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ZONE  作者: 芝犬
3/5

赤いシュシュ

体育館を出た俺たちは三階までZONEとは遭遇しなくて済んだ。

小鳥遊の親友は今進んでいる廊下の角の教室らしい。教室の前に立ち、扉を勢い良く開けた時、眩暈がするような悪臭が鼻に届いた。

…手遅れだった。獲物を失ったZONEが天上を仰いでいた。そこに俺たちが来たのだ。

恐ろしい速さで俺たちに襲い掛かって来た。俺は左手に持っていた小太刀を振り、先頭のZONEの頭を砕いた。

だが、ZONEは湧いてくる。蒼太も金属バットでZONEを倒しているが、小鳥遊は扉の前に立ったまま動かない。

「小鳥遊!何突っ立ってんだ。危ないだろ」

だが小鳥遊の反応はない。まるで魂が抜けたような顔になっている。口が微妙に動き、小さく声が聞こえた。誰かの名前を呟いている。

俺が残り少ないZONEを討伐している途中、一つのZONEの頭をめがけて木刀を振った時、後ろから声が聞こえた。

「先輩ダメですっ!」

小鳥遊の大きな声を聞いて、木刀の軌道を変え、腹を打ち、横に飛ばした。

涙ぐむ小鳥遊が震えながら俺の横を通り、一つのZONEの前に立ち、震えながら木刀を振り上げた。

「ごめんね、七海」

そう言った小鳥遊の震えは止まっていて、真っ直ぐZONEを見ていた。どうやら、救いたかった親友は目の前に、自分の手で眠らせたいようだ。

小鳥遊から一筋の涙が流れると同時に七海と言うZONEの頭からも血が流れた。

小鳥遊はそのままずっと天を仰いでいた。俺たちがZONEを倒し終え、声をかけるまでずっと。

「すいません、ご迷惑をお掛けしました」

目が若干赤らんでいたが笑って誤魔化していた。何か声をかけようと思ったが、適切な言葉が見当たらない。

悲しそうに微笑む小鳥遊の笑顔に耐えることが出来ず、目を逸らすしか無かった。

沈黙に包まれた俺たちにある変化が起こった。外からの音だ。あまりに大きな音でさっきまでの暗い雰囲気は吹き飛んだ。

窓が揺れ、壁を介しても耳を塞ぎたくなるような大きな音だった。

急いで外を確認すると、普段、クラブ員たちが使っている小屋が崩れた後だった。

崩れた小屋の周りには無事な生徒が多く立っていた。どうやら彼らがやったようだ。崩れた小屋の隙間から血が流れ出していた。

これらの情報から察するに、彼らが小屋にの中にZONEを封じ込めて小屋ごと潰したという所だろう。剣道をやっていたおかげで、一瞬一瞬で状況を判断する能力が長けていた。

生き残っている各人でZONEを倒していることが想像出来て、少し安心した。だが、不安はまだある。

「どうしてこの学校の生徒がああなったんだ」

蒼太が俺の気持ちを代弁してくれた。だが、その通りだ。外部からの侵入者ならまだしも、うちの学校の生徒がZONEと化しているのは理由が想像できない。

それに、ここに来るまで、ここから校内を見渡した限り、生徒の数が少なすぎる。俺たちが倒した数を計算に入れても納得のいくものではない。

「えっと、小鳥遊さんの友達は朝まで普通だったんだね?」

蒼太が言葉を慎重に選びながら小鳥遊に質問をした。それでも、『普通』と言った時は罪悪感が顔に滲み出ていた。

「朝っていうか、さっきの休み時間までは全然……あ、そうだ」

蒼太の質問に答えながら、何かを思い出したように息絶えたZONEに近寄り、七海という少女の手首から真っ赤なシュシュを取った。

それが元からなのか、血で染まったものなのかは分からないが、小鳥遊は大切そうに自分の手首に付けた。

「すいません、どうしてもこれだけは持っておきたいんです」

「あぁ、構わないさ。ところで、今までの状況から、この惨劇の原因を考えてみた」

ずっと考え込んでいた蒼太が一つの結論に辿りついたようだ。だが、俺もある程度の予想はついていた。

外部からの目立った侵入は無く、恐るべき速さで生徒がZONEになっている。これらから導き出される結論は……

「感染…」

思わず口から言葉が漏れていた。

「恭輔の言う通り、これは何らかの感染と考えるべきだろう」

感染という原因が分かったが、感染する手段が分からない。空気感染なら俺たちもとっくにZONEになってるはずだ。また謎が増える。

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