道を聞かれる
水野はいつものように。トラックを走らせていた。
しかし、前の車がふらふらしており、気になってしょうがなかった。
ー病気か? それとも、飲酒運転か?
見定めるのは困難で、クラクションを鳴らそうかどうしようか悩む。
すると前の車が左にウィンカーを出し、停まった。
水野は躊躇した後、原因を知りたくて、トラックを停めるが、エアコンのついていた車内と違い。8月の陽気はまだ燃えていた。
溶けそうだと思いつつ、前の車の運転席の窓を叩く。
「ーもしもし」
躊躇した後。、声をかけると、窓が開いた。
水野は驚いたが、平気なふりをし、対応しようとする。
顔を出してきたのは、20代くらいの美女だった。
髪の毛はボブカットで、ふわりと良い香りがしてくる。
乗っているのは、1人だけのようで、何事か困っているようだった。
「あの…」
「はい?」
水野はなるべく刺激しないように聞くと。女性が口を開く。
「場所が分からないんです」
「は? 場所? どこの?」
矢継ぎ早に聞くと、女性はナビを指し、言う。
「ナビの通りに進むつもりが、全然、たどり着かなくて。場所が分からないんです」
「ナビ…。ああ、なるほど。スマホは?」
「スマホでも検索してみたのですけど、私、機械オンチでよく分からなくて。あの…!!」
「何?」
「良かったら、場所を教えてしれませんか?」
女性の必死な様子に、水野はすぐに了承する、
「いいよ。どこに行きたいんだ?」
「アイスクリーム屋さんなんです。そこで友達と待ち合わせしているんですけど」
「アイスクリーム屋…。名前は?」
「フルムーンっていうんですけど」
「ああ!! それなら知ってる」
水野は手を打つと、女性に言う。
「移転したんだよ、新しい場所に。スマホに出てこないはずだ」
「なるほど。私の落ち度かと思いました」
女性はほっと息を吐くと、惚れ惚れするような笑顔を見せてくる、
水野は顔を赤くすると、親指を後ろに向ける。
「ついて来て。そこまで運転してあげるから」
「いいんですか!! 助かります!!」
深々と頭を下げられ、水野は照れ隠しに耳をかく。
女性は助手席を探したかと思うと、栄養ドリンクを差し出してくる。
「これは…」
「案内してくれるお礼です。…その、安くてすみません」
「全然。こういうのは気持ちでいいんだよ」
サンキュと栄養ドリンクをポケットに入れ、女性に言う。
「先を走るからついて来て」
「は、はい…!!」
水野はトラックに戻ると、栄養ドリンクを大事にしまい、運転し始める。
ミラーで後ろから女性の車がついて来るのを確認し、迷うことなく道を進んで行く。
ー人助けは大事だからな。
信号を右折し、なるべく水野はゆっくり走ってやる。
じきに店が見えてきて、ハザードランプをつける。
停車すると、女性の車も停車し、駐車場へ入っていく。
「分かったかい?」
窓から顔を出し、大声で言うと、女性が車から降りてきて、頭を下げてくる。
今どきのファッションをしており、作業着の自分とは違い、おしゃれだった。
苦笑していると、何故か女性が小走りにやって来る。
「どうした?」
「あの…。良ければLINE交換を…。駄目ですか?」
「え!! い、いいの?」
逆に聞いてしまい、女性は慌ててスマホを取り出す。
LINEはあまり使うほうではないのだが。女性と知り合えてラッキーと、神様に礼を言う。
「はい、大丈夫です」
「ありがとう。じゃあね」
手を振ると、女性が小さく手を振ってくる。自分のことを気にしてくれると嬉しいなと思い、ハンドルを握る。
トラックを走らせると、女性は見えなくなるまで見送ってくれたようだった。
ー良い娘だったな。
水野はスマホをちらりと見、にやにやと1人で笑う。
しまった、自分はトラック運転手なのだから、かっこよくいないとと思い、顔を引き締める。
水野は自分で思うのもなんだが、こう見えて鋭い目つきに、引き締まった唇と。整った顔をしていた。
ー彼女と縁ができて良かった。
一期一会で終わるかもしれないが、人に親切にしてあげるのは、悪いことではない。
後で栄養ドリンクを飲もうと思い、水野はアクセルを踏みこむのだった。




