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我が戦友 -北欧神話ロキの物語-  作者: Romina


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フェンリル拘束

予言にはロキの子の名が記されていた。

フェンリル、ヨルムンガンド、そしてヘル。


ヘルは体の半分が生者、

もう半分が死者の女性であった。


ヨルムンガンドは蛇であり、

フェンリルは狼の姿だった。


ヘルは冥界で死者を支配する者となり、

ヨルムンガンドはオーディンの手によって海へ投げ入れられた。


そして…

“ラグナロクでオーディンを喰らう”と

予言されたフェンリルを

一番危険視した神々は、

監視のために

フェンリルをアースガルズに置いた。


フェンリルはとても賢く、

人の言葉を話した。


アースガルズに来た頃、

フェンリルはまだ狼の子ほどの大きさだったが、

日に日に巨大化し、

家ほどになり、

やがて山をも越える大きさとなった。


フェンリルの力も、恐るべきものだった。


地を踏めば大地が鳴り揺れ、

吠えればその声は

雷鳴の如く轟いた。


神々はフェンリルの力を恐れ、

それから遠ざかるようになっていった。


しかし、1人だけ

恐れずに近寄る神がいた。


テュールだ。

彼は毎日フェンリルの元へ行き、餌を与えていた。


フェンリルはテュールを信頼するようになった。




神々は、さらに強大な力を増していくフェンリルに震え上がった。


しかし、何の罪もないフェンリルを

殺すことなどできなかった。


“縛るしかない”

神々はそう思った。



ある日、神々はフェンリルの元に

鉄でできた、重く太い最強の鎖を持ってきた。

その名をレージングといった。


「フェンリルよ、力試しをしよう。」


「いいだろう。」


フェンリルの身体に鎖をかけると、

レージングは糸くずの如く、

簡単に千切れてしまった。


神々は、唖然とした。


ロキはそれを見て笑みを浮かべた。




しばらくして、神々は

さらに強力な鎖を用意して

フェンリルの元へ行った。


レージングの二倍の太さを持ち、

職人の技術を尽くした最高の鎖。


その名をドローミといった。



神々はドローミを差し出して言った。


「フェンリル、お前の力をもう一度試してみないか?

これを破れば、お前の名声も高まるだろう。」


その鎖はフェンリルにも

確かに頑丈に見えた。


「いいだろう。」


神々はドローミをフェンリルの身体に巻き付けていった。


ロキはそれを黙って見ていた。



フェンリルが、体に力を込め始めると

ドローミは大きな音を立てて砕け散った。


それを見て神々は

言葉を失った。






神々は最後の手段として

交渉の得意なフレイの従者、スキールニルを

黒妖精の国、スヴァルトアールヴヘイムに遣わせ

そこに住む、デックアールヴァルに助けを求めに行った。


彼らは、

この世に存在しないものを

集めてきた。


猫の足音

女性の髭

山の根

熊の腱

魚の息

鳥の唾


ドワーフ達はそれらを使って

一つの鎖を作った。


その名は__

グレイプニル。


グレイプニルは細く柔らかく、

とてもか弱く見える紐だった。


しかし、それは

見た目とは裏腹に

引けば引くほどに強くなり、

決して破ることのできない紐であった。




ある日、神々は

またフェンリルに話しかけに行った。


「フェンリルよ、また力試しをしないか?」


フェンリルは神々をじっと見つめた。


「また鎖なのか?」


「いや…今回は特別な場所でやろう。」


そして神々は、フェンリルを

リュングヴィという小さな島へ誘い出した。


島へ着くと、神の一人がグレイプニルを取り出した。


フェンリルはそれを見て笑った。


「それが鎖だと?」


「これは細いが、とても強力な紐だ。

これを破れば、お前の名声はさらに高くなるだろう。」


「いや、この紐は細すぎる。

これを破っても、名誉にはならないだろう。


それに__」


フェンリルは神々を見回した。


「お前たちの様子がおかしい。」


神々は息を呑む。


「これが本当の力試しなら問題ないが…

もしこれが罠で、俺がこれを破れなければ

お前たちは、俺をここに

置き去りにするつもりだろう?」


神々は答えなかった。


「ならば、誰か俺の口に腕を入れろ。

俺がこれを破れなかったとしても、俺を解放するという証に。」


神々は互いに顔を見合わせた。

誰も腕を出そうとはしなかった。


グレイプニルは破れない。

だから手を出せば必ず手を失う。


そこで1人の神が前に出た。

テュールだった。


「私が腕を出そう。」


神々が口々に言った。


「正気か!」


テュールは静かに頷いた。


テュールはフェンリルの前に立ち、右手をフェンリルの口に入れた。


巨大な狼の口がテュールの腕を挟む。


フェンリルはテュールを見つめて言った。


「テュール、お前だけは俺を恐れなかった。」


テュールは何も答えられなかった。



神々がグレイプニルを

フェンリルに巻き付けていった。


フェンリルは力を込め始めた。


紐は伸びたかのように感じたが、逆に締まり始めた。


フェンリルはさらに力を込めた。


しかしグレイプニルは切れるどころか、

どんどん締まっていった。


フェンリルはようやく理解すると

テュールの腕を噛み千切った。


フェンリルはテュールの腕を吐き出し、吠えた。


「この裏切り者共!

__テュール、お前もか!」


フェンリルは暴れるが、

暴れるほどにグレイプニルはきつく締まっていった。


神々はフェンリルを岩に縛り付け、

その岩を地中に埋めた。


さらに、フェンリルが口を閉じられぬよう

剣を口に押し込んだ。


フェンリルは吠え続けた。

その声は恐ろしく、大地を震わせた。




ヴェトルは静かにロキに目をやると

ロキの目からは光が消えていた。


その拳は深く握りしめられ、

小刻みに揺れていた。




ヴェトルは思った。

予言があるから終わるのではない。

神々が “今、終わりを選んだ” から

終わるのだ。


ヴェトルは静かに言った。



「恐れられた時点で、結末は近い。」



ロキは低く答えた。



「お前には分からない。」



ロキは去っていった。




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