神器の宴
アースガルズの城では
神器祝いの宴が開かれた。
トールがミョルニルを振るい、
オーディンがグングニルを掲げ、
フレイが猪に乗ると、
神々は口々に賛辞を贈った。
トールが言った。
「これで巨人の頭を砕ける!」
神々は口々に言った。
「勝利の槌だ!」
フレイは猪に乗り、
「猪は速いぞ!」
と見せると、神々は湧いた。
オーディンは王座に座り、
静かに槍を見ていた。
神の一人が聞いた。
「ロキ、口の糸は取れたのか?」
ロキの口にもう糸はなかった。
「ああ、あれか?
糸は噛み切ったさ。」
「口を縫われても黙る気はないからな。」
ロキが笑うと
神々も笑った。
ヴェトルは背後の席で
静かに杯を傾けていた。
その時ヴェトルは思った。
“あいつは眩しいな”
ロキがその視線に気づく。
「どうした?ヴェトル」
ヴェトルは聞いた。
「髪を切る前に戻す算段はついてたのか?」
ロキは眉をあげた。
「退屈だったんだよ。」
ニヤリと笑った。
「シフも災難だな。」
ヴェトルは静かに言った。
「しかし面白いな。
世界最強の武器を作ったのが
ドワーフだとは。」
ヴェトルは杯を口に運び
ただ黙っていた。
神々が神器を掲げ、歓声を上げる。
ロキは杯を傾けながら
横目でヴェトルを見た。
こいつは、俺とは違う。
挑発せず、感情も出さない。
神々の機嫌も読んでいる。
“ ……食えない奴だ ”。
お互いに羨望を抱えていることなど
二人は知る由もなかった。
翌朝。
ヴェトルが城の中を歩いていると
王の妻フリッグがやってきた。
「見て、ヴェトル。
綺麗でしょう?
フレイヤと庭で摘んできたのよ。」
彼女は楽しそうに
花を生けた見事な花瓶を見せてきた。
ヴェトルが静かに頷くと
フリッグは石台の上にその花瓶を置き、
上機嫌のまま去って行った。
ヴェトルは石台の前で足を止め、花瓶をじっと見る。
そして花瓶の下の敷布を掴むと、
「……甘いぞ、ロキ。」
引っ張った。
「あっぶなっ!」
ビショ濡れで転げたロキの頭には、
先ほどの花が舞っていた。
ヴェトルは振り返りもせず、
敷布をヒラヒラと振りながら
「お前は目立つ。」
と去って行った。
「クッソ…なんであいつはわかるんだよー…」




