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我が戦友 -北欧神話ロキの物語-  作者: Romina


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ロカセンナ

海神エーギルの館。


酒が溢れ、

神々が笑う。


神々は酒杯を手に

和やかに語らっていた。



召使い、フィマフェングは

よく働く者だった。


宴は彼のおかげで見事に回り、

神々は口々に彼を褒めた。


「素晴らしい働きだ。」

「ぜひうちにも来てほしいものだ。」


フィマフェングは酒を注ぎながら言った。


「神々ほど立派な方々はいません。

この世を守る偉大な方々です。」


神々は満足げに笑った。



ロキは杯を見つめたまま言う。


「……そうか。」


少しの沈黙。

ロキは顔を上げた。


「なら聞こう。」

「お前は、神々が裏で何をしているのか

知っていてそう言っているのか?」


フィマフェングは言葉に詰まる。


ロキは笑った。

その笑みは冷たかった。


「知らないなら、

黙って酒を運んでいろ。」





神々は自慢げに語っていた。

勝利と、宝と、武勲を。


フィマフェングはそれを聞きながら

また言った。


「神々は本当に素晴らしい方々です!」


ロキは言った。


「素晴らしい、だと?」


ロキは立ち上がり、

フィマフェングを睨みつけた。


次の瞬間、

彼の顔に酒をぶちまけ、

胸ぐらを掴んで蹴り飛ばした。



フィマフェングは石柱に頭を打ち、

鈍い音が館に響く。


白い石柱に、赤い血が伝った。

フィマフェングは__

もう動かなかった。



神々はざわめき、女神は悲鳴をあげた。



ロキは言った。


「よお、なんだその顔は。」



誰かが言った。


「ロキをつまみ出せ!」



「なんだと?」


ロキは睨んだ。


「オーディン、覚えているか?

我々は血を混ぜ、兄弟になると誓ったな。

お前は俺なしでは酒を飲まないと。」


ロキはゆっくりと周囲を見渡した。


「席をよこせ。」




神々はロキから距離を取り

警戒した。




ヴェトルは

ただそれを見ていた。


召使いが死んだ瞬間

誰も助けず、誰も調べない。


すぐさまロキを排除しようとする。


つまり、彼らにとっては

死者よりも秩序維持なのだ、と。





ロキは再び杯を取り、

指で回しながら言う。


「戦いの王、オーディン。」


小さく笑う。


「だが妙だな。」


「戦場では槍を持つくせに、

家に帰れば糸を紡ぐ魔女の真似事か。」


宴が静まる。

ロキは続けた。


「男にしては随分と器用なものだ。」


オーディンは低く呻き、顔を曇らせた。




そして今度は

その妻フリッグに顔を向けた。


「ああ、フリッグ。」


「そういえばオーディンが留守の時、

お前はその兄弟の腕に抱かれていたな。」


フリッグは「お黙り、ロキ。」と

怒りを露わにした。


ロキは構わず続けた。




「フレイヤ。」


ロキは肩をすくめた。


「お前の恋人の数は

ここにいる神々より多いんじゃないか?」


宴に小さな笑いが漏れる。


「もっとも──」


「一番気が合うのは

生まれた時から一緒にいる相手か。」


静かな視線が向く。


「兄弟というのは

そういうものなのか?」


フレイヤは顔が燃えるように赤くなり、

神々は凍りついたようにフレイヤを見た。





「テュール。」


ロキは

冷たく力を込めた視線を向けた。


「お前が勇敢な神だと?」


静かな笑い。


「そうだな。」


「俺の息子を騙して

腕を差し出すくらいには。」


テュールは右肩を強く抑えた。





ロキは杯を軽く揺らした。


「ニョルズ。」


「お前も随分と立派な神になったものだ。」


宴の誰かが不安そうに視線を逸らす。

ロキは続ける。


「妹を妻に迎え

海では魚と語り合う。」


小さく笑う。


「この宴で一番

“家族思い”なのは

お前かもしれんな。」


ニョルズは顔を背けた。




ロキは杯を傾け、

イズンの方へゆっくり視線を向けた。


「イズン。」


「お前はいい役目を貰ったな。」


宴の神々を見渡す。


「林檎を配るだけで

神々は永遠に若くいられる。」


ロキは小さく笑った。


「だが考えたことはあるか?」


静かに続ける。


「もしお前がいなくなったら

こいつらは何日で老いぼれる?」



神々はざわめき、怒った。



宴の端。

石柱の影。


ヴェトルは杯にも手をつけず、

ただ黙って聞いている。


ロキの言葉が落ちるたび、

神々の空気が変わる。



それでもヴェトルは動かない。


ただ一度だけ、

ロキと目が合う。


ヴェトルは何も言わない。


ロキは笑った。


「どうした、ヴェトル。

黙ってるのか?」


ヴェトルは言う。


「……お前は、それで救われるのか。」


ロキは

静かになった。



その時だった。

扉が乱暴に開き、

トールが入ってきた。


ミョルニルを握り、

ロキを睨む。


「ロキ。」


「その舌を止めろ。

さもなくば――」


ミョルニルを持ち上げる。


「頭ごと黙らせる。」



ロキは笑った。


「トール。」


「やっぱり来たか。

__この宴で一番

話が通じない男がな。」



ロキは扉へ向かいながら振り返った。

杯を軽く掲げる。


「楽しい宴だな、エーギル。」


小さく笑った。



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