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沖縄 Mermaid 

作者: 石山ウルマ
掲載日:2010/11/21

       



月夜の明るい海岸でタバコを吸った。

宿へ帰る途中の小道を歩いている時に、ライターを海岸の岩場に置き忘れたことに気づいた。

安物デュポンの人魚の図柄、別れた女の遺物だ。

とはいえ急いで帰る用事もない、迷わずに踵を返して岩場に戻った。

見覚えのある岩場と海岸の風景。ところが肝心のライターが見つからない。

携帯電話の撮影用ライトを使って、薄暗い足元を照らす。見つからない。

仕方ない、ライターは宿で買い直そう。

明朝探せば必ず見つかるはずだ。見つからなければそれも良し。

でも、別れた女の記念品だ。


さっき見惚れた満月と、砂浜の風景をもう一度楽しむ。

沖縄の夜の海、月も丁度いい高さ。

絵ハガキで見れば平凡な風景も、生で見ればやはり美しい。

小さな湾の海面に、漁師が使う球形の浮きがひとつ、波に流されて漂っていた。

その浮きの周辺に波紋が立っている。おかしいな、と凝視するとそれは浮きではなかった。

アザラシかオットセイ?まさか。何だろう?

馬鹿だな、タバコを吸おうとまた、あのライターを探してしまっていた。


それはどうやら人間の頭部らしい、誰かが夜中に泳いでいるのだ。


羨ましい、気持ちいいだろうなと思う。

懐かしい、とも思う。


満月の夜中に海で泳ぐ、俺もこの際パンツで泳いでみるか。

止めておこう、今ここで泳いでいる半漁人だか人魚を驚かすだけだ。

せっかくの、夜泳の邪魔しては申し訳ない。

でも、一声かければそれはそれで済む。ここはみんなの海岸だ。

でもなぁ、どうしようかと悩んでいるうちに、そいつは俺の存在に気づいたようだ。

俺に向かって泳いでくる。

ここの海岸が遠浅だという事はよく知っている、間もなく立ち上がったその姿を見て驚いた。

女だった。

あたりの薄暗い満月の夜で距離はあっても、その腰つきを見れば男と女の区別は付く。

それでも唖然とした。


「やっぱりここに来たんだ、私も来ちゃった。だってここは懐かしい海だからね」



「はい、拾っておいたよ。これは間違いなくあんたのライター。だって、私があげたんだからね」


「うん、二度となくさない」




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