサーベルキメラの特徴。見た目だけで能力が判別できないようになっているから」

「サーベルキメラと同じ能力。それにEMETHシステムで付加された絶対的能力。この二つが同時に使えるということですか。かなり強いですよね」


 クルスが如何にも強そうなサーベルキメラの顔付きを見つめる。しかしアルケミナは、安心していて、幼い手でクルスの背中に触れる。

「それに錬金術が使えたら最強だけど、キメラは錬金術を使えない。私がクルスをサポートすれば、勝てる」

「僕の能力は計算外ですよね。まだ僕は能力を一度も使っていないのですから」

 それは大きな賭けであるが、それでもアルケミナは考えを変えない。

「大丈夫。絶対的能力は人類を超越したもの。どんな能力だとしても、問題ない」

「分かりました。サポートしてください」

 クルスとサーベルキメラは臨戦態勢に入る。

『使えない』

 サーベルキメラはテレパシーを使いクルスたちの脳に話しかける。

『錬金術を使えない』

 サーベルキメラはカラスの羽を羽ばたかせ、飛ぶ。

「空を飛ぶこともできるのですか」

 それにクルスは驚くが、アルケミナは表情一つ変えない。

「通常のサーベルキメラにも飛行能力がある。でも大丈夫。私がサポートするから」

 飛行したサーベルキメラは鋭い牙を輝かせて再び咆哮する。突風によりクルスはキメラに近づくことができない。近づくことができたとしても、キメラは上空を飛んでいるため、攻撃は回避されるだろう。


「どうすればいいんですか」

 そのクルスの声は、突風で掻き消される。アルケミナにこの声は届かない。

 それでもアルケミナは、黄色い槌を地面に叩く。東西南北全てに逆三角形の記号が記された魔法陣。中央には牡牛座の記号。土を凝固する。そのような意味の魔法陣から、レンガ造りの壁が出現する。


 クルスはその壁に回り込む。壁の後ろ側にはアルケミナの姿があった。

 サーベルキメラは、その壁を壊すために、上空から勢いよく体当たりする。

「どうすればいいんですか」

 壁の内側でクルスが再び尋ねると、アルケミナは作戦を伝える。

「サーベルキメラは壁を体当たりするはずだから、壁が破壊された瞬間を狙って得意のキックをして」

「分かりました」

 間もなくしてレンガの壁が壊されていく。もう少しで壁が壊されるというところで、クルスは壁をキックする。

 サーベルキメラの体にクルスのキックが命中する。足が壁を蹴った瞬間、壁は完全に崩壊した。

 その一撃を受け、サーベルキメラは彼方へと飛ばされた。クルスは村一番の美人を救った。だが、何かがおかしいとクルスは思った。

 先ほどのキックはレンガの壁を完全に崩壊させるほどの威力ではない。絶対的能力を使うという意思はあった。ということは頑丈な壁の崩壊は、絶対的能力の効果ではないのか。

 クルスは自分の能力がどのようなものなのかも分からない。


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