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我が戦友 -北欧神話ロキの物語-  作者: Romina


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10/13

バルドルの悪夢

神々は今日も笑っていた。


槍が投げられ、

石が投げられ、

斧が投げられる。


それらはすべて

バルドルの身体から弾かれた。


神々は歓声を上げる。




少し離れた場所で、

盲目の神、ホズは

立ったまま耳を傾けていた。


神々の笑い声だけが

彼のもとへ届く。


「どうした、ホズ。」


声がした。


「皆は遊んでいるぞ。」


ロキだった。



ホズは言った。


「俺は見えない。

当てることもできない。」


「なら俺が導いてやろう。」


ロキは一本の枝を手渡した。


「これは軽い。

投げやすいだろう。」



バルドルは笑っていた。


ロキは目を背けた。



ホズは枝を受け取り、的を導かれた。

そして大きく腕を振る。


その枝は空を切り、

まっすぐに飛んだ。



その瞬間、

神々の笑い声が止まった。




ホズの放ったヤドリギの矢は

真っ直ぐバルドルの胸に刺さった。


そして___

バルドルは倒れ、

その目が

再び開くことはなかった。



神々は

誰一人、声を出さなかった。


しばらく沈黙の後、

神々がバルドルのもとへ駆け寄った時、

そこにロキの姿はなかった。


母フリッグはバルドルの亡骸を抱き、

絶望の涙を流した。



そこで神々は

なんとかバルドルを蘇らせようと、

オーディンの子ヘルモーズを、

八本足の馬スレイプニルに乗せ、

冥界へと向かわせた。


ヘルモーズは

九日九晩、暗い谷を駆け続けた。


そしてようやく、ヘルの治める

死者の国へとたどり着いた。



ヘルモーズはヘルに頼んだ。


「どうかバルドルをお戻しください。

彼は皆に愛され、希望の光でした。」


ヘルは言った。


「バルドルが皆に愛されているのは知っている。死者も皆、彼の名を口にしている。」


「だが、死者が戻る条件は一つ。


全てのものがバルドルのために涙を流すこと。

その条件が満たされればバルドルを戻そう。」


ヘルモーズは答えた。


「ならば、世界のすべてを泣かせてみせます。」



そういうと、ヘルモーズは

アースガルズへと戻っていった。


それから神々は、

世界のすべてのものに

バルドルのために泣いて欲しいと

懇願しにいった。



そして__

神々も、人も、石も、木も、

世界のすべてが

バルドルのために涙を流した。




神々が最後に訪れた洞窟には

1人の老婆が座っていた。

その名をソックと言った。


「あなたも、バルドルのために泣いていただけませんか」


神々はお願いした。



ソックは首を振った。


「泣く理由がない。

生きていても

私には何の益もない神だった。」



神々は必死に頼んだ。


「お願いです!

あなた一人が泣いてくれれば、

バルドルは戻れるのです!」


しかし、

老婆は泣かなかった。





条件は満たされず、

バルドルは戻らなかった。













「俺のフェンリルを縛っておいて、

バルドルのために涙を流せだと?

…ふざけるな。」


洞窟を出た神々の背後で、

老婆は小さく笑った。












神の王国、アースガルズは

重い空気を漂わせていた。


「ただ一人の老婆が泣かなかったため、

バルドルは戻らなかった」


それを聞いて

神々はざわめいた。


「バルドルのために泣かない者などいるのか?」


オーディンは静かに言った。


「……いる。」




「ロキだ。」


トールはそれを聞くと

ミョルニルを強く握りしめた。




それから神々はロキを探した。

しかし、その姿はどこにもなかった。



オーディンは目を閉じ、

静かにルーンを刻んだ。


やがて

王は言った。


「見つけた。」


「川のそばの小屋だ。」





ロキは山奥へ逃げ、

川のそばに小屋を建てていた。


小屋には四方に扉があり、

どこからでも逃げられるようになっていた。



そこでロキは、

神々がもし自分を探しに来たら

鮭になって川に逃げようと計画していた。


しかし彼は

網で捕らわれないようにするために

小屋で網から逃げる方法を考えていた。


神々がこちらへ向かってくるのを見たロキは

すぐさま網を火に焚べ、

鮭になって近くの川へと逃げ込んだ。



神々が小屋に入ると

ロキの姿はなかった。


「逃げたのか…」


知恵の神クヴァシルは

灰の中から燃え残った網を見つけた。


燃え残ったそれを見たクヴァシルは

これは魚を捕る道具だ、と理解した。



神々たちはその形を見て

同じ網を作った。

そして川にその網を張ると、少しずつ網を引いていった。


水は逃げ場を失い、

魚たちは騒いだ。



その中に、

一匹の鮭がいた。


トールは水面を

じっと見ていた。


“ロキなら、水面から飛び上がるはずだ”




突然、鮭は水面から高く跳ね上がった。



その瞬間――


トールの手が

その尾を掴んだ。



ロキは渾身の力を振り絞って

トールの手から逃れようとした。


だが、トールの手は決して離れなかった。



「往生際が悪いぞ、ロキ。」


鮭は人の姿へと戻っていった。




こうしてロキは、

ついに神々の手に落ちた。







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